時計愛好家は、なかなか自分の意見を言わないものだが、次のTalking Watchesは誰に登場して欲しいかと質問すると皆さんはっきりとしたご意見をお持ちだ。今日は、そんな皆さんが、熱望していた方なので、間違いなくご満足頂けるはずだ。作家であり、シェフであり、テレビの司会もこなし、かつパイロットでもある、あらゆる意味で凄い人、アルトン・ブラウン氏。アルトン氏は、料理界とショービズ界の大御所で、彼の料理番組『Good Eats』は大変な人気番組であり、アイアン・シェフ・アメリカ(アメリカ版料理の鉄人: 3年の休止から復活し、現在番組制作中)と今年のアイアン・シェフ・ガントレットの両番組の司会もなさっている。また、ライブショー“Eat Your Science”であちこちを忙しく飛び回っている方でもある。
Talking Watchesを通じた私のこれまでの経験の中でも、アルトン・ブラウンという名はインタビュー候補として最も多く上がっていたので、この度Peabody and James Beard賞を受賞した有名なシェフであるアルトン・ブラウン氏のお話を伺うことができることを大変誇りに思う。
ロレックス GMTマスター Ref. 6542
アルトン・ブラウン氏はテレビ番組のホスト、プロデューサー、作家そして飛行機乗りでもある。そしてこのGMTマスターは、飛行機を操縦するときに着けるべき時計だ。Ref.6542モデルは、GMTマスターの初期モデルで、この後のモデルは、価格を下げるために堅牢さを失い、ベークライトベゼルがアルミベゼルに変更になった。
ロレックス サブマリーナー Ref. 1680 赤サブ
アルトン氏が、この1680 赤サブをお気に入りの時計の一つに選んだ理由は、ベゼルのすり減り具合と文字盤のインデックスの味わい深いくすみ具合だ。サイズも腕時計としてはなかなか大振りだが、それがまたいいところなんだとか。こういった部分こそが、サブマリーナーを収集する大きな楽しみのひとつだと言えるのではないだろうか。なぜなら、どんな人生、歴史を歩んできたかという証しそのものなのだから。
ロレックス サブマリーナー Ref. 6205
1960年代に育ったアルトン氏は、宇宙探索と深海探索が大好きだったそうです。このサブマリーナーは、彼が主に料理をするときに使用する時計だそうで、ダイバーズウォッチを代表する時計として絶対持つべきものだと話す。アルトン氏曰く、このRef. 6205の小さなリューズとスリムなケース、そしてミラーダイヤルがお好きだそうで、スーツに合わせるのも好んでいる。
ニバダ・グレンチェン デプスマスター
このニバダ・グレンチェンは、生まれ年の1962年に製造された時計で、何年も前に親戚からプレゼントされたもの。アルトン氏には、大変思い入れのある時計なのだそう。ケースは、小さいパネライのような形をしており、特徴のある文字盤は、まるでパックマンが数字を見ているようなデザインだ。
チューダー サブマリーナーRef. 7021 “スノーフレーク”
チューダーはアルトン氏曰く、保守的な兄貴分のロレックスとは違って、想像力旺盛な弟のようだと言う。このRef. 7021は、ブルーの文字盤とスノーフレーク針を気に入っていて、もともとサイクロプス付きのサファイア風防がはめ込まれていたが、あまり気に入ってなかったそう。このチューダー サブは、アルトン氏が旅行に行くときによく使用する時計なんだとか。
父親のオメガ シーマスター・クロノストップ
この時計にまつわる物語は、過去4年間に伺ってきたTalking Watchesの中でも最も信じがたいストーリーがあった。アルトン氏のお父様は、彼がまだ10歳だった1973年に亡くなったその日も、このオメガ クロノストップを腕に着けていたそうだ。その後、アルトン氏のお母様はその時計をアルトン氏に渡したのだが、大学時代に彼のアパートに泥棒が入り、時計は盗まれてしまった。皆さんのご想像の通り、アルトン氏は父の形見の時計を失ったことで大変ショックを受けたが、決してあきらめず時計を探し続けたのだった。
数十年後、盗まれた時計をアルトン氏はついにeBayで販売されているのを見つける。お父様の、何でも細かくメモする性格のおかげで、このひどく摩耗した時計がまさに父の形見だと確認することができたので、無事買い戻すことができたという。また、アルトン氏は、元のオリジナルパーツをストックしている時計メーカーを見つけて、記憶に残っている元の時計の状態に戻してもらったのだそう。
お父様の形見のこのオメガ クロノストップは、アルトン氏のとっておきの時計コレクションの中でも最も大切なもののひとつであり、よく使っているそう。特に空中待機飛行時には、この時計の1分計によるストップウォッチ機能が大変実用的と話してくれた。