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クイック解説
ブライトリングにとって、2022年はブランドにおけるさまざまなアイコンモデルの節目が重なる極めて重要なアニバーサリーイヤーだ。1941年に対数式の回転計算尺を持つ世界初の腕時計「クロノマット」を開発したブライトリングは、1952年にクロノマットの持つ計算尺を航空用に適合させ、飛行に必要なあらゆる計算をすべて行うことができる「ナビタイマー」の開発をスタートさせた(国際オーナーパイロット協会〈AOPA〉から会員向けに製作を打診されたのが1952年。54年にAOPAの公式時計となり、市販されたのは55年から)。そして1962年。プロトタイプ製作を経て、宇宙で昼夜を区別するために24時間表示ダイヤルを採用した、宇宙飛行士のための腕時計「コスモノート」が誕生した。そう。今年でナビタイマーは70周年、そしてコスモノートは60周年を迎えたのだ。
クロノマットもナビタイマーも話題に事欠かない時計だが、コスモノートで最も有名なのはスコット・カーペンター(Scott Carpenter)との逸話だろう。アメリカ海軍パイロットで、1958年から始まるNASAのマーキュリー計画における7人の宇宙飛行士のひとりであったスコット・カーペンターは、ナビタイマーをベースに24時間表示ダイヤルを追加したスペシャルバージョン、コスモノートの製作をブライトリングに依頼。そして1962年5月24日、彼はコスモノートを身につけてマーキュリー・アトラス7号ミッションに挑み、アメリカで2人目となる大気圏外の地球周回を実現し、地球を3周、4時間56分にわたる飛行に成功。かくしてコスモノートはブライトリング初の、そして宇宙に飛んだ初めてのスイス製“腕時計”となった。
そしてこの60周年のアニバーサリーイヤーを迎えて製作されたのが、オリジナルのコスモノートのデザインにインスピレーションを得た、ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート リミテッド エディションだ。
新しいコスモノートでは、オールブラックダイヤルにブラックアリゲーターストラップのほか、7連のステンレススティール製ブレスレットの2バリエーションが用意された。ケース径は41mm。一見すると、オールSS製ケースのように見えるが、ベゼルにはプラチナ素材が使われている。
時計を裏返すとシースルーバック仕様になっており、サファイアクリスタル越しにブリッジに記念のエングレービングを施したムーブメントを見ることができる。Cal.B02は2018年頃にディスコンとなった当時のコスモノートにも使用されていたムーブメントで、本機のブリッジにはCarpenter(カーペンター)、Aurora 7(オーロラ7号)、3 orbits around the Earth(地球3周)の文字と、NASA初の有人宇宙飛行に選ばれた7人の宇宙飛行士を表すMercury 7(マーキュリー7)の名が刻まれおり、このモデルのために特別に用意された意匠となっている。本機は世界限定362本の限定モデルで、価格はレザーストラップ仕様が134万2000円、SS製ブレスレット仕様が139万1500円(ともに税込)。5月24日(火)23:00(日本時間)の情報解禁に合わせて発売を開始した。
ファースト・インプレッション
ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート リミテッド エディションはオリジナルの復刻版ではない。上の写真を見てもらうとよくわかるが、ベゼルはオリジナルのようなビーズタイプではなく、のこぎり状のデザインを採用している。しかもSS製だったオリジナルとは異なりプラチナ製のベゼルだ。またダイヤルに目を向けると、AOPAのウィングロゴこそオリジナルにも見られるものだが、プリントではなくゴールドのアプライド仕様。ダイヤルのロゴや文字の配置バランスもオリジナルとは異なる。さらに付け加えるなら、12時位置の12時間積算計に馴染むように設けられているが、日付表示はオリジナルにはなかったものだ。
強いてオリジナルに近しいディテールを挙げるとしたら、ケースのプロポーションであろうか。コスモノートはブライトリングを代表するアイコンモデルの一角を成しているだけあって、過去にもたびたび製作されてきた。記憶に新しいところでは、2012年に登場した世界限定1962本のナビタイマー コスモノート、そして2013年の世界限定1000本で販売されたナビタイマー コスモノート ブラックスチールがある。それ以前にも2000年頃まではレマニアの手巻きクロノグラフ Cal.1873をベースにしたCal.12(当時)搭載したモデルが製作されていた。いわゆるレマニア時代のコスモノートも約41mmサイズだが、ラグの形状はやや太く短め。新しいコスモノートのラグはオリジナルを思わせる細めで長い形状をしている。
新しいコスモノートは、ブライトリングにとってどんな存在なのだろうか。筆者が思うに、本機はオリジナルに忠実なディテールを好むヴィンテージ愛好家向けの商品ではないのだと思う。それは今年発表となった新しいナビタイマーコレクションにも通じる。新しいナビタイマーは41mm、43mm、そして46mmの3サイズで展開することでさまざまなユーザーのニーズに対応している。さらにこれまでになかったアイスブルーや、ミントグリーン、カッパーといった新色を採用し、ダイヤルオプションを一新。従来のプロフェッショナルのための計器というニッチなイメージからの脱却を図ろうとしている。コスモノート リミテッド エディションが持つオリジナルとは異なるアップデートされたディテールにも、単なるツールウォッチではなくブライトリング流のラグジュアリーウォッチを体現しようという思惑が感じられるのだ。
しかし同時にクロノマット、ナビタイマーと並ぶブランドのアイコンとなるコスモノートへのトリビュートも忘れてはいない。リミテッド エディションミッションを発売すると同時に、60周年を迎えた5月24日、ブライトリングはスコット・カーペンターがマーキュリー・アトラス7号ミッションで実際に身につけたオリジナルのナビタイマー コスモノートを公開した。
1962年5月24日。打ち上げに成功したスコット・カーペンターが搭乗するオーロラ7号の宇宙カプセルは大西洋に無事着水したものの、長時間海水に漬かった結果、彼が身につけていたコスモノートは修理不可能なほど損傷を受けてしまった。ブライトリングはすぐに彼の時計を取り替えたが、無惨にも腐食してしまった宇宙航空史に残る時計はブライトリング家に未修復のまま保管されることとなり、これまで表舞台に出ることはなかった。
そして歴史的な偉業から60年を経たタイミングで、ブライトリングは宇宙をテーマにしたイベントをチューリッヒで開催。このイベントにはCEOのジョージ・カーン氏、そして元NASA宇宙飛行士のスコット・ケリー氏が参加。ゲストスピーカーにスコット・カーペンターの家族や、グレゴリー・ブライトリング氏、歴史家でコレクターのフレッド・マンデルバウム氏を迎え、当時の様子やコスモノートの製作にまつわる歴史を振り返った。
本稿では書ききれないが、HODINKEE.comチームのジェフ・スタイン(Jeff Stein)がスコット・カーペンターのコスモノートにまつわる興味深いストーリーをまとめている。近日中に日本でも記事を公開予定だが、これまで謎に包まれていたコスモノートの歴史が60年の時を経て、ようやく明らかになるのだ。
基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: ナビタイマー B02 クロノグラフ 41 コスモノート リミテッド エディション(Navitimer B02 Chronograph 41 Cosmonaute Limited Edition)
型番: PB02301A1B1P1(ブラックアリゲーターレザーストラップ)、PB02301A1B1A1(SS製7連ナビタイマーブレスレット)
直径: 41mm、ラグtoラグは47.09mm
厚さ: 13mm
ケース素材: SS&プラチナベゼル
文字盤色: ブラック、同系色のクロノグラフカウンター
インデックス: アラビア数字プリント
夜光: インデックスおよび時・分針にスーパールミノバ®蓄光塗料を塗布
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット: バタフライクラスプ式SS製7連ナビタイマーブレスレット、またはフォールディングクラスプ式ブラックアリゲーターレザーストラップ(ラグ幅22mm/剣先18mm)
ムーブメント情報
キャリバー: B02、ブライトリング自社開発製造
機能: 24時間表示による時・分表示、18時位置にスモールセコンド、12時位置に日付表示、クロノグラフ(センターに4分の1秒刻みのクロノグラフ秒針、6時位置に30分積算計、12時位置に12時間積算計)
直径: 30mm
厚さ: 6.83mm
パワーリザーブ: 約70時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 39
クロノメーター認定: COSC
追加情報: コラムホイール、垂直クラッチ式クロノグラフ
価格 & 発売時期
価格: レザーストラップ仕様は134万2000円、SS製ブレスレット仕様は139万1500円(ともに税込)
発売時期: 発売中
限定: 世界限定362本
詳細は、ブライトリング公式サイトをクリック。
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