ADVERTISEMENT
スケルトンダイヤルを用いたり、機構を露出したりする時代にあって、より静かな美学がその声を上げている。それはジャンピングアワーウォッチとギシェデザインがしばしば重複する世界であり、ギシェはフランス語で小さな窓、特に切符売り場の細長い投入口を指す言葉から名付けられている。 これらのふたつの並行したスタイルは、時間を凝縮することで抑制的な表現方法を採っており、1世紀前に登場した事実上最初のデジタルウォッチを思い出させる。そしてそれは文字どおりの意味であり、LCDスクリーンやLEDの助けを借りずに数字だけで(ほら、お母さん、針がないよ!) 時間が示される機械式時計のことだ。
ジャンピングアワーは1883年に ヨゼフ・パルウェーバー(Josef Pallweber)によって最初に特許が取られ、IWCやオーデマ ピゲなどのブランドによって洗練された。ギシェスタイルはカルティエの1928年製タンク ア ギシェによって不滅のものとなり、ミニマリズムをさらに推し進めた。その形状は、特徴的なタンクのシルエットだったが、ソリッドゴールドのインゴットに凝縮されていた。ソリッドメタルの“ダイヤル”に切り込まれたふたつの小さな窓が時・分の回転ディスクのセグメントを示していた。今年のカルティエによるタンク ア ギシェの復刻は、ルイ・ヴィトンのタンブール コンバージェンスがモダンに洗練されたあと、この視覚言語に対する関心を再燃させた。彼らは共に、時に最も魅力的なデザインは、それ自身の才能を隠すものだということを思い出させる、この型破りな時計のトレンドを牽引してきた。
これらはきわめて今の時代のものである。そこで現在のこのカテゴリのなかで私たちのお気に入りのいくつかをまとめることができると考えた。それではさっそく始めよう。
ルイ・ヴィトン タンブール コンバージェンス
多くの人と同様に、私もルイ・ヴィトンの初期の時計作品には懐疑的だったと認めざるを得ない。しかし、数年前の金色のカルペ・ディエムの、ダイヤルにあしらわれたスカルの狂気じみた笑みによって私の直感は覆され、昨年その洗練された一体型ブレスレットを備えた新しいタンブールコレクションが多くのコレクターのレーダーに現れた。私にとってミニマルで、はんだ付けされたラグを持つコンバージェンスは、ジュネーブにあるブランドのマニュファクチュール、ラ・ファブリク・デュ・タンが生み出した最高の作品だ。
1月の発売時にHODINKEE紹介したこの時計については、小石のように磨き上げられた前面と12時のふたつの時間窓に対して特別な思い入れを持っており、ジェムセットバージョンに対して私が“最高に罪深い楽しみ”のリスト入りしたことを認める。ヴィトンは、時間を示す鮮明な青色のフォントを持ったふたつの大きなディスクがゆっくりと回転するため、これを“引きずり時・分(dragging hours and minutes)”のコンプリケーションと呼んでいる。自社製の自動巻きCal.LFT MA01.01がコンバージェンスに動力を供給し、2万8800振動/時(4Hz)で振動し、フリースプラングテンプを備えた45時間のパワーリザーブを特徴としている。これはカルティエにミニマムなタンクを復活させるきっかけを与えるだろうか?
詳しくはルイ・ヴィトンの公式サイトから。
カルティエ タンク ア ギシェ
ジュネーブにあるパレクスポの時計ホールの扉が開いたとき、私のカルティエに関する予測は3つの金塊で実現されていた。タンク ア ギシェはサテン仕上げを施したイエローゴールド、ローズゴールド、またはステルス調のプラチナで表現されたミニマルな顔を持ち、新しい手巻きのCal.9755MCと非対称ディスプレイを備えたドライバーズウォッチスタイルで登場した。私はこれまでオークションシーンでのその驚異的な上昇を鋭く認識しながら、ヴィンテージバージョンを脇から賞賛してきたが、これは純粋主義者の再誕だった。
マークがその発売記事で説明したように、最初のモデルは1930年代をとおして特別な顧客のためのワンオフとして 製造され、2005年に100本限定で発売されて以来見られていない。今回、コレクターは自分で選ぶことができるが、私はふたつの窓の小さな数字を読むのに苦労していることを認める。それでもなお私の聖杯リストにある。全面サテン仕上げを施したフロントは独特の美学を持ち、そのセミインダストリアルな外観が貴金属のコストを思わせない。 縦37.6mm×幅24.8mmのタンク ア ギシェは、数えきれないほどの会話のきっかけとなるドレッシーな喜びだ。
詳しくはカルティエの公式サイトから。
ショパール L.U.C クアトロ スピリット 25
ショパールが2021年にマニュファクチュールの25周年を記念した際、それは静かに自信を持って発表されたのが、ブランド初の自社製ジャンピングアワーウォッチ、L.U.C クアトロ スピリット 25だった。これは40mmのケース、グラン・フー エナメルダイヤル、そして8日間のパワーリザーブを誇るCal.L.U.C 98を備えた、純粋さの究極を追求した作品である。今回、メティエダールの祭典として、大胆なハニカム模様が施されたL.U.C クアトロ スピリット 25 ストロー マルケトリー エディションが登場し、物語は新たな章へと続いた。
これは、18K エシカルイエローゴールドまたはホワイトゴールドのふたつのリミテッドエディションで、ショパールは麦わら細工による魅惑的なパターンを提供する。この希少なクラフトマンシップにより、この緑のバージョンが今年のGPHGの工芸賞(Artistic Crafts)カテゴリーでノミネートされた。ジャンピングアワーディスプレイと、4香箱構造はそのままに、ショパールの静かな熟練のための舞台を提供している。
詳しくはショパールの公式サイトから。
ベダーア エクリプス
もしあなたのなかに、窓を備えたダイヤルをコレクションに加えるために複数の新しいクレジットカードにすでにサインアップしている人がいるなら希望はある。いくつかの小さなブランドが、針という制約のあるフォームファクターではなく、窓をとおして時間を示すという挑戦を受け入れており、ベダーアはその好例だ。私は8月にCEOでデザイナーのソヘイブ・マグナム(Sohaib Maghnam)氏と話をしたが、彼のエクリプスは現在、2025年のGPHGでチャレンジ部門の6つの時計のひとつとしてノミネートされている。
ショパールと同様にこれは12時位置に設定された窓に時間を示すが、ジャンピングアワー機能ではなく回転ディスクによるものだ。分は、小さく明確なポインターによってサファイア製の外周リングをとおして表示され、すべてが大きなラグを持った37mmケースに収められている。そして5000ドル(日本円で約77万5000円)未満という価格で、これは進化した兄弟分のエクリプスIIと直接競合する魅力的なオプションである。
詳しくはベダーアの公式サイトから。
ブレモン テラノヴァ ジャンピングアワー
ブレモンは業界の実力者ダヴィデ・チェラート(Davide Cerrato)氏を舵取り役に迎えて進展しているが、テラノヴァケースにジャンピングアワー機構を備えた分厚いソリッドブロンズは大きな驚きだった。ブラックダイヤルを備える40.5mmのスティールバージョンは、中央にスイープセコンド針を備えた風変わりでクールなものだったが、小さなケースにおける私の好みはダイヤルに開いた空間が多くあるものであるため、きちんとした36-38mmで出てほしかった。38mmの緑青を遅らせる銅アルミブロンズ製の限定版は、セリタによって開発された同じエクスクルーシブなジャンピングアワームーブメント、BC634AHを備えており、即座に完売してきわめて異なる外観を提供した。
私にとってテラノヴァケースはロレックス バイセロイの強化版のように見えるが、サテン仕上げを施したメタルフロントを備えることで、それ独自のスチームパンク的な雰囲気を帯びている。今月、ブレモンはスティール製の量産バージョンを発売し、コレクションをさらに拡充した。垂直に整列した3つの窓はクールで、センターセコンドはブレモンの通常の戦闘機パイロット風の雰囲気とはかなり異なる独特の魅力を提供する楽しい機能だ。
詳しくはブレモンの公式サイトから。
ジェラルド・チャールズ マエストロGC39 25周年記念エディション
ブランドの25周年を祝うジェラルド・チャールズ マエストロGC39 25周年記念エディションは、ジェンタのバロック様式のケースデザインにチタンの軽さを加え、メゾンのシグネチャーシルエットを洗練させている。それは元々ジェラルド・ジェンタ(Gérald Genta)によって考案された形状であり、ジェラルド・チャールズはタペストリーパターンのラバーストラップという大胆なコントラストで、よりスリムでスポーティにした。
このブランドの時計は際立った個性で賛否両論を呼ぶが、ここでGCは2005年のジェンタの創作を彷彿とさせる大胆な仕上がりだ。これは濃い青のラピスラズリのインナーダイヤルと、GCがメタ・ギョーシェ(Meta Guillochage)と呼ぶ化学的なマイクロ彫刻技術によって生き生きとしたメインダイヤル空間を特徴としている。マエストロGC39にはミニマリズム的なものは何もなく、中央の分針と12時のジャンピングアワー窓を備えたデザインは万人受けではない。しかし私たちは時折、マキシマリズムを受け入れる必要があり、マエストロGC39 25周年記念エディションはその心を大胆に手首に宿している。
詳しくはジェラルド・チャールズの公式サイトから。
シャネル ムッシュー ドゥ シャネル
シャネルのウォッチメイキング技術は通常、大胆なスポーツウォッチに対するセラミック技術への愛着に起因するが、ムッシューはまったく異なる存在であり、登場からほぼ10年にわたりシャネル独自の美学を際立たせてきた。40mmケースを備えた大きく開いたダイヤル空間は、手首で大きく存在感を示すが、18K ホワイトゴールド製ケースで縁取られたディテールは私にとって余分なミリ単位の価値を十分に感じさせる。これは70時間のパワーリザーブを誇る手巻きムーブメントを備えており、解き明かすべき多くのことがある洗練されたオパラインダイヤルを持っている。
5時から3時までの縁を囲む風変わりなテキストの選択を除いて、縦長の構成はバランスが取れており、レトログラード分表示が12時のセンターステージに位置し、小さな秒が中央のわずか下をゆっくりと進み、大きな窓が6時位置にある。控えめな切り込みを期待するだろうが、まったく逆の印象を与えるこのデザインこそ、私のお気に入りのディテールだ。大胆な八角形のフレームは、ふたつの目に見えるネジで固定され、ミニマルでモダンな書体が開口部を埋め尽くす。そして12時位置の瞬時針が次の1時間を告げる瞬間的な魅力が、そこに凝縮されている。
詳しくはシャネルの公式サイトから。
まとめ、そしてオーデマ ピゲへの問い
ジャンピングアワーとギシェスタイルの時計の顔は、今年新たなトレンドとして注目されているとしても、何らかの形で常に私たちと共にあった。常識に逆らう者として、私は針やインデックス以外のものが時間を示しているのを見ることができて常にうれしく思うと同時に、オーデマ ピゲに大きな質問がある。1996年にさかのぼるが、オーデマ ピゲはRef.25798を製造した。私がこの記事を執筆するために調査しているとき、クリスティーズの落札情報を見つけ、3万~5万ドル(当時のレートで約450万~750万円)の見積もりに対して13万8000ドル(当時のレートで約2000万円)で落札された事実を知り、強い憧憬を抱いた。
文字盤の中心は、カルティエを彷彿とさせる縦型のギシェ窓で時と分を表示するが、“ジョン・シェーファー(John Schaeffer)”Ref.25798は、 そのミニッツリピーター機能でほかのすべてを凌駕している。オーデマ ピゲが来年それを復活させることを想像してみて欲しい。クリスティーズで販売された1996年バージョンのモデルは、控えめな幅33mm、縦40mmのスリムで珍しいクッションケースにその並外れた複雑機構を融合させており、同ブランドが20世紀初頭に製作したオリジナルのシェーファーウォッチの遺産を引き継いでいる。そこには、所有者の名前がダイヤルインデックスに綴られていた。
話題の記事
No Pause. Just Progress GMW-BZ5000で行われた継承と進化
Introducing ゼニス デファイ エクストリーム クロマに新たなふたつの限定モデルが登場
Introducing ヴァシュロン・コンスタンタンが36.5mmの新型トラディショナル・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダーを3本発表