数カ月前、ジュネーヴから電車に乗ってビエンヌへ向かい、スウォッチのシステム51ムーブメント工場を見学した。運営の見事さに圧倒されたことは言うまでもない。さらにうれしいことに、スウォッチの本社からすぐそばの場所にスウォッチミュージアムがあると知り、私の滞在先であるビエンヌのコートヤード・バイ・マリオットからも徒歩圏内であった。
シテ・デュ・タン(Cité du Temps)は、スウォッチとオメガ両方のミュージアムを併設しており、スウォッチ本社ともつながっている。
このミュージアムは一般公開されており、オメガのミュージアムと同じ建物に入っている。1983年のブランド誕生以来の幅広いモデルが網羅されており、私は滞在中に2度足を運んだが、それでも見きれなかったほど展示が充実している。館内の壁一面にはスウォッチの店舗で見かけるような縦型のディスプレイが並び、発表年ごとにセクションが区切られて展示されている。それぞれの年のすべてのモデルが網羅されているわけではないが、その年を象徴するハイライトが印象的に紹介されており、チームが定期的に更新することで展示内容が常に目新しくなるよう保っているという。だが、多くの時計ミュージアム(あるいは一般的なミュージアム)と違い、ここにはガラスケースがない。展示された時計たちは、まるで「近づいてごらん」とでも言わんばかりに来場者を誘っており、注意を払えば実際に手に触れることもできる。もちろん、希少モデルの多くはガラス越しに展示されており、それらは館内のさまざまな場所に配置されている。
館内を案内してくれたのは、スウォッチのヘリテージ部門責任者であるフィリップ・マルティ(Philippe Marti)氏である。彼とはしばらく話をする機会があり、業界で“もっとも楽しい仕事”のひとつとも言えるヘリテージ部門の役割について話を聞くことができた。スウォッチは比較的歴史の浅いブランドであり、製造コストも他ブランドに比べてかなり低いため、ブランド設立当初からのコレクションをほぼすべてアーカイブとして残すことができたという。このため、オリジナルの試作品の一部を除けば、ミュージアムでは発売当時の店頭そのままのような状態で、ユニークなモデルやパッケージを数多く展示することができるのだ。もちろんその一方で、プラスチック特有の黄ばみや劣化といった、金属製時計ではあまり見られない課題も存在する。
なお、ミュージアムに展示されているスウォッチは販売されていないが、すぐ隣には世界で唯一の“ドライブスルー式のスウォッチストア”が存在する。そう、ここでは車に乗ったままスピーカー越しに時計を注文し、そのまま受け取ることができるのだ。郊外向けの新しい小売モデルとして、他ブランドも取り入れてみてはどうだろうか。そして新作のムーンスウォッチが登場した際には、この店舗でスウォッチ社員たちも列に並んで購入するそうだ(特別扱いはないのだ)。
もちろん、実際に現地を訪れる体験に勝るものはない。スウォッチファンであれば、ぜひとも時計好きなら1度は訪れたい場所のリストに加えるべき場所だろう。今回はその楽しさの一端でも伝わるよう、ビエンヌからスクリーン越しにお届けする。
1983年に登場したスウォッチ最初期のプロトタイプ、その一部。
高さ7フィート(約2.1m)はある特大のスウォッチ壁掛け時計が堂々と展示されている。
1998年製のスウォッチ GZ902“セレブレイトライフ(Celebrate Life)”は、付属のアイスモールドのなかに栓を抜いた状態で置かれている。
1993年製、プラチナケースの“トレゾールマジック(Tresor Magique)” SAZ101。ムーブメントには自動巻きのETA製を搭載。
1999年製のスウォッチ“チージー・トースト(Cheesy Toast)” GK304PACK。背後のパッケージはちょっとチーズっぽすぎる気がする。
90年代から電話だ。スウォッチフォンを返して欲しいってさ。
干支シリーズのスウォッチ。パッケージも見事な出来栄えだ。
2007年製のスウォッチ “フィール・マイ・ラブ(Feel My Love)” SUJK121は、まさに(ブードゥー)人形を思わせるデザイン。
1996年のアトランタ五輪に際して製作された限定版“ヴィクトリー・セット(Victory Set)”。ケースにはソリッドゴールド、シルバー、ブロンズが使われている。
スウォッチの懐中時計(“スウォケット”ウォッチ?)は、集める楽しさも格別だ。
キース・ヘリング デザインの初期モデル。
ハンバーガーはないけれど、代わりに時計はいかが?
スピーカーで注文して…
…そのまま窓口へ進めば時計を受け取れる。
スウォッチファンなら、この特別パッケージだけでもビエンヌを訪れる価値があるだろう。
レジ横では、風防の小キズ修復に欠かせないポリウォッチも販売中!
さらに詳しく知りたい方は、タンタンによるシステム51の工場訪問記を読むか、Swatch.comをチェックしてほしい。
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