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パスィ(Per Se)やシェフズテーブル ブルックリンフェア(Chef's Table at Brooklyn Fare)などで料理をした経歴を持つダグラス・キム氏は、ラーメン店やパスタステーションで働いたことはなかったという。それがニューヨークのウェストビレッジに人気のチェジュ ヌードルバー(Jeju Noodle Bar)をオープンして一変した。
ニューヨークで外食する際、ラーメンは欠かせない料理のひとつであり、シェフは安価なラーメンのパックが定番である故郷韓国の著名なインスタントラーメン文化について考えるようになった。
「生のラムユン(注:韓国のインスタントラーメン)をやってみよう 」と、キム氏は考えた。「それでやってみたのです」。その結果、一般的なラーメン店とは一線を画す店が誕生した。チェジュを代表する麺料理のひとつで、和牛の薄切りが熱々のスープの上に浮かんでいる。ステーキは箸で数秒沈め、お好みで湯がく。チェジュはミシュランの星を獲得しており、全米のラーメン店では初めての快挙だ。
ミシュランの星を集めていないとき、彼は時計の収集に勤しんでいる。高校時代に母親からプレゼントされたタグ・ホイヤーのアクアレーサーをきっかけに時計への情熱が高まり、現行のロレックスを中心に、そのコレクションではちょっと変わった時計も手に入れるようになったという。シードゥエラー ディープシーがある一方でプラチナのチェリーニもある。お気に入りの4本と、もうひとつについて語ってもらった。
彼の4本
キッチンでつける時計 - ロレックス シードゥエラー ディープシー
キム氏がキッチン用品を購入する際に最も重視しているのは耐久性だ。この道具は時間が経つと壊れてしまうのではないか、壊れないようにといつも気にしているそうだ。
だから彼がキッチンで素敵な腕時計をしているのは意外に思われるかもしれない。その理由には反論の余地はない。シェフは週に5〜6日、1日15〜16時間近く働いている。「厨房で時計をつけなければ、一体いつ、つけるんです?」
サブマリーナーを手にするまでは、彼はパネライをはじめとする“より目立たない”時計を好んで使っていた。しかし、2008年か2009年にサブを試してみて、彼はクラウンとその伝説的な品質・信頼性にある種の忠誠を誓うことになった。彼は感銘を受け、その後何本かロレックスを買い足していった。しかしキッチンでは現在、非常に堅牢なシードゥエラー ディープシーに軍配が上がっている。
ウェディングウォッチ - A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ 39mm ローズゴールド、アイボリーダイヤル
キム氏はほかの時計にも信頼性と耐久性を求めており、複雑な機能の時計は少々気難しいと考える。友人の熱心なコレクターの話を聞いたのち、ランゲについて学び始め、ダトグラフに行き着いた。そしてムーブメントに関しては、最高のクロノグラフに匹敵すると考えた。
その後、ランゲのブティックに足を運んだが、それまで実際にランゲの時計を触ったことはなかった。そして、41mmの新しいダトグラフ・アップ/ダウンを見て、自分の手首には少し大きすぎると感じたという。そして、1815 クロノグラフを見てちょうどいいサイズだと感じ、最終的にはローズゴールドにアイボリーダイヤルの39mmの旧型ダトグラフに決めたのだ。「結婚式の日にこの時計を身につけたとき、思った以上のものを買ったと思いました。大人になった気分でした」
プラチナを手にする - ロレックス チェリーニ スカイブルーダイヤル
すでにランゲの世界に足を踏み入れていたキム氏は、当初プラチナのダトグラフを手に入れようと考えていた。しかし、彼はすでにこの有名なドイツのクロノグラフのゴールドバージョンを持っていて、しかも個人的に重要なものだった。しかも高価なものだ。そこで彼が時計仲間にプラチナ時計に興味があることを告げると、まさにここにあるチェリーニの写真を送ってきたのだ。
キム氏が返信し、興味を示したころにはチェリーニはすでに売約済みになっていた。しかし買い手が返品したため、彼は2度目のチャンスを得たのだ。このロレックスは彼にとって唯一のプラチナ時計であり、彼はとてもいい買い物をしたと言っている。彼は、この時計の目立たないところが気に入っている。フォーマルな場はもちろん、どこにでもつけていけるし、時計愛好家以外には気づかれにくい時計だからだ。
シルバースペシャル - チューダー ブラックベイ フィフティ-エイト
コロナが発生したとき、接客業は最も大きな打撃を受けた産業のひとつだった。「レストランはほとんど閉店状態でした」とシェフは振り返る。
そのとき、キム氏は自分の時計を資産としてとらえ始めたという。「何かあったとき、レストランの家賃や給料を払わなければならなくなったらどうすればいいのか」。時計市場が高騰し、値段が上がると急に価値の出た時計を身につけるのはちょっと……と思うようになった。
そんなとき、ブラックベイ フィフティ-エイトのシルバーが登場し、彼の目にとまった。大げさに宣伝されていないところがおもしろいし、品質のいいメーカーから出たものであることも気に入った。ショップに入り、ウィンドウで見て、その場で購入することができたのは2021年当時としては新鮮だった。シルバーなので時間が経つと変色して古く見えるかもしれないが、キム氏はそれがいいと思っているそうだ。「私だって歳をとるんですから」
もうひとつ
ライカのM11カメラとノクティルックスの1.2レンズ
キム氏が写真の趣味を始めたのは2007年ごろ。「私はどちらかというと視覚型の人間なので、何かを記憶するためには写真を撮る必要があるのです」と彼は言う。料理の写真を撮れば、それを見て味がよみがえる。写真を撮ることで視点が変わり、それまで見えなかったものが見えるようになったのだ。
最初はほかのメーカーのカメラを使っていたが、初めてライカのQを手にしたとき、多くの写真家がライカを選ぶ理由が“わかった”と言う。「ライカのガラスには命があり、魂が宿っているのです」
キム氏は、パンデミック発生時に自分のビジネスのためのコンテンツを作る必要があると知っていた。ただカメラマンを雇う資金がなかった。そこで彼はソーシャルメディアに投稿する写真でチェジュ ヌードルバーを宣伝することにした。
料理人が料理を作る様子、出来上がった皿のカラフルなマクロショット、ダイニングルームの雰囲気、そしてときにカルトなブルゴーニュのボトルが登場するなど、その日その日で、この店の様子をInstagramで見ることができる。
最近はM11で撮影しているが、Qよりも写真の仕上がりをコントロールしやすいという。彼はこの経験を真空調理法でステーキを調理することに慣れた最近の若いシェフに例える。自動化されたプロセスではミスが起こりにくいが、その分、伝統的なやり方を知らないことになる。M11によって、キム氏は昔ながらの方法で写真に取り組むことができるのだ。
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