Editors' Picks HODINKEEのスタッフが父親の時計について語る

　2000年、父はState Farmのエージェントとなり、"ウォッチガイ "への道を順調に進んでいた。ここまで来るのは簡単なことではなかったので、独立開業という偉業を祝うために、ロレックスのシードゥエラーを購入した。その数年後、時計愛好家にとって最悪の悪夢が現実のものとなり、ジムのロッカーからシードゥエラーが略奪されてしまう。このとき、「時計を真に所有することはできない」という考え方は、とても飲み込みにくいものだった。

　このような話にはいつも心が痛む。このケースは本当にがっかりする損失だったが、保険業界に身を置き知恵を絞った結果、彼の時計はなんと補償の対象となった。現在も愛用しているモデルと、当時交換することができたのだ。

　しかし、父がワンウォッチ派かというと、そうとは言い切れない。2018年になり、私は彼の時計への愛にダイレクトに触発され、HODINKEEで働き始めた。この4年間で、ささやかなコレクションは本格的な動物園へと花開き、ビーラー家は「時計は共有するもの」という考え方に傾倒するようになった。母は寒い季節にはシードゥエラーをレザーストラップでつけているし、この前ブルックリンに来た父はジョン・メイヤーのG-SHOCKを手に取り、"これを持っていくよ "と言った。まあ、腕時計を盗まれるのと、手癖の悪い自分の家族に持っていかれるのではわけが違う。父を通して、時計は決して真の意味で所有することはできない、ということを学だのだ。

　私の物語はひとつの時計についてではなく、多くの時計についてです。私の祖父、ラマザン・カラタイは、イスタンブールの歴史的なグランドバザールにある店で、時計や腕時計を売って生計を立てていました。南トルコの農村で小学校を卒業したのち、大都市に移り住んだ彼は、まず露天でカミソリやライターなどの雑貨を売って細々と暮らし、徐々に店と時計のコレクションのための資金を蓄えることができたのです。私は、彼が犠牲になって、私の家族に自分より多くの道を与えてくれたことにとても感謝しています。

　私の父は決して "時計好き "とは言えません。私が子どもの頃はつけていたのを覚えていますが、大きくなるにつれてあまりつけなくなりました。 しかし、時間を守ることは父にとって常に重要なことでした。また、彼は自分の時間をとても大切にしています。数年前、父は60歳になり、こんな重要な誕生日には時計を贈り物にと思いましたが、コストについては合理的である必要がありました。これを読んでいるほとんどの人は、時計にはいつでもさらにお金をかけられることを知っています。いろいろ考えた末に、ハミルトンのカーキ キングのブレスレットモデルに決定。見栄えがよく、作りのいい時計であるだけでなく、長男の孫と同じ名前なのです。彼は「時計をつけるのに慣れるまで大変だったけど、私が会うときはほとんどつけている」と言っていました。父の日、おめでとう！

　思い返せば、父が腕時計をしていた記憶はない。HODINKEEで働き始めてから、子供の頃の古い写真で父の腕にいくつかの腕時計があることに気付き、以前から気になっていたものの最近になって上の画像に出会い、ようやくスウォッチのココナッツグローブ GB120であることを確認した。父がかつて腕時計をしていたこと、特に80年代らしいピンクとティールの針がついたものを愛用していたのを知ったのだ。どうやら、携帯電話が普及したときに腕時計をしなくなったようだが、近いうちにまたつけてもらうという目標ができた。

　私の父は、時計に関しては私よりも実用的な男だ。私が憧れるような高級品は、父には似合わない。しかし、父はいつも腕時計をしていて、そのほとんどがG-SHOCKだった。幼い頃、私も父のように時計を身につけたいと思っていて、フロリダ州を旅行したとき、ロンジン・サーフ・ショップに入り、私は初めて時計を買ってくれるよう懇願した。この時計は、私にとって非常に長い腕時計のリストの最初に位置するもの。父はというと、ひとつの時計を使い続けている。20年近く同じG-SHOCK、MTG-930を愛用しているのだ。マルチバンド6、防水性、耐衝撃性を備えたMTGは、贅沢というよりも実用性、効率性を重視する男性に最適なモデルだ。父のこのブランドに対する忠誠心から、私はいつも自分の時計のコレクションにG-SHOCKをひとつやふたつ、必ず入れている。

　私の父は、高価な時計や重要な時計を持っているわけではありません。時間を知るためには、わかりやすさ、信頼性、実用性がすべて。 今、父がつけているのは、その条件をすべて完璧に満たすカシオのものです。時間、曜日、日付がとても見やすく、ひと目ですべての情報を得ることができるのです。

　私の父は1939年に現在のベラルーシで生まれました。ホロコーストを生き延び、その後、2年間をDPキャンプで過ごしました。1948年にマリン・フラッシャー号という船でアメリカに渡ります。父にとって、家族は最も大切なもので、自分に高価なものや派手なものを買うことはありませんが、私の母や私たち6人の子どもたちが美しいものを持つことは、彼にとってとても大切なことでした。父の時計が私にとって重要なのは、それが父という人物を象徴しているからだと思います。信頼でき、勤勉で、常に明確な目的を持っている。家族の面倒を見ること、そして、父が持っていなかったすべてのものを、すべての機会を私たちに与えることなのです。

　私の父は時計をしたことがない。結婚指輪さえもしない。しかし、一度もつけているところを見たことがない父のロレックスは、私の時計に対する考え方を変えた。結婚して間もなく、母は父にデイトジャスト16220を買ってやった。グレーのタペストリー文字盤、エンジンターンドベゼル、ジュビリーブレスレット。父と同じように、その時計も強気な態度はとらない。この時計の存在すら知らなかったのは、私が20代に入り、すでに時計に熱中していた頃だ。家にロレックスがあることを知ったときは、その何たるかをほとんど理解していなかった。私にとって時計は腕につけてこそ面白いもの、運がよければコレクションできるもの、という程度の認識だった。

　そして、この写真を見て、何かが起こった。(時計が完全に見えているわけではないが、ジュビリーの存在は1マイル先からでも認識できる）。アルベルト・サントス=デュモンが布製の骨組みを備えた飛行機を飛ばしていたことも、両親が私の名前すら知らないうちにフルトンスタジアムでアトランタ・ブレーブスを観ていたことも、時計には今をはるかに超えて誰かやどこかとつながる力があることに気づいたのだ。

　そして今、自分では決して興味を示さなかった時計が、コレクションが増えようが職業が変わろうが、身につけることのできる最も貴重な時計になっている。自分の時計が、いずれは自分の枠を超えて、まだ想像もつかないような人や場所にまで広がっていくことを実感し、時計に限らず、自分の選択をもう少し考えてみようと思うようになったのである。

　だから、この文章は父への感謝の手紙のようなもの。私はすでに多くのことを学んだし、まだまだ学ぶべきこともある。間接的に、そしてお手本として、あなたから多くのことを学びました。あなたが他の人に接する方法、母に接する方法、仕事に取り組むやり方、そして自分の行動の結果を先に考えることなど。そのすべてが私を今の自分にしてくれている。この時計は、私たちの関係全体を象徴しているのです。私は間違いなく、あなたの息子です。父の日、おめでとう。