ADVERTISEMENT
Words by Malaika Crawford ,Photos by Tiffany Wade
典型的な時計愛好家の目(だいたいは誰かがインターネットに投稿した写真を眺めて養った目に過ぎないが)には、ジラール・ペルゴのロレアートというのは、オーデマ ピゲのロイヤル オークとパテック フィリップのノーチラスを掛け合わせた子に映るようだ。
ところが、私はその子を見てきた。そして試着もした。その結果、私はその見方に共感しないと断言できる。
この時計は、あらゆる時計と同様に、その長所によって判断されるべきだからだ。
ロレアートは、ロイヤル オーク発表の3年後、ノーチラスの1年前にあたる1975年に誕生した。ロレアートを“ステンレススティール一体式ブレスレットアイコンウォッチナンバー2”と呼ぶことにしよう(略称SSIBIWNTを思いついたが、絶対に定着しないと思っている)。この時代の潮流として、1976年にIWCの“インヂュニア”、1977年にヴァシュロンの“222”がリリースされていることを思い出してほしい。こうして並べてみると、これらの時計(うち3本はジェンタデザイン)は、同じトレンドバブルのなかで作られたことがよくわかる。
私はHODINKEEの新任スタイルエディターとして、これはファッションの世界だけでなく、広くデザインの分野でもごく一般的なことだとお伝えしたい。既存のプロダクトが別のテーマに沿って互いに影響し合いながら派生することは普通のことであり、1970年代における球根型のスティール製スポーツウォッチは、2020年代におけるダッドスニーカーと同じ文脈で語ることができる。どれも同じに見えて異なるという意味において、である。時計も同じだ。APがベゼルに露出したネジを使用しているからといって、それが20世紀初頭カルティエのサントス デュモンから始まったデザイン言語のパクリだと指摘する人がいないのは当然だろう。
ランウェイに目を向けると、イヴ・サンローランをコピーしたブランドを10社挙げることができるが、誰もそれを非難することはない。なぜなら、デザイナーは独自の才能を認められているからこそ、解釈が許されているのだ。インスピレーションを得るために文化的潮流に目を向けるのは人間の本性だが、2022年はキャンセルカルチャーが蔓延った年である。Instagramのアカウント@dietpradaをご存じだろうか。その存在意義は、他人の作品やアイデアを“盗用”しているブランドを罵倒することであり、320万人ものフォロワーがいる。Webサイトのコメント欄も、我々の世界でそのような役割を果たしているといえるかもしれない。
いずれにせよ、懐疑的な人は、ジラール・ペルゴが1971年に、世界共通の標準振動数を確立したクォーツムーブメント、GP-350キャリバーで話題を呼んだことを思い出すべきだ。このGP-350は、ロレアートの初代モデルに搭載されたムーブメントで、ほかのSSIBIWNTとは一線を画していた。また、クォーツムーブメントの採用により、GPは超薄型ケースを実現することができた。1975年のロレアートは非常に薄く、一体化したブレスレットはさらに薄く、多くの超薄型クォーツウォッチ(後に機械式時計)の先駆的存在となった。
新モデルのRef.81010(グリーン)に話を戻すと、これはラグジュアリースポーツウォッチのカテゴリーに属するモデルであると私は考えている。直径42mmのケースでありながら、私の手首にしっくりと馴染む。ラグの形状が非常に角張っていて、ブレスレットに向かってきれいに傾斜がかっているため、寸法からは想像できないほど小さく見えるのだ。H型リンクのブレスレットもきれいにテーパーがかかっており、ダブルフォールディングクラスプを備えている。グリーンの“クル・ド・パリ”ダイヤルは確かに目立つが、それ以上に魅力的なのは、ダイヤルカラーと、ブラックPVD加工されたバトン型の針とアワーマーカー、そして太いホワイトの夜光塗料とのコントラストだ。まるで芝生のテニスコートに描かれたばかりの白いラインを連想させる、いかにも私のイギリスの血を騒がせるテイストだ!
ダイヤルは、ベゼルの下にある円形のディスクと同じ形状で、グリーンとは対照的なブラックのフランジで縁取られている。八角形の刺々しいラインを和らげるのに貢献しているようだ。ケースとブレスレットは、この種の時計の多くがそうであるように、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げが並存している。サファイアクリスタルのシースルーバックからは、自社製ムーブメントGP01800の見事な仕上げを鑑賞することができる。私のように、光にかざしながら回転するローターを鑑賞することが心の癒しとなる人にはうれしい限りだ。
ロレアートは、デザインがまだ楽観的であった時代に誕生した。当時は実験と自己表現の時代だった。ハイテク建築からオプ・アート(視覚的芸術)に触発されたスーパーグラフィックまで、さまざまな美的トレンドが見られた。服飾、ホームウェア、ジュエリーのデザインは、柔らかい幾何学的な形とカーブしたエッジが特徴だった。大胆で遊び心のあるデザインが主役だったのだ。この時計のように。
私がGPに本格的に興味を持ったのは、1971年に発売され、今年の初めに復刻された悪名高いモデル“キャスケット”がきっかけだった。発売当時、キャスケットは未来派の象徴であり、以来’70年代のウォッチデザインのシンボルとなっている。ジラール・ペルゴの真骨頂といえば、シェイプだ。そして、最近発表されたロレアートのシリーズをよく見ると、わずかにドーム状になったサファイアクリスタルは、ピエール・カルダンのバブルハウスの窓を思わせる。でも、もしかしたら私が70年代を彷彿させるデザイン言語のマニアだけに、そう思うだけかもしれないが。
42mmのロレアート グリーンダイヤルは、正統派のスティール製スポーツウォッチでありながら、驚くべき価値を提案するモデルだ。グリーンダイヤルのモデルは179万3000円(税込)で、かなり高価ではあるが、それでも世界3大ブランド(Holy Trinity)メーカーの同等の時計よりはずっと安価だ。また、より簡単に入手することができるため、サタデーナイトフィーバーのディスコファンタジーにふけっていても、着用をためらうことはないだろう。
ジラール・ペルゴ ローレアート 42mm グリーンダイヤル、ステンレススティールケース 42mm×10.68mm、一体型SSブレスレット。無反射コーティングを施したサファイアクリスタル風防、サファイアケースバック。サンレイグリーンのホブネイルパターン(クル・ド・パリ)ダイヤル。Cal.GP01800、パワーリザーブ54時間。100m防水。価格は179万3000円(税込)で、2022年11月より発売。
Shop This Story
詳しくはジラール・ペルゴの公式Webサイトをご覧ください。