Talking Wathesとは、毎回時計好きの著名人やコレクターの方とHODINKEE編集部が単に時計について語り合うという、まさにここでしか見られない動画企画です。US版HODINKEEのTalking Watchesでは初回にロックスターのジョン・メイヤーが出演し、今も繰り返し再生されているヒット回となっています。この動画を見て腕時計ファンになったという方も多く、時計の魅力を新たな切り口で伝える、HODINKEEの代名詞のような企画となっています。
さて、今日ついに日本オリジナルのTalking Watchesを公開できる日がやってきました。記念すべき第一回の出演者は、ビームスF ディレクターの西口修平さん。彼の著書「Nishiguchi's Closet」(学研プラス刊)でも明かされているように、アンティークウォッチの収集をひとつの趣味とされていて、コーディネートの仕上げとして腕時計を愛用している人物です。特に40~60年代の時計が中心となっている彼のコレクションは、どこかにヴィンテージアイテムを潜ませるご自身のスタイルに非常にマッチしたものばかりでした。
これらの時計が作られた時代というと、クラシックな腕時計がサイズ・デザイン共にひとつの完成を迎えたころ。スポーツウォッチ全盛の現代において、私自身、クラシックスタイルの時計の魅力を再発見する良いきっかけともなりました。
西口さんは、ヴィンテージウォッチが製造された時代には革ベルトが付いていたであろう時計でも、NATOストラップなどのナイロンベルトに付け替えて楽しむのがお決まりのスタイルといいます。時計を着こなしのアクセントとする彼らしい手法ですが、多くのうんちくや内部の機械的な魅力以上に、腕時計とはまず着けることに価値があることを改めて教えてくれます。
私も早速、時計ケースに眠っている古いメカニカルウォッチのナイロンストラップを買いに走って、かつての相棒を復活させてみたいと思います!
今回のお相手は、HODINKEE Japan編集長の関口 優が務めさせていただきます。
LIP 珍しいファンシーラグのヴィンテージ
西口さんの時計コレクションの始まりともいえる時計。ビームスに入社して間もないころ東京出張の際に(西口さんは大阪府出身!)ヴィンテージ時計を扱い始めていたビームスの店舗で購入したそう。“金無垢×クロコストラップ”という、西口さんが当時抱いていた良い時計の理想像に偶然マッチした時計とのことで、センターセコンドでなくスモールセコンドな点も気に入ったポイント。ストライプのストラップに換えている理由としては、20代から大人になるにつれて彼のクラシカルなドレススタイルも柔軟に変化し、腕時計も肩ひじ張らずに遊びを入れたストラップで着用したいと考えたから。20~30万円のジャケットに5000円のスニーカーを合わせるように、時計もライフスタイルの表現として着けたいという思いが強いと語りました。
ヴァシュロン・コンスタンタン センターセコンド ラウンドケース
50年代のヴァシュロン・コンスタンタンで、手持ちの時計で最も高価なものだそう。経年変化によって灼けた文字盤が何ともいえない魅力を放っています。12・3・6・9のインデックスにはアラビア数字が用いられており、丸みを帯びたフォントは同社最新のコレクションであるフィフティー・シックスを思わせるデザインです。手巻き・薄型の、ドレスウォッチの規範ともいうべきスタイルを持つ一本です。
西口さんは、30~60年代のクラシックな洋服が全盛だったとされる時代のスタイリングを軸としていて、60年代以前のものに憧れを持つといいます。当然、時計もこの時代のデザインが最高にツボをついたものになるそうです。当時、ジャガー・ルクルトのベースムーブメントをヴァシュロン・コンスタンタンも使っていたというストーリーにも惹かれると語ってくれました。
オメガ シーマスター デ・ヴィル クロノグラフ
当時、シーマスターとデ・ヴィル2つの名前を関していたドレススタイルのクロノグラフ。内部にはCal.861が搭載されており、同時期に製造されていたスピードマスターと同等の機能を持っています。ムーブメントから、この時計が70年前後に作られたものと推測されます。クロノグラフというとスポーティなイメージが強いですが、西口さんは自身のスタイルにマッチさせるため、あえてゴールドメッキで装飾が施された金色の同モデルをセレクトしたということです。クロノグラフとは、当時のモデルだけにケースサイズが小さめなのも重要だったとのこと。
自分のライフスタイルに合った
時計をすることが
絶対に自分の人生を豊かに
してくれる
ロレックス オイスタープレシジョン 手巻き
60年代に製造されていた通称“ビッグオイスター”。本機は愛称のとおり、当時としては大きめのケースを採用していたところが特徴で、そこにギャップを感じたところがコレクションに加える決め手だったそうです。他の時計は、より小さなサイズの中に緻密な機械を実装させることに競っていた時代に、“あえて大きなサイズで作っていたことはとてもポップに感じる”とのこと。西口さんは、ハズしのポイントとしてこの大きめな時計を着用するそうです。50年以上経っても美しいサンレイダイヤルには目を奪われます。
IWC SAB100 Cal.83
IWCを代表する手巻きムーブメントであるCal.83を搭載した“オールドインター”。長く伸びたリーフ針と小ぶりなアラビアインデックス、ベゼルの際までダイヤルが配されたデザインは、まさに名機ポルトギーゼのルーツともいえる意匠であり、西口さんの琴線に触れる大きなポイントだったそう。SSのドレスウォッチを探していたところ出会い、10年前程に購入したといいます。ロゴが筆記体で、色も薄く主張しないこの時代のIWCを特に好んでいるようです。(この時計も購入時はクロコダイルストラップだったのが、今やナイロンベルトに定着したそう)
腕時計はコーディネートを最終的に
完成させるピース
僕は365日着けています。
ハマったら最後、抜け出せないものですね
ブローバ レクタンギュラー ウォッチ
第二次世界大戦のころに生まれた時計。今となってはかなり珍しい小型レクタンギュラーのブローバです。西口さんは昔のハリウッド映画から、コーディネートのインスパイアを受けることが多いそうで、このブローバはかつてのギャング映画で似た時計を見つけてピンときたそう。
“当時の映画にはよくこういうデザインの時計が登場していました。今では他に誰も着けていないし、昔のスタイリッシュなギャングのような恰好をするときに着けます。シャレ半分ですけれど(笑)”と笑う西口さんですが、この時代の勢いのあるアメリカ時計ブランドからはスイスブランドに並ぶ程、本気で作っていたパワーを感じるとも語ります。一方で収集をしている、リーバイスのように愛着があって、身に着けて“アガる”ものなのだそうです。
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