ADVERTISEMENT
本稿は2015年12月に執筆された本国版の翻訳です。
Ref.3448は、私のお気に入りのヴィンテージリファレンスのひとつである。ケースが磨かれていない状態のシャープなラグと、シンプルな文字盤のレイアウトには非常に洗練された魅力がある。そのためサザビーズで非常に貴重なRef.3448が出品されると聞いたとき、私は実物を見に行かざるを得なかった。これからご覧いただくのは、おそらくあなたが1度も見たことがないであろうものだ。パテック フィリップ Ref.3448のWG製ケースに、後年のRef.3450に見られるYG製ケースが予備として付いている。さあ、これがコンバーチブル(変更可能)なパテック フィリップだ。
そう、言葉どおりだ。この時計はサザビーズ・ニューヨークでオークションに出品される予定(記事執筆当時)だが、1966年にWG製のRef.3448として誕生し、1967年に初代オーナーが購入した。その後YG製のバージョンが欲しいと思い立ったオーナーは、1986年にパテック フィリップに手紙を書いてYG製のケースとそのためのダイヤル、針を作ってもらい、気分によってムーブメントを入れ替えられるようにできないかと依頼した...…、 そしてパテック フィリップはこの要望に応じたのである。
唯一違ったのは、パテック フィリップが提供したのがRef.3450のYG製ケースだったことである。Ref.3450は1981年に発表されたRef.3448の次世代機であった。パテック フィリップはまたYGのインデックスが付いたRef.3448用のダイヤル、それに付随する針とリューズも供給した。最も驚くべき点は、そのすべてが事細かく記録されていることだ。オリジナルのRef.3448にはオリジナルの証明書が付いており、追加のケースについては今年新たに入手したアーカイブの抜粋によって確認されている。サザビーズには顧客とパテック フィリップとのあいだでやり取りされていた複数の手紙もあり、それがこの一連の出来事を裏付けている。
パテック フィリップが個別注文を受けることは非常にまれであるため、このようなことが実際に起こったという事実は非常に驚くべきことだ。さらにこの時計が非常に希有な出来事に関する完全な書類を伴い、良好な状態で残っているということもこの時計をいっそう驚くべきものにしている。
このロットの推定価格は30万ドルから50万ドル(当時のレートで約3600万〜6000万円)である。一般的にWG製のRef.3448は25万ドルから45万ドル(当時のレートで約3000万〜5400万円)で販売されており、YG製のものは8万ドルから15万ドル(当時のレートで約960万〜1800万円)で販売されている。2014年にはジュネーブでWG製の特別なRef.3448が31万1000スイスフラン(当時のレートで約3920万円)で販売されているため、オークション当日の午後、これらの時計の評価がどうなるかは興味深いところである。
こちらでロットの詳細を確認し、明日のサザビーズ・ニューヨークでの入札をお忘れなく(編注:該当のオークションはすでに終了している)。