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HODINKEE Japanでは2026年10月30日(金)から11月5日(木)まで、Car & Watch Week 2026としてクルマとそれに関する時計に焦点を当てた特集を公開している。このウィークのために用意した新規取材記事をサイト上で毎日配信していく予定だ。すでに公開されたコンテンツについてはこちらから確認してほしい。
ヴィンテージウォッチの世界で“ダブルネーム”と聞くと、多くの人はティファニーやカルティエ、ギュブランといった時計販売店の名が入った文字盤を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、その陰にはあまり知られていないもうひとつの世界があります。それが、自動車メーカーの名を文字盤に持つダブルネームウォッチです。
これらの多くは一般向けに販売されたコラボレーションモデルではありません。販売成績優秀者への褒賞品や役員への贈答品、あるいは特定の市場に向けてごく少数だけ製作された特別なモデルでした。そのため現存数はきわめて少なく、市場に姿を現す機会も限られています。
本記事では、一般にはあまり知られていない、自動車メーカーのダブルネームウォッチをご紹介します。
ホンダ × ロレックス オイスター パーペチュアル デイトとデイデイト
Photo Courtesy: Libertas
ロレックスとホンダ。一見すると接点のなさそうな両者の名が文字盤で共存する、とても珍しいダブルネームです。ベースとなるのは34mmケースのオイスター パーペチュアル デイト Ref.15000。6時位置には「HONDA」のロゴが配され、裏蓋には「Honda Bowl Winner '85」のエングレービングが施されています。
このモデルは、1985年にアメリカで開催された販売コンテスト「Honda Bowl '85」の優勝者へ贈られた記念品とされています。裏蓋には「Honda Bowl Winner '85」のエングレービングが刻まれており、ホンダのディーラー向け販売コンペティションで優秀な成績を収めた受賞者だけに与えられたことがうかがえます。当時のホンダは北米市場でオートバイ事業を拡大しており、その販売網を支えたディーラーを称える褒賞としてロレックスが選ばれたと考えられています。
Photo Courtesy: Libertas
現存数はきわめて少なく、海外の著名ヴィンテージディーラーであるWind Vintageは、同店が扱った個体を「確認されている5本目」と紹介しています。公式資料はほとんど残されていませんが、市場への登場例もわずかであることから、このモデルが希少な存在であることは間違いありません。
本記事で掲載した個体は、日本のヴィンテージウォッチディーラー「リベルタス」が取り扱うものです(記事執筆時点)。裏蓋には「Honda Bowl Winner '85」の刻印が鮮明に残り、良好な保存状態も相まって、受賞者の手に渡った当時の空気を今に伝えているかのような印象を受けます。
ホンダの名が入ったロレックスは、このオイスター パーペチュアル デイトだけではありません。さらに希少な存在として挙げられるのが、18Kイエローゴールド製ケースを採用したデイデイト Ref.18038です。6時位置には同じく赤い「HONDA」ロゴが配されており、1980年代にホンダが製作を依頼した記念品とされています。
詳細な公式資料は確認されておらず、その来歴には不明な点も残されています。しかし、オイスター パーペチュアル デイトよりも格上のデイデイトが採用されていることから、販売コンテストの最上位受賞者やディーラー経営者、あるいは幹部向けに用意されたモデルだった可能性も考えられます。
公開された個体はとても少なく、僕が確認できたのは香港のヴィンテージウォッチディーラー「Collins」が紹介した1984年製の1本のみでした。オイスター パーペチュアル デイトほど来歴が明らかになっているわけではありません。企業名が入ったダブルネームウォッチは、その企業の歴史や文化までも映し出す存在です。これらのロレックスもまた、1980年代のホンダの躍進を今に伝える貴重なタイムピースと言えるでしょう。
ボルボ × ホイヤー
Photo Courtesy: Hairspring
ホイヤー カレラ Ref.2447NSTは、1963年に誕生した初代カレラを代表するクロノグラフのひとつです。そのなかでもひときわ異彩を放つのが、文字盤に「VOLVO」のロゴが大きく配されたダブルネームモデルです。通常であれば12時位置に置かれるホイヤーのロゴは、6時位置の12時間積算計内へと移され、その場所をボルボのロゴが堂々と占めています。時計ブランドよりも自動車メーカーのロゴが優先されたレイアウトはとても珍しく、このモデルを象徴する最大の特徴です。
この時計は1970年代初頭、ボルボの優秀な役員へ贈られた記念品とされています。一般販売を目的としたモデルではなく、企業から限られた人物へ授与された贈答品であったため、生産数は約15本とも言われ、市場に姿を現す機会はごく稀です。近年オークションに出品された個体も、ボルボ幹部の姪から受け継がれた来歴を持つなど、その希少性を裏付けるエピソードが残されています。
Photo Courtesy: Hairspring
ベースとなるRef.2447NSTは、ブラックダイヤルに5分の1秒刻みのミニッツトラック、タキメータースケール、そしてバルジュー72を搭載した人気モデルです。モータースポーツとの結び付きが強いホイヤーと、安全性をブランドの理念として掲げてきたボルボ。一見すると対照的な両者ですが、その意外な組み合わせこそが、この時計ならではの魅力となっています。
既存のダイヤルに時計販売店名を加えたダブルネームウォッチとは異なり、このボルボ カレラは文字盤のレイアウトそのものが特別に設計された希少なモデルです。企業ロゴを追加しただけではなく、デザイン全体を作り替えることで生まれた一本は、時計史と自動車史が交差した、まさにヴィンテージならではの存在です。
アウディスポーツ × ホイヤー
Photo Courtesy: Analog Shift
ホイヤーとモータースポーツの関係は古く、1960〜70年代にはF1やル・マンなど数々のレースで公式タイムキーパーを務めました。その長い歴史のなかでも異色の存在といえるのが、「Audi Sport」のロゴを文字盤に配したクロノグラフです。1980年代に製造されたこのモデルは、当時のアウディスポーツ UKのために製作された特別なモデルで、ブラックダイヤルの12時位置にはアウディスポーツのロゴが配されています。
イギリス市場限定で、製造期間は約2カ月ととても短く、現存数は100本程度とも言われるなど、その希少性はホイヤーのダブルネームモデルのなかでも群を抜いています。一般的な販売店とのダブルネームとは異なり、自動車メーカーのモータースポーツ部門と時計ブランドの関係から生まれた特別仕様である点も、大きな特徴です。
Photo Courtesy: Analog Shift
搭載するムーブメントは、堅牢性と実用性で知られるレマニア5100。中央に配されたオレンジ色のクロノグラフ針や、視認性を重視したダイヤルデザインなど、ツールウォッチとしての機能美が随所に表れています。当時のアウディスポーツは世界ラリー選手権(WRC)でクワトロ(同社独自の4輪駆動システム)を武器に黄金時代を築いており、この時計もまた、そんなブランドの勢いを象徴する一本と言えるでしょう。
ヴィンテージホイヤーは常に一定のニーズがありますが、このアウディスポーツモデルは市場に姿を現す機会もきわめて限られています。時計ブランドと自動車メーカーの名が文字盤で並ぶだけでなく、1980年代のモータースポーツの熱気まで封じ込めた、コレクター垂涎のダブルネームウォッチです。
アルファ ロメオ × ブライトリング
ブライトリング クロノマットは、1984年にブランド復活の象徴として誕生したコレクションです。そのなかでもひときわ珍しい存在が、アルファ ロメオのエンブレムを文字盤に配した特別仕様です。ベースとなるのはブラックダイヤルのクロノマット「ブラックバード」Ref.A13050.1。12時位置にはブライトリングのロゴ、6時位置にはアルファ ロメオのエンブレムが配されています。
このモデルは1998年、当時アルファ ロメオを傘下に持っていたフィアットグループの依頼によって製作されました。製造本数はわずか30本で、アルファ ロメオの経営陣へ贈られた記念品とされています。保証書はイタリア・トリノの宝飾店「Gioielleria Tiglieri」名義で発行されていますが、実際にはブライトリングのイタリア総代理店Trademaからアルファ ロメオへ直接納品されたと伝えられています。
このアルファ ロメオ仕様は、ブライトリングが1990年代に数多く手がけた企業・組織向けスペシャルエディションのひとつです。当時は航空部隊やアクロバット飛行隊、スポーツチーム、企業などのために、特別なダイヤルやケースバックを備えたクロノマットが数多く製作されました。そのなかでも、自動車メーカーとのダブルネームは珍しく、30本という製造数も相まって高い人気素誇るコレクターズアイテムとなってではないでしょうか。
クロノマットはもともとイタリア空軍アクロバット飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」との共同開発から生まれたモデルとして知られ、プロフェッショナルユースを想定した堅牢な設計とライダータブを備えています。そのスポーティな個性は、走りへの情熱を追求してきたアルファ ロメオとも調和しているように感じます。企業の節目や功績を称えるために製作されたこの一本は、自動車メーカーと時計ブランドが築いてきた関係を今に伝える、貴重なネオヴィンテージウォッチと言えるでしょう。
エディターズノート
本稿の調査を進めるなかでも、詳細な資料が残されていない個体もあり、ヴィンテージウォッチの奥深さを改めて感じさせられました。もし読者の皆さんがほかにも興味深い自動車メーカーとのダブルネームウォッチをご存じであれば、ぜひ教えてください。
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