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Bring a Loupe コットンボウルのチューダー デイトデイ、トロピカルなロレックスのGMTマスター、政府接収のパテック フィリップ ノーチラスほか

今週のヴィンテージウォッチ(ときにはモダンウォッチも!)特集でも、ウェブ上で見つけたさまざまなヴィンテージウォッチをご紹介しよう。

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今週もヴィンテージウォッチを紹介するBring A Loupeの時間だ。いずれはテーマを決めてセレクトすることになるかもしれないが、今のところは失われた時間(この週次連載はしばらく更新を停止していた)を取り戻すために、今回はテーマを設けず見つけられるなかでも最高の時計を紹介していく。今回開催するヴィンテージウォッチの2024年同窓会では、Bring A Loupeのなかでも特に人気が高かったブランド、すなわちヴィンテージのロレックスやパテックなどをストーリー性たっぷりに取り上げている。

 2024年8月20日の回でオークションに出品されていた時計は、すべて新しいオーナーの手首に収まったようだ。最終的にはチャンピオンダイヤルのホイヤー カマロがeBayで1万1025ドル(日本円で約160万円)で落札され、シェルマン限定モデルのハブリング² クロノ フェリックスが1万1055ドル(日本円で約160万円)で売れた。新しいオーナーのうち、少なくとも数名がHODINKEE読者でありBALのファンであるならうれしい限りだ。

 それでは早速、今週のセレクションに入ろう。今週のピックアップにはアメリカンフットボールに由来するチューダー、ギュブランで販売された特別なヴィンテージパテック、そしてイギリス警察に押収されたのちにオークションにかけられた最も人気のあるパテックが含まれている。

チューダー デイトデイ ジャンボ Ref. 7017/0 1969年製、1974年コットンボウル・クラシックモデル
A vintage Tudor

 コットンボウルはカレッジフットボールにおける最も古いボウルゲーム(アメリカ合衆国のカレッジフットボールにおいて、シーズン後に行われる試合)のひとつである。もしピンときていないなら簡単に説明しておこう。NCAAのディビジョン1フットボールのレギュラーシーズンが終了すると、成績優秀なチームが追加のボウルゲームに招待されるか出場資格を得る。歴史的にコットンボウルは国内でトップランクのチーム同士が対戦する場であり、現在では「ニューイヤーズ6」ボウルのひとつとしてナショナル・チャンピオンシップ・ゲームの対戦相手を決定するための最も権威あるゲームに数えられている。

 このボウルゲーム全体のなかで重要な役割を占めるのが、プレイヤーへのギフトである。現在選手たちはプレイステーションやBoseのヘッドホンを受け取ることがあり、優勝チームにはチャンピオンリングが贈られる。リングはどのゲームでも魅力的な特典として喜ばれていたが、プレイステーションは……そうでもなかった。かつてのコットンボウルのギフトは、少し特別だった。1937年に初めて開催されて以来、参加する各チームの選手には腕時計が贈られていた。これらの贈呈される時計のクオリティやコレクター性はさまざまだったが、ロレックスとチューダーが選ばれていた1967年から1976年の期間がピークであった。

A vintage Tudor caseback
A vintage Nebraska trading card

 現在公開されているこの時計は1969年に製造されたが、1974年のコットンボウル・クラシックのために授与されたものである。ロレックスとその姉妹ブランドによるコットンボウルウォッチのなかでも、この“ジャンボ”デイトデイはおそらく最高のものだ。1969年と1970年のロレックス デイトジャストと1974年と1976年のチューダー デイトデイのどちらが優れているかは、甲乙つけがたい。ダイヤルデザインは非常に魅力的で、6時位置に大きなコットンボウルのロゴと年号、アーチ状のテキストを配置するためにすべてのチューダーに見られるすべての文字要素が省略されている。

 1974年のコットンボウルでは、12位のネブラスカ大学が当時1年目で現在では伝説的なヘッドコーチであるトム・オズボーン(Tom Osborne)の指揮のもと、8位のテキサス大学を19対3で圧倒した。さらに興味深いことに各コットンボウルチューダーの裏蓋には受賞者の名前が刻まれている。この時計の受賞者はオフェンシブガードであり、背番号61番のチャド・レオナルディ(Chad Leonardi)であった。

 販売者であるLunar Oysterのキリル(Kirill)が提示している価格は5500ドル(日本円で約79万円)と妥当だ。こちらで確認できる。

パテック フィリップ カラトラバ Ref.3558 1970年代、ギュブランのブレスレット付き(同店で販売)
A vintage Patek

 HODINKEEを代表するPodcast 、Hodinkee Radioの比較的最近のエピソードでホストのトニー・トレイナが私に“過小評価されている”カラトラバのリファレンスを尋ねた。私の答えは控えめなRef.3558であった。そのエピソードでも触れたように、この時計の魅力はいかにロレックス デイトジャストに通じるデザインコードを落とし込んでいるかという点である。パテックが1960年代と1970年代に計時専用の時計、すなわちカラトラバのラインナップを拡大した際にはあらゆる顧客に合うバリエーションが存在していた。この時計が製造されたこと自体が非常に興味深い。パテックとしてはまったく異なる雰囲気を持ちながらも、どこかしらしっくりくるのだ。内部のCal.27-460は象徴的なCal.12-600の第2世代にあたる。簡単に言えば、これらのキャリバーはどちらもその時代において、あるいは歴代でも最高の自動巻きムーブメントのひとつとされているものだ。

A vintage patek clasp

 もしトニーがPodcastでさらに「では、Ref.3558のなかで究極のモデルはなんだと思う?」と尋ねていたなら、私の答えはここで販売されている時計のようなものだっただろう。もし彼がその質問をしてくれて、そして私がPodcastを収録していた時点でこの時計の存在を知っていたならよかったのに! 比較的近くにあったため、Bring A Loupeに掲載する前にこのギュブランのサイン入りパテックを実際に見て、この時計が素晴らしいものであることを確認することができた。特にブレスレットは見事である。クラスプの内側にはギュブランのサインがあり、リンクのデザインは非常に魅力的だ。販売者であるTikTokのマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)はこの形状を“ドッグボーン”と呼んでいたが、私はギュブランの砂時計ロゴに由来するものだと主張する。

 販売者であるマイク・ヌーヴォーは、このパテックを彼の新しいウェブサイト/アプリであるPushers.ioに掲載しており、2万5000ドル(日本円で約360万円)の価格設定している。こちらで確認できる。

ロレックス GMTマスター Ref.1675 1959年製、第3世代のチャプターリングとギルトダイヤル、ポインテッドクラウンガード付き
A Rolex GMT-Master ref. 1675

 ヴィンテージロレックスシーンは、ほとんどのコレクターがその特徴から“優れた”または”素晴らしい”コンディションを判断できるまでに成熟している。正直なところこの市場が冷静さを見せ始めているのは、完璧な状態への絶対的な執着が一因であると思う。ある程度のところから、優れた時計は全体の見た目から評価されるべきである。ここにある個体のように美しく魅力が尽きないものであれば、完璧な状態でほとんど使用されておらず、ストーリーが見えないものよりもずっと魅力的なはずだ。この時計は何十年も前のものであり、その年季を感じられるほうが好ましい。

 これは素晴らしいヴィンテージのGMTマスターだ。確かにケースには研磨の痕跡があり、ダイヤルも完璧ではない。しかしトロピカルであり、しかもこの時計は実際に使用されてきた。かなり使い込まれたように見える。ヴィンテージウォッチの愛好者として、この時計にいくつかの傷や使用した痕跡があることがうれしい。この使用感がなければ、ベゼルインサートがこれほどまでに完璧に色あせることもなく、ダイヤルが“トロピカル”なブラウンになることはなかっただろう。このようなトロピカルダイヤルは未使用の状態で保持されているよりも、使い込まれたケースのなかにあるほうがはるかに理にかなっている。

 販売者であるロンドンのTortoise Watchesのアーウィンド(Arwind)は、このヴィンテージのRef.1675を3万1000ポンド(日本円で約590万円)で提供している。

A.ランゲ&ゾーネ ランゲ1 Ref.101.027x 2000年代
A Lange ref. 101.027x

 ブランドが1994年の冷戦後の再出発から30周年を迎える年であるにもかかわらず、コレクターたちは依然としてランゲを見過ごしているようだ。特にランゲ1に対する関心が思ったほど高くないように感じる。これは単純に飽きによるものだろうか? もちろんその可能性はある。しかしこのことが購入のチャンスに繋がる可能性もある。そして上の写真のランゲ1 Ref.101.027xがHODINKEE Shopに掲載されているかどうか。その答えもまた、イエスである。

 ランゲのコレクターたちはRef.101.027xをよく理解していて、愛している。この“シークレット”ランゲ1として知られるリファレンスは、ブルーの針とシルバーダイヤルを備えた特別なモデルで、公式のカタログには掲載されなかったものだ。簡単に説明しておくとランゲはこの時計を2000年代初頭に約225本を製造したとしているが、詳しくは(読むことをおすすめするが)UNESCOとドイツの橋が関係している。どのような経緯があったにせよ、この特別なランゲ1がこれまでに製造されたなかで最もコレクタブルなモデルのひとつとなったのは事実である。私にとって、この時計の魅力は非常にシンプルだ。Ref.101.027xは生産数が少なく、アイコニックなSS製のランゲ1 Ref.101.026と見た目によく似ている。

 前述のとおりこのランゲ1はHODINKEE Shopで提供されている。価格は3万7000ドル(日本円で約535万円)だ。“Back To Basics”セールが続くなかでショップの時計をBring A Loupeに掲載するのは時計が特集に値し、市場価格を下回る場合のみである。

1950s Movado Ref. R4855モバード Ref.R4855 1950年代
A vintage Movado

 さて、今週のeBayピックの時間だ! 先にお伝えしておくが、私はヴィンテージのモバードに対して明確なバイアスがかかっている。毎回のBring A Loupeにモバードを含めないように努力しているのだが、素晴らしいものが次々と出てくるためにどうしても手が出てしまうのだ! ヴィンテージのモバードが何故特別なのか、気になるだろうか? それについてはぜひ読んでもらいたい記事がある!

 一部のコレクター、特にヴィンテージウォッチに詳しい人々でさえこの時代のモバードはやや小さすぎると感じることがある。その直径が40mmよりも30mmに近いモデルが多いなか“ジャンボ”なリファレンスも存在しており、今回のピックはそのひとつである。ファーブル&ペレ(Favre & Perret)社製の18KRGケースは直径37mmで凝った形状の爪のようなラグを備えており、実際の寸法以上に手首での存在感を示すことだろう。全体的なコンディションは非常に良好で、唯一の欠点は3時位置付近のダイヤルに少しパティーナが見られることだけだ。

 この“ジャンボ”でピンクオンピンクのモバードはミズーリ州チェスターフィールドに拠点を置く販売者から出品されており、eBayで確認できる。販売者の評価は非常に高く、オークションは8月26日月曜日の午後6時42分(EST)に終了(日本標準時では8月27日火曜日の午前8時42分)する予定である。

パテック フィリップ ノーチラス Ref.5711/1300A-001 2021年製
A Patek ref. 5711/1300A

 現代のノーチラスコレクションにおいてRef.5711/1300Aは特に人気が高いモデルのひとつであり、特にSS製の時計としては非常に注目されている。このモデルは2021年にSS製Ref.5711の“最後のしめくくり”として投下されたものだ。2021年1月にパテックはブルーダイヤルのRef.5711/1A-010を廃止し、3ヵ月後に同リファレンスの終焉を飾るSS製Ref.5711のバリエーションを3つ発表した(1年間限定販売)。それがグリーンダイヤルのRef.5711/1A-014、ティファニーブルーダイヤルのRef.5711/1A-018、そしてこのグリーンダイヤルのバゲットセッティングベゼルを持つRef.5711/1300Aである。ティファニーダイヤルが注目を集めたが、Ref.1300Aの控えめなラグジュアリーさが長期的には最も魅力的に映るかもしれない。SS製のノーチラスにバゲットダイヤモンドがセットされたのはこれが初めてであり、おそらく唯一の例である。

 非常に少量しか生産されなかったこのリファレンスは、サザビーズが言うように“VIPおよびVVIP(Very Very Important Person)のパテッククライアントにのみ独占的に配布された”。これまで公に販売されたのはわずか2本であり、最初のものは2023年11月にクリスティーズ香港オークションで約48万5000ドル(当時のレートで約7050万円)で落札され、最新のものはシルベスター・スタローン(Sylvester Stallone)のコレクションから2024年6月にサザビーズニューヨークで49万2000ドル(日本円で約7100万円)で落札された。

A Patek ref. 5711/1300A

 もしこのリファレンスを探していて、ささやかなバックストーリーを気にしないのであれば、ウィルソンズオークションが政府による差し押さえ資産オークションの一環としてこの時計を提供している。

 この希少なパテックは8月30日金曜日(EST)にウィルソンズオークションのウェブサイトで入札が可能であり、8月28日水曜日にはロンドン中心部での展示も行われる。

購入者への注意喚起: ウォルサムのクロノグラフ懐中時計
By Mark Kauzlarich
A vintage Waltham pocket watch chronograph

 ここに私が非常に興奮した時計(そう、懐中時計だ)があるが、その興奮はすぐに失望に変わった。それでもなお、これは教訓として役立つ話である。

 ウォルサムは1910年代初頭以前に、複雑な時計をシリアル生産(ひとつの製品を大量に生産するために、特定の製造ラインや設備を専用に割り当てる製造方法)した唯一のアメリカ企業である。この複雑機構の歴史において注目すべき人物のひとりが、ニューヨークに移住し、ウォルサムのために複雑機構のモジュールを作成したスイスの時計職人、ヘンリー・アルフレッド・ルグリン(Henry Alfred Lugrin)である。そのため、H.A.ルグリンから息子へ贈った旨の刻印がされたウォルサムのクロノグラフがeBayで3500ドル(日本円で約50万円)で出品されているのを見たときに私がどれだけ興奮したか想像してほしい。もしこれが本物であれば、アメリカの時計学史において最も歴史的に重要な時計のひとつであると言える。しかし説明を読んだのち、その夢想は打ち砕かれた。

A vintage Waltham pocket watch chronograph

 一部のウォルサムのクロノグラフには、側面のプッシャーで操作するリセット機構を持つムーブメントが搭載されていた。のちのクロノグラフ、例えばこのModel 1884のようなモデルのムーブメントは、完全にリューズで作動するものである。販売者の名誉のために言っておくと、説明にはミドルケースの穴が埋められていることが記載されている(興味深いディテールだ)。さらにこの時計のムーブメントは、エングレーブされた年から3~4年後までは製造されていなかったものだ。すぐに、このムーブメントが交換されたものであることが明らかになった(それが100年前に行われた可能性もあるが)。

 再度強調するが、これらの問題点は販売者から明示されていた。同時に販売者からはこれらの問題に対する合理的な説明があり、オリジナルの状態が保たれている可能性を期待しているようにも感じた。直感を確かめるためにアメリカの懐中時計の専門家に連絡を取り、彼も私の懸念に同意した。彼はほかにも逸話に関して、H.A.ジュニアがこの時計を贈られたときはまだ9歳であり、このような時計を贈られるには若すぎることを指摘した。エングレービングのスタイルは当時のものとして妥当であるがこの時計にはあまりにも多くの疑問点があり、私は購入を見送ることにした。