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オークション市場という暴れ馬に、再びまたがるときが来た。とはいえお決まりの顔ぶれに食傷気味の人に向けて今回は、10月31日と11月1日にモナコで開催されるモナコ・レジェンド・オークションのカタログを見ていこう。現地には行かないが(いずれまた行きたいと思っている)、カタログを見た印象をお伝えする。実際に時計を見たわけではないので、コンディションについて詳しく論じるつもりはない。状態については、各自で確認してほしい。だが、これが下調べの出発点になれば幸いだ。
注目ロット
ロット50のロレックス Ref.6062。推定落札価格は100万~200万ユーロ(約1億7000万から3億5000万円)。
いつものように、まずは注目ロットをいくつか取り上げたい。今回のオークションは、モナコ・レジェンドの初期のカタログに立ち返ったような印象だ。きわめて希少な時計が多い一方、ほかのオークションで見かけるような派手で目を引く時計ばかりではない。とはいえ、トップロットはきわめてコンディションの良いステンレススティール製のロレックス Ref.6062で、予想落札価格が100万〜200万ユーロ(約1億7000万〜約3億5000万円)というのはかなり驚異的だ。この時計はアウロ・モンタナーリ氏のコレクションからの出品で、率直に言って推定落札価格は控えめと言えるかもしれない。これほどのコンディションを保った時計は希少であり、買い手も限られる。適切な買い手がまだこの時計を手にしていなければ、最低推定落札価格の3倍で落札されても驚かない。
ロット208のオーデマ ピゲ トリプルカレンダー ムーンフェイズ。推定落札価格は20万~40万ユーロ(約3500万から7000万円)。
ロット181のパテックフィリップ Ref.3974。推定落札価格は60万~120万ユーロ(約1億から2億円)。
ロット80のヴァシュロン・コンスタンタン Ref. 4724。推定落札価格は50万~100万ユーロ(約8800万から1億7000万円)。
もうひとつ、特に注目したいのが、ブレゲ数字を備えたプラチナ製のオーデマ ピゲ トリプルカレンダーだ。唯一の難点は、おそらく時計に詳しくない人には、その価値が伝わりにくいことだろう(残念ながら、そうしたわかりやすさが価格を左右する大きな要素でもある)。自慢の1本という意味では、もちろんきわめてコンディションの良いパテック フィリップ Ref.2499もある(どうやら、パテック フィリップ自身がケースを製作した最初のRef.2499らしい)。そして私がいつまでも好きな時計のひとつである、パーペチュアルカレンダーとミニッツリピーターを備えたRef.3974も出品される(これはパテック フィリップが手掛けたネオヴィンテージの複雑時計のなかでも最高傑作のひとつだ)。それぞれの推定落札価格は70万〜140万ユーロ(約1億2000万から2億4000万円)、60万〜120万ユーロ(約1億から2億円)だ。そして、私の目を引いたのはヴァシュロン・コンスタンタンだった。カタログのトップを最高級のヴァシュロン・コンスタンタンが占めることは滅多にないが、今回は選択肢が豊富だ。まずは、美しく多彩な色味のエナメルを施した時刻表示のみのRef.4724がある。エナメルは最近、注目を集めるようになってきた。それも当然のことだ。しかし、これはまだ序の口にすぎない。
ロット149のヴァシュロン・コンスタンタン Ref.4178。推定落札価格は6万~12万ユーロ(約1000万から2000万円)。
推定落札価格がそれぞれ20万〜40万ユーロ(約3500万から7000万円)の2本は、実に見事なフォルムを持つ時計だ。ひとつは市場に出るのが初めてとなるピンクゴールド製のRef.4764 “Cioccolatone(チョコラトーネ)”、もうひとつはおそらくユニークピースのホワイトゴールド製ジャンプアワーである。これらはヴィンテージウォッチ収集の世界には、まだまだ発見があるのだと思わせてくれる。だが私にとってのハイライトは、このツートンでピンク・オン・ピンクのパルセーションダイヤルを備えたRef.4178だ。おそらく、私がこれまで見たヴァシュロン・コンスタンタンのクロノグラフのなかで最も美しい。ユニークピースかもしれず、間違いなく素晴らしい時計だ。推定落札価格の6万〜12万ユーロ(約1000万から2000万円)は、その価値に見合う額としてはかなり低く感じられる。
カルティエはデザインにおいて依然として無敵だ
ロット131のカルティエ ベニュワール アロンジェ。推定落札価格は8万~16万ユーロ(約1400万から2800万円)。
カルティエが、デザインを主軸とする時計の王者であることに疑いはない。なぜなら新たなヴィンテージウォッチを作ることはできないのだから、そうした評価が変わることなどあるだろうか。また同じことを言っていると思われるかもしれないが、繰り返し取り上げてきたテーマを新鮮に語るのは難しい。私が昔から好きな時計のひとつで、夢の時計トップ5のひとつにも入るのが、ブレスレットを備えたプラチナ製のカルティエ タンク サントレだ。今回の個体にはブレスレットがないものの、このコンディションの1950年代製サントレはなかなか見つからない。そして、細長い時計の王者といえばマキシ オーバルだ。アウロ・モンタナーリ氏のコレクションから出品されるこのベニュワール アロンジェも見事な仕上がりで、推定落札価格は6万〜12万ユーロ(約1000万から2000万円)と高めだ。
ロット57のエナメル製24時間ベゼルを備えたカルティエ タンク。6万~12万ユーロ(約1000万から2000万円)。
カルティエにはほかにも強力な顔ぶれが揃う。まず、推定落札価格が10万〜20万ユーロ(約1700万から3500万円)のロンドン パラレログラムがある。このような繊細な時計としては驚くほど高額だが、カルティエ人気が過熱する現在の市場では妥当と言えるだろう。推定落札価格6万〜12万ユーロ(約1000万から2000万円)の価格帯には、個性的な“デッキチェア”と、実は私が最も気に入っている、24時間表示のレリーフエナメルベゼルを備えた珍しいスクエアウォッチだ。ダイヤルが一般的な仕様とは異なる、魅力的なカルティエ ノルマルもある。私のカルティエの好みはかなり両極端だ。タンクやサントスのような、最もカルティエらしいオーソドックスな時計を選ぶか、今回の出品作のような、最も独創的なデザインを選ぶべきだと思う。このふたつは、カルティエのデザインを最もよく表す同じコインの両面なのだ。
そのほかの素晴らしい発見
ロット90のブレゲ トリプルカレンダー クロノグラフ。推定落札価格は10万~20万ユーロ(約1700万から3500万円)。
これまでのように手ごろな時計を探すつもりはないが、本気で特別な1本を求めているなら、ぜひ検討してほしい時計がほかにもいくつかある。たとえば、このブレゲのトリプルカレンダー クロノグラフは、1922年から1976年まで、50年以上にわたってブレゲに在籍した時計師、デルファン・ジャン・ガステリエ(Delphin Jean Gastellier)の所有品だった。安くはないが、私がこれまで見たトリプルカレンダー クロノグラフのなかでも特に気に入っているもののひとつだ。先週のBring a Loupeでも同種の時計を取り上げたが、こちらのほうがはるかにコンディションが良さそうだ。このブレゲの筆記体ロゴが、もうたまらない。
ロット63のアンデルセン・ジュネーブ レトログラード パーペチュアルカレンダー。推定落札価格は1万5000~3万ユーロ(約260万から520万円)。
本当はこの時計を自分だけの秘密にしておきたかったが、皆さんのために紹介するのだから、誰かがこの素晴らしいアンデルセン・ジュネーブのレトログラード パーペチュアルカレンダーを買うべきだ。最低落札価格が設定されずに出品されている。トーン・オン・トーンの色使いにシルバーのアクセントが加わり、とても魅力的だ。予想落札価格の下限である1万5000ユーロ(約260万円)なら破格だ。もうひとつの掘り出し物は、ギュブランとのダブルネームが入ったオーデマ ピゲ ディスコヴォランテだ(なぜかしばらくAnalog:Shiftで売れ残っていた。おそらく少し通好みすぎたのだろう)。ブレスレットは私には小さすぎるが、この時計が何年も持ち主を変えながら取引されるのを追ってきた。さらに、この時代のブレゲのパーペチュアルカレンダー クロノグラフはまさに最高峰と言える。最低予想価格の3万ユーロ(約520万円)に近い金額で落札されるようなら、時計市場も一度、現実と向き合わなければならないだろう。ブレゲについてこれだけ語っていること自体、今のブランドの勢いを示しているのかもしれない。
ロット147のパテックフィリップ ゴンドーロ。推定落札価格は1万5000~3万ユーロ(約260万から520万円)。
カラトラバが欲しいって? 実際にそう言ったかどうかは関係ない。こちらから紹介しよう。1万〜2万ユーロ(約170万から350万円)の価格帯からは、このピンクゴールド製ヴァシュロン・コンスタンタンだ。皆さんにネタバレしなければ、私が入札したい1本だ。とても美しいプラチナ製パテック フィリップ Ref.1527より少し手ごろだが、懐具合によって好みも違うものだ。ほかに目を引いたのは、ティファニーとのダブルネームが入った角形のパテック フィリップ ゴンドーロ。もっと色彩豊かなものが欲しければ、中世の戦闘場面を描いた素晴らしいエナメルダイヤルのユニバーサル・ジュネーブもある。これ以上、何を望むだろう? きっとほかにも素晴らしい時計があるはずなので、カタログをじっくり見て探してほしい。
モナコ・レジェンドの2026年秋のオークションについては、こちらから。
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