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当サイトにコメントを下さる皆さんと、記事の執筆者たちが談笑する機会がまたやってきた。今回は熾烈な競争となったが、お答えしておいたほうがよいと思われるコメントをいくつかピックアップし、それぞれの記事の執筆者にさらなる説明をしてもらった。
チタンの話題で持ちきり
記事: ロレックスのビッグニュース。 「Introducing ロレックス 初のチタン製ウォッチで防水記録を更新(HODINKEE独占の撮り下ろし写真掲載)」
コメント: 面取りの復活は大歓迎。ロレックスはケースの外形に関していつまでチューダーにばかりに手をかけるのだろうと常々思っていた。願わくば、GMTやサブマリーナーにも面取りを復活させて欲しい。ロレックスの最近のケースは、かつての自社製品と比較してもかなりあっさりしていて、努力の跡が見られない。そしてもうひとつ、この艶消し仕上げのチタンは、どう考えてもステンレススティールにしか見えない。写真写りのせいもあるだろうが、期待していた黒みがかった色合いではないようだ。追記:マット仕上げのダイヤルも然り!!! 私の心を静めてくれ。でも、ロレックスにはまだ期待している。-TacoPants
返答:多く方々にとって、今回の新作ロレックス ディープシー チャレンジで最もエキサイティングなのは、時計そのものではなく、これがこの先のロレックスにどのような意味を持つかという予兆的要素だったようだ。主には、チタン製ウォッチがもっと増えるのではないかというものだが、まあ、どうなるかはわからない。ロレックスが新作を発表するたび、野球の開幕日のように、また何でも起こり得るぞ、という気分になる。ディープシー チャレンジの新作については多くの人がほかにもいくつか細部を取り上げており、それらを細かく見て行こう。まずはそう、面取りが復活した! ディープシー チャレンジのラグには、目でわかる面取りが施されており、これは最近ではチューダーにしか見られないものだった。ロレックス初のチタン製ウォッチなだけに、特に素晴らしいタッチだ。ヴィンテージマニアにとってこれはたまらない。いかにも、ロレックスがヴィンテージの趣を醸す面取りをついに復活させたのが、ヴィンテージとは程遠いディープシー
チャレンジだというのがなにか面白い。しかし、これがもし他のスポーツウォッチにも波及する兆しであるなら、長いあいだラグが気になっていた多くの愛好家(私もそのひとり)にとっての歓迎すべき復活だ。
さて、もうひとつの細部だ。マット仕上げのダイヤル。ロレックスのモダンウォッチで、これが初めて目にするマットなダイヤルなのかどうかは答えにくい質問だ。少なくとも「マット」をどう定義するかによる。一例を挙げると、現行のシードゥエラー Ref.126600を見てくれ(ほかにもあるが)。これには、ロレックスの他のダイヤルに比べれば光沢の少ない、多くの人がセミマットと表現するダイヤルがついている。一方で、ロレックスはディープシー チャレンジのダイヤルについて公式に「サテン仕上げを施した深いブラックのマット」と表現している。どのような言葉で言い表すにしろ、これは確かに、70年代、80年代のロレックスに我々が期待するようなトラディショナルなマットダイヤルに見える。おそらくその一因は「サテン仕上げ」にもあるだろう。それによってダイヤルに、明らかに艶を抑えたある種の深みと質感が出ている。
考えてもみて欲しい。ロレックスはこれを基本的に、文字通り海底までの潜水能力をもつ究極のダイバーズウォッチと主張しているのだ。だとすれば、同ブランドの長年の過去を遡り、最高に崇められたツールウォッチの機能のいくつかを、この新たなツールウォッチに復活させているだろうと考えるのが理に適っているではないか。いずれにしてもこれは、2017年にロレックスがシードゥエラーの新作を発表した際に、あの赤い文字の一行を入れたことで、「ええ、我々は聞く耳を持っていますよ」と愛好家たちにかすかなウインクを送ったのと同じようなものだと考えればいいのだ。-トニー・トレイナ(Tony Traina)
オメガがチャイムを鳴らしてやって来た
記事: オメガの新たな(そして高価な)2本の時計が世間を揺るがす。「Hands-On オメガ クロノチャイム ソヌリ搭載クロノグラフという非常に複雑な2本の新作」
コメント:そもそも「スピードマスター」とは現在何を意味するのか? スピードマスターもムーンウォッチもどちらも「スピードマスター」とはどういうこと? また、オメガがブランパンのノウハウを使ってこれを作ったというのが面白い。コメント欄でこれまで何人かが指摘してきたことだが、スウォッチは、ブレゲやブランパンから人々の注目を逸らしつつ、そのぶん、かつてない規模でオメガに力を入れているように見える。スウォッチがこの新たな複雑機構を名のある高級時計ブランドではなく、オメガブランドで登場させようと決断したこと自体、我々が言わんとすることを証明している。フルゴールドのグランドコンプリケーションから玩具のようなクォーツ時計まで、幅広い範囲の時計商品すべてに同じブランド名を貼り付けていくのは、高級ブランドの資産価値を長期的に維持するための常套手段ではないような気がするのだが……。 - stanleygoodspeed
返答:もっともな質問だ。スピードマスターとは何か。その原点は、月へ行ったレーシングクロノグラフだ。スピードマスターの現行製品は、月や火星での任務にも耐えられるクロノグラフを提供しているかも知れないが、スピードマスターの文化的背景は変化してきている。月はもはや射程圏にはない。では、ムーンウォッチとは何なのか?
この時計は依然として秀逸なクロノグラフであり、特殊な歴史に言及できる強みをもったスピードマスターは、オメガの最も有名なサブブランドでもあり、同ブランドができる限り幅広い客層にアプローチをかけるときの翻訳的な役割を担う膜のようなものになりつつある。こうしたことから、ムーンスウォッチや、ご指摘のようにブランパンやブレゲといった紹介の難しい(特に若い購買層に対して)ブランドから人々の注目を引き寄せ、よく知られたスピードマスターの製品群のなかに内包される動きになるのだ。コーアクシャルムーブメントの成功、ジェームズ・ボンドの変わらぬ人気、コレクター市場での価値上昇(にも拘らず収集しやすい)などを受け、スウォッチにとってオメガの重要性は近年増してきている。いささか理解が難しいものを試そうとするとき、新規な未知を「親しみやすさ」という膜で包み込んでしまう戦略は、なにも珍しいものではない。
とはいうものの、事情通の人々(この場合、ブランパンやブレゲの価値を認めるあなたのような人)にとってこの戦略は、最終製品でいくつかの要素を裏切っているように見えるかも知れない。フォードが新たな電気自動車を「マスタング」の名で呼んでいることや、より不可解なところでは、ポルシェが電気自動車タイカンの最新版を「ターボ」の名で呼んでいることなどを考えてくれ。マスタングもターボも、独立したブランドとしての背景を備えており、それについてはスピードマスターも同じだ。そして少なくともCal.1932は、デ・ヴィルなどに搭載されていてもおかしくない適切なクロノグラフの形式をとっている。–ジェームズ・ステーシー(James Stacey)
一見の価値あるブライトリングの新作
記事:ブライトリングが予想外の大ヒットとなりそうなGMTをリリース。「Introducing ブライトリング クロノマット GMTは、今年のスリーパー・ヒットになるかもしれない(編集部撮り下ろし)」
コメント:選択肢が広がるのはいいことだが、ロンジン、タグ・ホイヤー、チューダーなど最近の新作リリースでかなり低価格なものも出ているというのに(それらのGMTムーブメントは通常、保証をつけるかつけないかで高価格にもなり得る「賭け」のようなものだったりする)、この価格には驚いた。たぶん、僕はブライトリングのGMTがこうしたものより価値が高い理由をなにか見落としているのだろう。- ChronoCanuck
返答:それは個人の好みの問題に行き着くのだと思う。例えば私なら、チューダー ブラックベイ プロにするだろう。挙げてくださったモデルのなかで、私がつけていた時間が最も長いものだからだ。ブラックベイ プロに優れた価値があるのは間違いなく、発売以来、購入を検討している時計でもある。しかしそれらは美的感覚だけでなく、つけ心地も非常に異なる。ブラックベイ プロは、腕につけたときに厚みが出てしまい、私ならそれに慣れてしまうだろうが、ムーブメントがどうであろうと、もっとお金を払ってでもつけ心地がいいと感じるものにしたい人も大勢いることだろう。仕上げも異なり、クロノマットのダイヤルとブレスレットの仕上げは、この価格にしては注目に値する。ロレックスのジュビリーは必ずしも私の好みには合わないが、それと同時に、人々が心地よさとエレガンスに価値を置く理由に納得することはできる。もっと手の届きやすい価格とサイズのルーローブレスレット付きクロノマットがあればいいと考える人がいるのもわかる。人々は時として、「価値に見合う」と我々が感じる以上の金額を支払ったりするが、それはその人が別の価値観を持っているからにほかならない。 - マーク・カウズラリッチ(Mark Kauzlarich )
マライカが「色の合わせ過ぎ」について説明する
記事: 冗談交じりのやっていいこと、いけないことリスト。「Weekend Edition HODINKEE新任スタイルエディターがお届けするスタイルガイド集」
コメント:「ほかの誰かがネクタイを着用している部屋で、NATOストラップはダメ。はっきりいって砕け過ぎている。そしてたぶん、フリースも着るべきではない」。なんという短絡的な意見。蝶ネクタイ、白いボタンダウンシャツ、ブルーのブレザー、カーキズボン、素足にペニーローファー、これはほぼ、海軍をテーマにしたNATOストラップを求めているようなものじゃないか。- LSP58
僕がもしヴィンテージマニアでないなら、時計のストラップをベルト(や靴)と同色に合わせてもいいということ? そうでなければ家から出られないよ。- Watchuwant
返答:これについては非常に多くのご意見をいただいた。200件近いコメントだった。ある観点では、それは私にとって嬉しいこと。そして別の観点では、今回の「やっていいこと、いけないこと」は、私流にちょっとからかっただけなのに、とも感じた。時計界特有の他愛のない皮肉表現に、実用的なアドバイスを織り交ぜたつもりだった。クスッと笑ってもらおうとしただけだ。もちろん、強い反発を招いてしまったことは重々承知している。でも、このプラットフォームではそう深刻にならず、少し肩の力を抜くぐらいのほうが健康的だと思う。所詮は、たかが時計なのだから。
さて、日没後にNATOストラップをつけることについて、そしてストラップをベルトや靴と同色にすることについて、正直なところ、私としてはそれほど厳しいことを言っているつもりはない。この2つのルールがそれほど不快感を与えるとは思えないし、一般的な服装感覚だと思っている。
色を合わせ過ぎることについては、頑張り過ぎているように見えてしまう可能性があるのだ。正直言って、このやり方は時代遅れだ。黒いストラップに黒い靴を絶対に合わせるなと言っているのでも、のけ者にされたり嘲笑されたりする恐れがあると脅しているのでもない。そんなバカげたアドバイスをするつもりはない。でもどうか、オリーブスウェードのストラップを、オリーブスウェードの靴とオリーブスウェードのベルトに合わせるのだけはやめたほうがいい。私の経験上、時計愛好家は完璧主義に陥りやすいが、完璧さを少し抑えたほうがカッコよく決まるのだ。直観で行こう。互いを補完するような色や生地を合わせれば、ずっと楽に決まる。もしも迷うなら、中間色をそろえておくのがいいだろう。例えば、ブラウンはベージュに、ネイビーはカーキグリーンによく合う。
日没後のNATOストラップについて……これを擁護する必要はあるのだろうか? ディナーに短パンで現れたりはしないだろう。まあ、するかもしれない。その場合、あなたにはこのアドバイスは当てはまらない。明らかにドレスコードなど気にしない人なわけだから。そして時として「それ」はカッコいいのだ。私はかつて、カットオフした迷彩柄の短パンに、ゴールドのブルガリ セルペンティをつけて、アッパーイーストサイドでのディナーに行った。でもこの手の行為は、「私はこの装いだけど、あなたがどう思おうとまったく気にしない」というある程度の気概というものが必要で、ちょっとした挑発を楽しむ人向けであり、断固とした自信を持って着ている場合にのみ有効だ。何と何を合わせたらよいかわからないからと本気でスタイルアドバイスを求めてくる人には、絶対に処方しない装いだ。私自身の事例で説明したように、故意にルールを破るのと、そもそものルールを知らないのとでは話が違う。
そこでルールなのだ。NATOストラップはカジュアルだと理解すること。それはカジュアルなのだ。もしどうしても日没後にそれをつけると言い張るなら、「やあ、私は時計好きなんです、時計についてはあなたよりよく知ってます。私と話をすれば、あなたにも絶対にそれがわかりますよ」という看板を担いだほうがいい。私のアドバイスを受け取るもよし、自分の内なるスタイルの羅針盤に従うもよし。私はどちらでも構わない。気楽に行こう。–マライカ・クロフォード(Malaika Crawford)
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