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マガジンを作るのは大変だ。私は以前、マガジンのライターをしていて、ジャーナリズムの学校にも通い、マガジンを作るための準備と思われることをたくさんしてきた。だが、Vol.1を作るために5回の徹夜をするまでは、その大変さを真に理解することはできなかったのだ。マガジン作りには、これまでとは違ったタイプの取り組み、思考、計画が必要で、私はそのことを理解していなかった。このビジネスは、マガジンの魅力である長編でリードタイムの長い、超制作的なコンテンツに対するアンチテーゼの上に成り立っているとさえ言える。だからこそ、我々はマガジンを作らなければならなかったのだ。それは、人が期待するものとは正反対であり、我々のスタッフにまったく別の筋肉を鍛える機会を提供することでもあった。
我々のマガジン(といっていいものか)は、HODINKEEにおいて私が最も誇りに思い、最も楽んだもののひとつだ。このマガジンは、我々が一年中行っていることをすべて盛り込み、我々が得意とする別のスキルを駆使して、我々が見たものすべてを本棚に永久保存できるような、いや、それに値するようなものになるよう編集したものだ。全10巻のうち、ここでは紹介しきれないほど多くの素晴らしいストーリーを手がけてきた。そして、印刷物が収益性の高いビジネスに適さない時代に、やらなければならないからではなくやりたいから、この素晴らしいジャーナルを作り続ける我々のチームを、私はとても誇りに思っている。HODINKEE マガジンの最初の10巻から、私の好きなストーリーを10本紹介したい。
Volume 1
我々の創刊号は、我々にとって特別な経験だった。夢の実現であり、これほど特別なものに取り組めたことは、一生忘れることができない経験だ。また、普段の仕事とは少し違うことを書くことができた。私にとっては、初代ポルシェ911について何年もかけて研究してきたことを紙に書き出すことができた。この本は、HODINKEEがクルマの世界に入ったとしたら、どんなことをするのかを示す最良の例だろう。そして、この世界の多くの人にとって、どこにでもあるようなものについての、素敵で示唆に富み、洞察に富んだ物語だと思っている。
Volume 2
一度も会ったことがないのに、人生に大きな影響を与える人は、そう多くはない。Appleのチーム、とりわけ前チーフデザイナーのジョニー・アイブ(Jony Ive)氏は、私自身と私の物理的およびデジタル製品に関する考え方に多大な影響を与えた。今回、彼と一緒にマガジンのカバーストーリーを制作し、彼と彼のチームがApple Watchの制作においていかにディティールにこだわっていたかを、そして時間に関する彼自身の物語を共有できたことは、本当に特別な経験だった。そしてこう言っていいなら、本当に興味深い読み物を得ることができたと思っている。我々を取り巻く世界の多くのものを作り上げ、世界で最も人気のある時計をデザインした人物は、普段滅多にインタビューに応じない。これは彼の物語なのだ。
Volume 3
HODINKEEの初期から私は、ロニー・フィーグ(Ronnie Fieg)氏とKITHに興味を持っていた。12年以上前に初めて彼の会社を知って以来、彼が築き上げてきたものは本当に素晴らしいものだと思う。そこで、彼に関する特集を組み、スニーカーコレクションを紹介する機会を得たとき、誰がこのストーリーを正しく伝えることができるかを懸命に考えた結果、ジャック・フォースターを起用することにした。表面的には、とても奇妙な組み合わせだった。しかし、このふたりの関係は素晴らしく、このストーリーはその証拠となるものだ。
Volume 4
ブルース・タラモン(Bruce Talamon)氏は、時計、車、カメラなど、古いもの、時代遅れのものをこよなく愛するという共通の思いから、ここ数年、親しくさせてもらっている人物だ。Volume 4では、ブルース氏が、大人になってからずっと愛用しているロレックス GMTマスターについて、それに現代の有名ミュージシャンを撮影したときのエピソードを語ってもらった。伝説的な人物が、ひとつのものをとことん愛する姿は、本当に素晴らしい。
Volume 5
Volume 5は、静かなる大作だ。満州でのCIAの極秘任務(と紛失したロレックス)にまつわる驚くべき物語を、コール・ペニントンにカバーストーリーとして担当してもらった。この物語で初めて、コールが素晴らしいストーリーテラーとして本領を発揮するのを目の当たりにし、私は彼をとても誇りに思った。さらに、アジズ・アンサリ(Aziz Ansari)氏やマリオ・カルボーン(Mario Carbone)氏といった楽しい友人たちも登場し、マクラーレンF1のプライベート・ガレージにアクセスして、車好きのジェームズ・ステイシーによる超詳細なバイヤーズ・ガイドを掲載することもできた。これは素晴らしい、素晴らしい号だ。
Volume 6
Volume 6は、ちょうど東京支社を立ち上げたばかりの時期で、日本のリーダーである関口優にページを渡すことができたのは、本当に素晴らしいことだった。彼は今でも素晴らしいパートナーであり、真のスタイル・ゴッドだ。Volume 6では、私がこれまで出会ったなかで最もクールな人物のひとりが、東京中のお気に入りのコーヒーショップについて教えてくれる。行くなら必読だ。
Volume 7
Volume 7で私が注目したのはふたつ。まず、アルディス・ホッジ(Aldis Hodge)氏が時計製造における自らの遺産(完全に彼自身のもの)を築くことについて書いたパーソナルで力強いレターと、「正しい方法で」作られた時計について書くように私が依頼された話だ。それは、今もなお手作業で作られる時計という意味で、デュフォーやアクリビア、ロジャー・スミスなどだ。大量生産される高級品、さらにはヴィンテージとも比較して、なぜ私がその価値を認め始めたのか、という話。そして4年後、この話が本当によく熟成されていると自負している。
Volume 8
Volume 8では、私にとってもHODINKEEにとっても特別な存在であるコンテンツ担当上級副社長、ニック・マリノが登場した。「人間関係はサメと同じで、前に進まなければ死んでしまう」というウディ・アレンの名言を常に引用している我々は、マガジンを含むHODINKEEの編集を完全に方向転換するときが来たと確信していた。そして、その通りになったのだ。この号は天啓のようだった。そして、ジョナサン・マニオン(Jonathan Mannion)が手がけたポートフォリオは、ラップやヒップホップ界で最も優れた人たちや彼らが選んだ時計を紹介した。我々にとって大きな転機となった。HODINKEEは、より思慮深い、新たな存在となったのだ。Volume 8のすべてがそれを明確にし、そして私をとても幸せにしてくれた。
Volume 9
Volume 9は、初期のHODINKEEの一番良いところを取り入れ、前号の面白さ、幅広く、温かく、驚きがある雰囲気で包んだものだと言いたい。そこで我々は、何年も前から私たちのスペースに存在している人物、つまり2013年にHODINKEEのビデオに登場したグラハム・ファウラー(Graham Fowler)氏を取り上げ、最新情報を届けることを思いついたのだ。その結果、ダニー・ミルトンによる彼のプロフィールは、昔からの読者と最近HODINKEEを知った読者の両方に語りかけるような、素晴らしいものとなった。私はそれをとても気に入っている。
Volume 10
まず、HODINKEEマガジンがVolume 10まで発行されたという事実が素晴らしい。今年50周年を迎えるオーデマ ピゲのロイヤル オーク “ジャンボ”に関するジャックのReference Pointsや、ローガンが書いた才能あふれる若き時計職人レシェップ・レジェピの決定的な作品についてのプロフィールなど、昔ながらのコレクター向けの内容に加えて、(スポーティ&リッチの)エミリー・オバーグ(Emily Oberg)氏や、才能あふれる若き写真家の特集など、楽しく、より広く親しめるコンテンツも含まれている。しかし、Volume 10の素晴らしい記事のなかで私が一番好きなのは、ダニー・ミルトンが「ツールウォッチ」という言葉を使うのをやめてほしいと訴えたことだ。大した内容ではないように思えるが、HODINKEEの読者やスタッフのあいだでダニーを人気者にしたのは、このような文章とウィットのおかげなのだと、私は信じている。 真摯で現実的な内容でありながら、このようなことがいかに愚かなことであるかを訴えているのだ。14年前から「こんなもの必要ない」と言い続けてきた私としては、ダニーのツールウォッチという言葉がいかに意味がないかという話は、本当に衝撃的だった。