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チタン製パテック フィリップの出品は、コレクターとオークションの世界で大きな騒ぎを巻き起こす存在だ。パテックが製造したチタン製の時計は非常に数が少なく、大抵の場合、唯一無二の代物なのだ。チタン製のスカイムーン・トゥールビヨンとして唯一知られているものが2014年にサザビーズ(Sotheby's)で売り出され、そしてチタンの5004と5208T-010もまた、それぞれオンリー・ウォッチ(Only Watch)において高額で落札された。
クリスティーズ(Christie's)香港は、今年の7月と11月に単一オーナーの提供によるコレクションを展開する。ルビーセットの2本の時計とパテック フィリップのチタン製のユニークな時計を主役として、その他注目に値する貴金属の時計の数々も登場する予定だ。このオークションは、昨年クリスティーズによって896万7380ドル(約9億7251万)で売却されたパテック フィリップ Ref. 2523 ダブルネームのマイルストーンに続くものである。こちらで紹介するどの時計も、この価格には全く及ばないだろうが、それでもチタン製のパテックにお目にかかれることは非常に稀で、絶対ないとも言い切れない。
当然ながら、パテックがオークションに登場すれば、人々の注目を集めるだろう。一点ものかもしれないパテック、それもとりわけチタン製のユニークピースがオークションに現れたら、その価格は天井知らずとなる。「Titanium And Ruby Collection(チタンとルビーコレクション)」(目玉となるチタン製とルビーセットの時計にちなんだ名称)は、全体がパテック フィリップの時計で構成されており、ただ1人の出品者である目利きのコレクターが提供するものだ。クリスティーズは、このコレクションそのものが20年分の現代とヴィンテージにおけるパテック フィリップ収集に相当する産物だ、と述べている。以下にそのオークションで出品される品々から特に注目すべき数本を、予想落札価格と共にご紹介する。ご覧いただければ分かるが、極めて魅力的でユニークな品々とクラシックで収集価値の高いパテックのリファレンスの驚くべき集合体であり、そしてミニッツリピーターにとりわけ重点が置かれている。
Ref. 5033T チタン
このコレクションの目玉の1つはパテック フィリップ 5033Tで、チタン製のトノー型ケースに年次カレンダーとミニッツリピーターを有するモデルだ。こう紹介して何も間違ってはいないのだが、この時計を安く見積もり過ぎている感もある。Ref. 5033は、10本の特別受注品として2002年に初めて製造された。10本のうちの9本はプラチナで作られたのだが、10本目は? それが今ご覧になっているものである。
この個体が2014年にサザビーズのニューヨーク・オークションで、ブランドのチタン製時計コレクションのうちの1本として売り出された(当時そのコレクションに出品されたものは、全て単一オーナーのものだった)。この時計は真にユニークな時計であり、けれどケースの素材だけが理由なのではない。同リファレンスの他のモデルの多くはブラックダイヤルだったが、それに対してこのモデルではシルバーダイヤルにローマ数字という構成だ。我々のベン・クライマーが2014年にこの時計について執筆したとき、彼はその希少性だけでなく、この時計の音の素晴らしさが特筆すべきものであることを発見している。
パテックが個別の顧客にこのようなユニークな時計を作ることは非常に珍しく、ケース素材からくる希少性も相まって、この時計をコレクションの中でひときわ輝くものとしている。実際、コレクション全体の名称「Titanium and Ruby」の一部はこの時計の存在に由来するもので、これはコレクションの中で唯一のチタン製のミニッツリピーターであり、これまでにパテックが作った非常に数少ないもののうちの1本なのだ。予想落札価格は80~150万ドル(約8680万~1億6270万円)となっている。
Ref. 3448/8 18Kイエローゴールド
こちらはルビーを備えたひとつめの品だ。1965年頃のイエローゴールドのRef. 3448/8 パーペチュアルカレンダーは、極めて珍しいルビー入りのインデックスで文字盤が飾られている。そこにさらなる魅力を添えているのが一体型のゴールドブレスレットだ。このブレスレットのデザインについては、(かなり異質なパテックではあるが)マット・ジェイコブソン(Matt Jacobson)を招いたTalking Watchesのエピソードで覚えている方もいるかもしれない。このブレスレットの仕上がりと構造はそのデザインと同様に、それ自身だけを取り上げても本当に素晴らしいものだ。既に3448が持ち合わせている魅力と合わり、おまけにルビーまで付いて、見事な1本となっている。3448はパテックのパーペチュアルカレンダーというだけでなく、1962年にこのリファレンスが発表されたときには、同社のCal.27-460 Qを使った世界初の自動巻き永久カレンダーだったということも、ぜひとも覚えておくべきだろう。この時計は2008年にクリスティーズ香港に出品され、144万7500香港ドル(約2023万円)で落札された。今回の個体も同じように珍しいものだと考えられており、ユニークな魅力に溢れている。予想落札価格は50~80万ドル(約5420万円~8680万円)だ。
Ref. 3939 シルバーオパーリン文字盤
2011年に遡ると、オンリー・ウォッチの最高額の品はパテック フィリップのRef. 3939であった。SSケースにブラック文字盤で、140万ユーロ(約1億6613万円)という巨額で落札され、その年で最も高額な時計となった。
今年に話を戻すと、コレクションのうちのルビーをテーマとしてすれば、その際立った真価をしっかりと見極めるべき1本がある。ここで取り上げる3939はオンリー・ウォッチの同モデルとは大きく異なる。この金無垢の時計は、シルバーオパーリン文字盤上のインデックスにルビーを用いており、Ref. 3448と同じように、おそらく一点物である。これは、パテック史上最も目立たなかったハイコンプリケーションの中において、とても人目を惹くバージョンだと思う。というのも、1993年に初めて発表された直径33.3mmの3939は、通常生産のイエローゴールドケースが、多くの時計愛好家から見向きもされなかったからだ。しかしこれは何といってもパテックによるクラシックなウォッチメイキングの中でも最良のもので、サイズは小さいにもかかわらず、そのチャイム音の質の高さもよく知られているところだ。今までに作られた最高の伝統的な構造を持つリピーター付き腕時計の中でも、とても特別で極めて魅力的な1本といえる。予想落札価格は50~80万ドル(約5420万円~8680万円)である。
Ref. 5002 プラチナ
さて、次に紹介する時計にはルビーもチタンも使われていないが、それでもなお非常に特別なものだ。このプラチナの5002はそれ自体の魅力によってコレクションに加わる価値がある。12の複雑機構と表と裏に文字盤を搭載したスカイムーン・トゥールビヨンRef. 5002は、全く化け物級だ。5033Tを出品した2014年のサザビーズのオークションに立ち戻れば、珍しいチタンバージョンのスカイムーンも同じようにオークションにかけられた。5002はパテックが作った最も複雑な腕時計であり、永久カレンダーだけでなく、星座表、月の満ち欠けと軌道、それから常用時と恒星時の表示などを搭載している。コレクターの中でも裕福で(それもとびきりに)、天文学的な複雑機構への愛を持ち合わせている人々のために、究極の時計を具現化したのが5002なのだ。予想落札価格は100~150万ドル(1億850万~1億6270万円)。
Ref. 1518 18Kゴールド
今回紹介するオークションの中で、より尊ぶべき逸品がある。このRef. 1518は1941年に初めて製造された直径35mmの手巻き式で、パテック フィリップが手を加えたバルジューのエボーシュ(詳細はこちら)によって稼働する、非常に優れたものだ。本誌のReference Pointsの記事「Understanding The Entire Lineage Of Patek Philippe Perpetual Calendar Chronographs(パテック フィリップ 永久カレンダー クロノグラフの全系譜を理解する)」で見られるように、281本のRef. 1518だけが全種類の金属で作られ、その最上級はイエローゴールドで製造されたものだった。我々が目にしているのは、まさにその時計だ。出品される個体は1950年のもので、ムーンフェイズ、永久カレンダー、クロノグラフを搭載している。どんな1518も興味を引くものだが、控えめに言って、この1本は相当なパワーを有し、それと同時により伝統色の強い最高級のパテックとしての収集価値も持ち合わせている。予想落札価格は35~55万ドル(約3800万~5970万円)。
Ref. 2499 4thシリーズ 18Kイエローゴールド
Ref. 2499については多くのことが語られてきたが、この時計がコレクターの熱い羨望の的となっている理由には、かなり限られた数しか製造されなかったという事実による部分が少なからずある。かつてエリック・クラプトンが所有したプラチナのものは、クリスティーズのオークションにおいて 344万3000スイスフラン(約3億8684万円)で落札された。このモデルこそが先ほど紹介したRef. 1518の後継機であり、同じキャリバーを使用している。
この時計は4つのシリーズがあることで知られている。珍しいセカンドシリーズの2499が、目下、他ならぬジャン-クロード・ビバー(Jean-Claude Bive)氏によってこの5月にフィリップス(Phillips) ジュネーブオークションIXの一部として「 ジャン-クロード・ビバー:A Retrospective. Share, Respect, Forgive」コレクションでオークションに出されることが決まっている。ここでご紹介しているのは4thシリーズのもので、1980年に18Kイエローゴールドで製造された。予想落札価格は50~80万ドル(約5420万円~8680万円)。
Ref. 5207 プラチナ
次に紹介するのは、もう1つの高度に入り組んだハイコンプリケーションウォッチ。もしもどんな音がするのか聴いてみたいならば(パテック フィリップの数多くのミニッツリピーターの中から探して)こちらでチェックできる。ミニッツリピーターに加えて、Ref. 5207は瞬時日送り式永久カレンダーとトゥールビヨンを搭載し、今のところこれら3つ全ての複雑機構を搭載した唯一の、窓表示式永久カレンダーを持つパテックの時計である。ムーブメントは手巻き式のCal.R TO 27 PS QIで、比較的小さな41mmのケースの中に549個のパーツが組み込まれている。今回の個体はプラチナケースで、予想落札価格は48~68万ドル(約5210万~7380万円)。
Ref. 2524 18Kゴールド
数年前、我々は2つのミニッツリピーター搭載のパテック フィリップを紹介し、その2つはレファレンスは違うが、多くの共通点を有していた。そのうちの1つがRef. 2524で、これは直径がたったの34mmだか、予想以上の実力を打ち出す(あるいは打ち鳴らす)ものだ。その時に取りあげた2524はブラックのインデックスと針で、これはその当時のパテックが判読性向上への要求に応えて時々採用していたものだ。この機種は1955年に発表され、60年代後期にかけて製造された。今回オークションにかけられるものは、1955年頃のもので、これはこのレファレンスが製造された再初期にあたる。よりトラディショナルなゴールドのインデックスで、ケース全体に18Kゴールドが使用されている。1518と同様に全ての2524はパテックのコレクターたちから熱い注目を集めるもので、このレファレンスは上流高級時計におけるミニッツリピーターの芸術性をとても純粋な形で体現していて、それによってパテックが正当な賞賛を受けているのである。予想落札価格は50~80万ドル(約5420万円~8680万円)。
Ref. 5029 18Kイエローゴールド
最後になるが、しかしながら絶対的に重要なものとして、さらにもう1つ、金無垢のミニッツリピーター、より新しい時代からの遺物を紹介したい。Ref. 5029は、1997年にプラン=レ=ズゥアトにオープンしたパテック フィリップの新工房の開設を祝って発売された。ケースはパテックの有名なミニッツリピーターのデザインを数多く手がけたことで知られている、名高いケースメーカーのJean-Pierre Hagmann氏によるものだ。もし限定数について興味をお持ちならば、5209は全部で30本製造された。そんなわけでこちらはイエローゴールドで作られた10本のうちの1本である。非常に薄く、手巻き式のCal.R 27 PSを搭載し、プレゲ数字と大きなリューズを有し、この時計はストーリー、デザイン、機能性のどこをとっても不足がない。2017年にはフィリップスで37万5000ドル(約4067万円)で落札された。今回の予想落札価格は35~55万ドル(約3800万~5970万円)となっている。
このコレクションは2つのステージに分けて提供される。目玉となるレファレンス5033にちなんで名付けられたチタンコレクションは、7月に出品予定で全32品からなる。ルビーコレクションは11月に出品予定で全11品。カタログについてはまだオンラインでの閲覧はできないが、クリスティーズは一般・メディア用の閲覧データを近々発表するとしている(我々としては、それと同時にカタログ全体がオンラインで公開されることを願っている)。
写真提供Christie's Images Ltd.
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