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Watching Movies 『アルゴ』ベン・アフレックのロレックスには何か違和感がある

今週の時計関連ムービーでは、時代考証の点ではまったく正しくないシードゥエラーを取り上げる。


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私は、監督がノスタルジアを表現したちょっとした演出が好きだ。ベン・アフレックは『アルゴ(Argo)』(2012年)で、70年代のワーナー・ブラザースのオープニング・クレジットを、グルーヴィーなアニメーションと時代特有のアイコンで表現し、まさにそれを実践している。通常、このような演出は時代物の作品であることを示すもので、細かいディテールがすべて的確に表現されているものだ。

 『アルゴ』は、特殊な歴史フィクションである。カーター、レーガン両時代のイランアメリカ大使館人質事件を描いたアカデミー賞作品賞受賞作だ。この映画は、トニー・メンデス(アフレックが演じるが、彼はこの映画の監督でもある)による、あまり知られていない人質救出劇の物語である。メンデスはCIAの工作員で、人質をロケハンや雑用係に見立てて偽のSF映画を作り、救出作戦を完成させる。もちろん、ドラマチックな効果を狙って、大袈裟に強調された部分もある。そして、アフレックの手首の時計は、強調どころか完全に間違っていたのだ。

Affleck Deepsea

ロレックスのディープシーをつけたトニー・メンデス役のベン・アフレック。左側は『アルゴ』で、アラン・アーキン演じるレスター・シーゲル。Image, Warner Bros


注目する理由

 今年で公開10周年を迎える『アルゴ』。この映画は、時計愛好家のあいだでは映画史上最もあからさまな間違いを犯していることでも知られている。Watching Moviesでは、(『ハウス・オブ・グッチ』や『マネー・ショート 華麗なる大逆転』など)時代考証がやや不明瞭な時計が登場する映画も取り上げてきた。しかしそれらの時計は、不信感を抱かせるほど場違いなものではなかった。

 しかし『アルゴ』では違うのだ。映画の舞台は1979年から1981年、ロレックスのダイバーズといえば、ジャラジャラしたブレスレット、アルミ製のベゼル、マットな文字盤で知られていた時代である。今日ではそれらの時計は、ベゼルは色褪せたゴーストに、夜光プロットはクリーム色に変わり、ブレスレットは長年の酷使で伸びてしまっているだろう。サイズは、スイートスポットである40mmがほとんどだ。

Vintage Sea-Dweller

1979年製ロレックス シードゥエラー。  これを使用していれば映画の時代に相応しかったはずだ。

 ロレックスは、ダメージ(人によっては魅力になる)を軽減するために、何年もかけて生産と素材のプロセスを改善し、2000年代半ばに最新の非伸縮性ブレスレットとクラスプの組み合わせ(と色あせないセラミックのベゼルインサート)を開発。2008年になると、市販のダイバーズウォッチで最も高性能なモデルを発表した。それはシードゥエラーよりも深海に潜れることから、シードゥエラー ディープシーと名付けられた。44mmの大型で頑丈なケースに、特許を取得したリングロックシステムを搭載し、深海での水圧に耐えることができるようになった。このことは、文字盤の外周を見ればわかる。

Deepsea

『アルゴ』でアフレックが着用していた時計と同様のロレックス ディープシー。

 しかし、70年代や80年代の話の途中で、なぜ現代のロレックス製スポーツウォッチの話になるのだろうか。それは、事件の年から30年以上経って発売されたこの時計が、『アルゴ』でアフレックによって着用されているからだ。

Affleck Deepsea

『アルゴ』で、メンデス(アフレック)が本格的な最新型ロレックスのディープシーを使い、CIAの仕事をこなしている。 Image, Warner Bros

 都市伝説によると、小道具担当はアフレックのためにヴィンテージのサブマリーナーのレプリカを用意したそうだが、彼は本物を手に入れることを望んだという。そこで、超モダンな(そして超大型の)新品のディープシーをショップで購入することになったようだ。彼は監督だから、たとえ時間の法則に反していても、ショットを決めるのは彼なのだ。デロリアンの1号機ができたのが1981年だから、何でもありだ。

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見るべきシーン

 メンデスがCIAのオフィスで脱出計画を練った直後、彼が一人、自宅でテレビを見ながら夕食をとっているシーンへ切り替わる。そして、時代的に正しいスターウォーズのベッドシーツの上に座った息子から電話を受ける。メンデスは時計をつけた腕で受話器を耳に当て、現代的なロレックスのケース構造と重厚なプロフィールを持つディープシーをはっきりと見せている[00:22:20]。クローズアップでは、ヴィンテージとは明らかに異なる近代的なロレックスのクラスプを見ることができる。アフレックの手首を細く見せるのは大変なことだが、ディープシーはそれをやってのけた。

Affleck Deepsea

Image, Warner Bros

 このシーンのあと、メンデスはLAのトレーラーのなかに、ジョン・グッドマン演じるハリウッドのメイクアップアーティストと共にいる。一見時代的に正しい映画の小道具や雑誌がたくさんあるところだ。メンデスは、救出作業を隠蔽するために「アルゴ」という偽の映画を作るという自分のアイデアを語っている。彼は半袖のぴったりしたシャツを着ているので、44mmのステンレススティールのすべてがワイドショットではっきりと見えるのだ[00:27:45]。このシーンは、グッドマンの今では有名になった次のセリフが聞ける重要な場面だ。「ハリウッドに来て、何もせずに大物のように振る舞いたいんだね。君に"ぴったり "だよ」。

Affleck Deepsea

Image, Warner Bros

『アルゴ』(主演:ベン・アフレック)は、ベン・アフレックが監督、マイケル・セクストンが小道具を担当。Netflixでストリーミング配信されているほか、iTunesやAmazonでレンタルや購入が可能。

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ロレックス サブマリーナーについて詳しくは、ブランドサイトをご覧ください。HODINKEE Shopでは、ロレックスの中古ヴィンテージウォッチを取り扱っています。