Watching Movies ブルース・ウィリスが映画『ダイ・ハード』でタグ・ホイヤーを着用

　2021年のWatching Movies は、今回が最後の投稿となる。そして、ホリデー前に映画を取り上げる最後のチャンスでもある。年明けにはパワー全開で再開しよう。2022年に向けてのサプライズもご用意している。

　だが今は、この映画（と時計）に集中しなければ。『ダイ・ハード』は、ニューヨーク市の警官ジョン・マクレーンが活躍する作品だ。彼は別居中の妻に会うためにロサンゼルスにやって来た。妻は企業幹部としてのキャリアを求めて、この「天使の街」に子供たちと一緒に引っ越して来ていた。マクレーンは空港からリムジンに乗り、妻の会社のクリスマスパーティが行われているセンチュリーシティの高層ビル「ナカトミ・プラザ」に向かう。しかし、到着直後、会社に恨みを持つドイツ人テロリストたちがパーティ会場を占拠してしまう。人質がとられ、従業員が殺されるなか、ビル内で窮地を脱することができたのは3000マイル離れた場所からやって来た一人の警官だけだった。そして彼は、テロリストのリーダーであるハンス・グルーバー（リックマン）とその一味を一人ずつ倒していくのだ。その間、彼の腕には時代を体現する特別なタグ・ホイヤーが装着されていた。

　その時計はタグ・ホイヤーのプロフェッショナル 3000 クォーツだと思われる。これは、ダイビング用のタイミングベゼルを備えたハイブリッド・クロノグラフだ。グレーの文字盤にはアプライドマーカーが施され、ベゼルはスティール製で数字はベゼル自体に刻まれている。そのデザインの面白さは、ベゼルが12角形になっていること。この時計には、みっつのサブダイヤル、サイクロップ付きの日付窓、そして文字盤の右側にまとめられたテキストがある。もちろん、このモデルにはクォーツムーブメントが搭載されていて（モデル名の通り）、ホイヤーの全盛期後にこのブランドがどのようなものを作っていたかが伺える。本機は1984年から1990年までの比較的短い期間に製造された。タグ・ホイヤーは80年代後半に全盛期を迎え、ロレックスよりも手頃な価格でツールウォッチ市場を席巻していた。

　空港でぬいぐるみを抱えたままタバコを吸うような、ブルーカラーで実直なタイプのマクレーンが、犯罪と闘うパートナーとしてこの実用的な時計を選んだのは当然のことだと思える。この男は、ニューヨークの犯罪から結婚生活（そしてテロ）に至るまで、時計の巻き上げを気にしていられないほどたくさんのことを抱えているのだ。不思議なことに彼はタグを手首の内側に装着しているため、見つけるのは少々難しい。彼が超高層ビルのなかを移動しながら悪者と戦ったり当局と連絡を取ったりしているほとんどのシーンで、我々からはレザーストラップのバックルが見えるだけだ。それでもいくつかの場面でクォーツクロノの素晴らしい姿を見ることができる。

　注目すべき時計は、マクレーンのタグ・ホイヤー以外にもある。テロリストのリーダーであるグルーバーは、イエローゴールドのカルティエ　タンクと思われる時計を、黒のレザーストラップで装着していた。この時計はいくつかのシーンで見ることができる。マクレーンの法の執行人としての姿とは違い、タンクはグルーバーの手入れの行き届いたスタイルにとてもよく似合っている。

　テロリストのひとりと1対1の銃撃戦を繰り広げた直後、マクレーンがビルの窓に駆け寄ると、彼の救難信号を受けて様子を見に来た警察官が去っていくところだった。これはまずいと思ったマクレーンは、下の道路を見ながら、どうすれば警察官に事件が起きていることを察してもらえるかを考える。この瞬間、彼は割れて飛び散ったガラス窓に手を押し当てている[00:56:49]ので、彼の手首の裏側にあるタグ・ホイヤーがはっきりと見えた。すぐに彼はアイデアを思いつくため、そのシーンは長くは続かない。数秒後、彼は殺害したテロリストの死体を窓から投げ、それが下に停まっているパトカーのボンネットに激突するのだ。

　映画の後半、マクレーンは一人でグルーバーに立ち向かうことになり、これまでで最も大胆なスタントを行うために自分を奮い立たせる。ビルの屋上に閉じ込められた彼は、消防ホースに体を縛り付け、飛び降りなければならない。しかも死なないように...これは難しい。下から大勢の警察官が見守るなか、彼は飛び降りる。その瞬間、グルーバーは爆発物を爆破させる。幸運にも、マクレーンは吹き飛ばされることなく、地上高くビルからぶら下がっていることに気づく。彼はガラスを撃ち抜いて建物のなかに戻り、グルーバーを見つけ出して事態を収拾しようとする。おそらくこの映画で最大の「時計シーン」は、彼が銃に弾を装填するところだ。カメラは、2発の弾丸を持つ彼の血まみれの手[01:56:07]と、手首に装着された12角形ベゼルを備えたタグ・ホイヤー（同様に血まみれ）を映し出すのだ。

『ダイ・ハード』（主演：ブルース・ウィリス、アラン・リックマン）　監督：ジョン・マクティアナン、小道具：トミー・トムリンソン。Peacock、IMDB TVでストリーミング配信されているほか、iTunesやAmazonでレンタルも可能。

Lead illustration, Andy Gottschalk