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Dispatch 時計愛好家のためのジュネーブ グルメガイド

ジュネーブの新たな注目店や、まだあまり知られていない場所を通して、、この街ならではの時計文化を少し味わってみて欲しい。

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毎年春先になると、鳥たちがさえずり始め、クロッカスが土から顔をのぞかせ、時計業界は、ジュネーブで開催されるWatches & Wondersへの毎年恒例の巡礼に向けて動き出す。そのころになるとアメリカ・ソルトレイクシティからバンコクまで、世界中の友人たちから決まって同じようなテキストメッセージやDM、電話が届き始める。たいていは夫に用があるのだが、1年で最も忙しい時期の彼より、確実に返信が返ってくる私でひとまず満足してくれる。

Lake Genva

 スイスに定住して4年目となる今年、年に一度の時計業界最大のイベントの時期に受け取る、こうした質問にもすっかり慣れた。定番のホテルやレンタカーの情報はもちろん、ちょっと冒険的な寄り道プランまで、ひと通りおすすめは用意している。ただ、必ず「どこで食事をすればいい?」と聞かれる。ジュネーブは小さな街なので、答えもある程度決まってくる。例えばF.P.ジュルヌ レストランは評判どおり素晴らしい(そしてその魅力はこれまでにも数多く紹介されてきた)。レ・ザミュール(Les Armures)では市内屈指のフォンデュが味わえ、4月になれば時計業界で見慣れた顔ぶれに出会うことも多い。そして食後に一杯飲むなら、時計メディア関係者たちが食後の一杯に集まるグランド デューク パブ(Grand Duke Pub)をのぞいてみるのがおすすめだ。

 レマン湖へと流れ出すローヌ川沿いにはブライトリング キッチンがあり、ウォッチウィーク期間中には、何らかのブランドイベントが開かれていることもほぼ間違いない。また、市内最高のイタリア料理店としてよく名前が挙がるのが、郊外にある小さなレストラン イル・ミルティッロ(Il Mirtillo)だ。店内の壁には、これまで訪れた著名人たちの写真がずらりと並び、そこにはソフィア・ローレンやビル・クリントン元大統領の姿もある。さらに、時計オークション業界で最もよく知られた人物たちのお気に入りの店だとも噂されている。おまけに、小さな駐車場では魅力的なクルマを目にすることができ、店内でのウォッチスポッティングもまた格別だ。

Geneva

ペルル・デュ・ラック。チューリッヒのETH図書館所蔵、画像アーカイブ/LBS_H1-015437(ETH Zürich Image Archive)。

 もしジュウ渓谷を訪れる機会があるなら、オーデマ ピゲが所有するオテル デ オルロジェル(Hôtel des Horlogers)のレストランは足を運ぶ価値がある。私にとってそこは、スイス時計産業発祥の地ならではの穏やかで牧歌的なリズム、そしてジュラ山脈の草原で、のどかな夏を過ごす愛らしいスイス牛たちに心を奪われた場所でもある。

 これらの店はいずれもよく知られ、これまで何度も紹介されてきた場所だ。一方、これから紹介する店はそこまで多く語られてきたわけではない。しかしどこも素晴らしい料理を提供しており、店を切り盛りする人物たちも実に魅力的だ。そして何より、いずれも時計業界と興味深いつながりを持っている。

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Coffee Up

 時計文化が根付いたこの街に、コーヒー アップ ジュネーブ(Coffee Up Geneva)のような店が現れるのも時間の問題だったのかもしれない。ヴィンテージ時計や充実した時計関連の蔵書、そしてオリジナルのアート作品で彩られたこの店は、創設者たちによって特別な空間へと仕立てられている。そしてすでに、特別な時計やコレクターたちを引き寄せる場所となりつつある。

coffee up

Courtesy of Coffee Up

 Coffee Up Genevaを手がける夫妻、コーラリー(Coralie)とキーラン(Kealan)は、この場所を“house of houses”――さまざまなコミュニティが自然と集まる場所――のような存在として捉えている。ブランドにとらわれず、あらゆる時計愛好家を歓迎する空間だ。昨年のWatches & Wondersに合わせてオープンすると、たちまち世界中のコレクターコミュニティから支持を集めた。

 ジュネーブ・コルナヴァン駅から歩いてすぐの場所にあり、『Geneva Watchmaking Guide』を片手にひと息つくのにも最適だ。これは2025年にジュネーブ ツアーリズムとオートオルロジェリー財団が共同制作したガイドブックで、駅構内のツーリストインフォメーションセンターにて30スイスフラン(日本円で約6000円)で販売されている。全175ページの美しいハードカバーの本書は、ジュネーブが育んできた奥深い時計文化と卓越したウォッチメイキングの伝統を、訪問者に案内してくれる一冊だ。

watchmaking book

Photo by Katie Pennington

coffee up

Photo courtesy of Coffee Up

coffee up

Photo courtesy of Coffee Up

 店内の雰囲気は、いわば時計業界版の“カーズ&コーヒー”といったところ。気の利いた1本を着けてふらりと立ち寄ればいい。ここでは入手困難な新作を実機で初めて目にすることもあれば、驚くような来歴を持つヴィンテージウォッチについて誰かと語り合うなど、そういうことが自然に起こる場所だ。Coffee Up Geneva では、Watches & Wondersの開催週に向けて、いくつか興味深いイベントも準備するという。詳細はInstagramの公式アカウント(@coffee.up.ge)をチェックして欲しい。

Meltd

 オートオルロジュリーとジュネーブ屈指のハンバーガー。そのふたつを結びつける人物が、アフメド・アル・ショルバギ(Ahmed Al Shorbagui)氏だ。かつてパテック フィリップでマイクロメカニックとして働いていた彼は、食への情熱とクラフツマンシップへの知識を融合させ、Meltdを立ち上げた。もともとはジュネーブ・カルージュ地区のバーで始めたハンバーガーのポップアップ企画だったが、やがて近くのコワーキングスペースへと拡大し、その評判は瞬く間に広がっていった。

Courtesy of Coffee Up.

Photo by Katie Pennington

 アフメド氏は、2023年にジュネーブで開催されたベストバーガー コンペティションに出場。3000人を超えるジュネーブ市民による投票と、ダニー・ケザール(Danny Khezzar)氏(『トップ・シェフ(編注;米国で放送されている料理対決型のリアリティ番組)』のファイナリストであり、ベイビュー レストランのシェフ)による最終審査を経て、Meltdの和牛&トリュフバーガーが見事トップに輝いた。ハンバーガー界におけるGPHGの“金の針賞”とも言える栄冠を勝ち取ったことで、彼のバーガーを味わうこと自体が、かつて彼自身が手がけていた入手困難なパテック フィリップを手にするかのような体験になりつつある。

 Meltdの旗艦店は2025年にオープンした。アフメド氏は、時計づくりとハンバーガー作りはそれほど違いがないと語る。どちらも正確さ、最高品質の素材、そして情熱が全てなのだという。ハンバーガーを作っている時、彼は時計職人だったころと同じような感覚に戻ると言う。まるで自分だけの小さな世界に浸り、ただ自分の仕事に没頭し、完成品の美しさに胸を躍らせているのだ。

Meltd

Photo courtesy of Meltd

Meltd

Photo courtesy of Meltd

 地元産の上質なチーズと、Meltdのロゴが刻印された自家製バンズ(#alwaysreadthebuntop)のみを使用し、全てのバーガーはスイスでひとつひとつ手作業で組み立てられている。彼は時計の修理も得意かもしれないが、実際にMeltdのバーガーを味わえば、彼が自分の情熱に従ってこの道を選んだことをうれしく思うはずだ。

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Restaurant La Perle Du Lac

 もしWatches & Wondersの期間中に晴天に恵まれたなら、訪れるべき場所としてペルル・デュ・ラック レストラン(Restaurant La Perle du Lac)ほどふさわしいところはないだろう。湖の北岸沿いを少し歩けば、モイニエ公園を抜け、そのままペルル・デュ・ラック公園へとたどり着く。

perle du lac

チューリッヒのETH図書館所蔵、画像アーカイブ/Com_FC07-1200-083。

この土地の一部は、1929年に一般公開される以前、ハンス・ウィルスドルフが所有していました。この公園(のちにレストランも併設)の名は、湖を望む景色に心を打たれた彼の妻が「ここはまさに湖の真珠だわ!」と口にしたことに由来すると言われている。ロレックスの創業者が残した遺産としては、なかなか良い。もっとも、ジュネーブという街は昔から、時計づくりと湖畔でのランチが自然に結びついてきた場所なのだ。

 たとえ目的が美しい湖畔での散歩と、ディナー前にテラスで軽く一杯楽しむことだけだったとしても、ここはジュネーブの春を味わうのにうってつけの場所だ。湖畔で陽光を浴びながら過ごす時間は魔法のようだ。湖の青はより深く、木々の緑はいっそう鮮やかに見え、そしてヒューゴ・スプリッツの味わいまでもが、少しだけ格別に感じられるのだ。

ペルル・デュ・ラック。Photo by Patrick Nouhailler, licensed under CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Perle_du_Lac_Geneva.jpg)

 ウォッチウィークの醍醐味は、時計そのものだけではない。それを目当てに世界中から人々が集まってくることにもある。ここ数年を振り返ると、とりわけ印象に残っている時間の多くは、ブースを離れた場所で生まれていた。時計愛好家との長い食事の席や、テラスでの一杯、あるいはコーヒータイムのなかにあったのだ。

 Watches & Wonders期間中のジュネーブには、独特の空気が流れている。そしてこの街では、テーブルの向かい側に誰が座るのか、あるいはどんなリファレンスがテーブル越しに現れるのか、全く予想がつかない。

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