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昨年8月のGeneva Watch Daysで、私はパルミジャーニ・フルリエの新しいトンダ PF コレクションは「何かとてもエキサイティングなことの始まり」だと書いた。そう言ったとここでお伝えするのはためらわれるものの、今回はまさにその通りだった。2021年1月にCEOとして同ブランドに加わった同コレクションの設計者であるグイド・テレーニ氏は最近、パルミジャーニがすでに2022年に生産できる総本数がソールドアウトしたことを知らせてくれた。トンダ PFは間違いなくヒット作だ。
パルミジャーニ・フルリエというブランドの周りには、とてつもなく大きな好意とポジティブなエネルギーが蓄積されているように感じる。先月末にジュネーブで開催されたWatches & Wonders 2022でも、その雰囲気は変わらず、2021年8月のデビュー以来初めてとなるトンダ PFのラインナップ拡充を目の当たりにすることができた。同社は期待を裏切らなかった。私たちはトンダ PF初のスケルトンと同じく初のトゥールビヨン搭載モデルを目撃したが、ショーのハイライトは明らかにこの新しいトンダ PF GMT ラトラパンテのリリースだった。
同社が「世界初のコンプリケーション」と豪語するこのモデルは、多くの賞賛を集めている。トンダ PF マイクロローターの成功を支えたスリムなフォルムに、デュアルタイムゾーンのコンプリケーションを巧みに取り入れたモデルだ。トンダ PF GMT ラトラパンテは、繊細さと控えめさを何よりも優先しており、それはエンドユーザーにとってプラスにもマイナスにもなるかもしれない。
なぜなら、ある視点から見れば、パルミジャーニの最新作を見て、機能的にはGMTでもラトラパンテでもないと思われるかもしれないからだ。そして、もしあなたが時計用語に対して極めて衒学的であるならば、私はあなたに同意するかもしれない。しかし、その時計が何であるかという部分に注目してみよう。このパルミジャーニ・フルリエ トンダ PF GMT ラトラパンテは、ここ数年で最も興味深く、控えめなデュアルタイムウォッチのひとつである。
パルミジャーニの最新作は、みなさんがよくご存知のGMTコンプリケーションとは異なり、日付表示窓もAM/PM表示も24時間針もない、トラベルジャンルのモデルだ。また、HODINKEEでよく紹介されているラトラパンテ機構とは異なり、クロノグラフでもない。一見すると、時間表示のみの2針時計で、昨年のトンダ PF マイクロローターよりもさらにシンプルな時計に見えるかもしれない。この抑制された錯覚こそがポイントなのだ。トンダ PF GMT ラトラパンテは、できることをわざわざ隠している。
そのヒントは、8時位置付近のティアドロップ型ラグに内蔵されたケース上のプッシャーにある。このプッシャーを押すと、ホワイトゴールドの時針が1時間単位で動き出す。ローズゴールドのセンター時針は、ホワイトゴールドの時針の下から姿を現し、ホームタイムを示すために元の位置に留まる。ホワイトゴールドの時針で新しいタイムゾーンを設定することができ(1時間のオフセットのみ、つまりニューファンドランド島は非対応)、ローズゴールドのセンター時針は、元の時刻とホームタイムを示す。
第2時間帯の必要性がなくなると、3時位置のリューズの一部となっているローズゴールドのプッシャーが、ローズゴールドの針と同軸上に配置されたホワイトゴールドの時針を元の位置に戻す。このプッシャーを押すと、シルバーの針が文字盤を一周し、ローズゴールドの針がその下に一瞬で消えるのを見ることが可能だ。
パルミジャーニは、トンダ PF GMT ラトラパンテの設計と実装に関するいくつかの特許を持っているため、正確にどのように動作するのか、彼らは共有することが難しかった。しかし、私の理解は、それはクロノグラフと同様に、12スポークのスターホイールとリセット機構を管理するハート型のカムがこの機構に含まれているというものだ(スプリットセコンド・クロノグラフに見られるようなハサミのようなクランプはない)。ケースサイズは40mm×10.4mmで、フラッグシップモデルであるトンダ PFの40mm×7.88mmと比べると、驚くほど小さなサイズに収められている。
実際に手に取ってみると、トンダ PF GMT ラトラパンテは、時計製造の最も人気のあるカテゴリーのひとつにある時計を、洗練された形で簡略化したものであることがわかる。GMTでもラトラパンテでもない、伝統的な意味でのGMTであり、その名前に反してどちらかになろうとしているようには感じられない。日付窓、AM/PM表示、24時間針など、杓子定規なGMTコンプリケーションの代用品は世のなかに無数に存在する。同じものがもうひとつ必要だとは思わない。パルミジャーニがもたらしたのは、ツールウォッチとしてではなく、ラグジュアリーグッズとして認識させる、真に斬新で新鮮な表示のあり方なのだ。
パルミジャーニが望めば、伝統的なGMTウォッチを作ることができるのは間違いないし、同社はすでに絶対的に最高のラトラパンテ・クロノグラフムーブメントを作っている。そのため、最新のトンダ PFが行った基本的な選択は、何か制限があったからではなく、意図して選択されたのだということをを理解する必要がある。テレーニ氏は以前、このGMT ラトラパンテのコンセプトが生まれるきっかけとなったブレインストーミングの様子を少し話してくれたが、そこでもこの新しい複雑機構の美しさ、ロマン、そしてシンプルさを強調していた。オリジナルのGMTウォッチは、グリシン エアマン、ロレックス GMTマスター、ロンジン スピリット ズールータイムなど、男性が仕事場や空、フィールドで使う機能的な道具として作られたものだ。パルミジャーニは、その実用的な起源を真っ向から否定する新しいタイプのGMTを作り上げたのである。わざわざGMTウォッチらしくする必要はないだろう?
昨年10月、テレーニ氏は私に、パルミジャーニが今求めているのは「すでにすべてを持っているお客様」であり、「私たちの顧客は、初めて時計を買う人ではないのです」と語っていた(詳細は記事「パルミジャーニ・フルリエ トンダ PFコレクションを実機レビュー」をチェック)。
ステンレススティール製で328万9000円(税込)という価格は、トンダ PF GMT ラトラパンテが入門者向けのタイムピースとなる可能性は非常に少ないと考えてよいと思う。21世紀の時計コレクションに求められるラグジュアリーな要素を取り入れただけでなく、ファーストクラスのラウンジやプライベートジェットのターミナルをホームグラウンドとする可能性も十分に秘めていると言えるだろう。
トンダ PF GMT ラトラパンテは、美しく、かつシンプルで、ステンレススティール製スポーツウォッチというジャンルの時計製造に新たな局面をもたらす時計だ。
詳しいスペック、価格、発売時期については、最初の紹介記事「パルミジャーニ・フルリエ トンダ PF GMT ラトラパンテ、世界初のGMTコンプリケーションを発表」をご覧ください。
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