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クイック解説
グラスヒュッテにおける時計製造180周年の節目であった2025年、特別なモデルとして「パノマティックルナ」のアベンチュリンダイヤルモデルが発表された。このアニバーサリーピースは、近年同ブランドが注力している豊かなダイヤル表現の追求に加え、ムーブメントの改良など、グラスヒュッテ・オリジナルというブランドが着実な進歩を積み重ねていることを示すものであった。
そして今年、その続編とも言えるアベンチュリンダイヤルの新作がセネタコレクションから登場した。本作は、時針と分針のみを備えたドレスライクな2針モデルである。最大の特徴は、20世紀初頭に見られたふたつの芸術様式からインスピレーションを得て、異なる表情を持つ2種類のカラーリングが用意された点だ。
セネタ・アベンチュリン アールデコ・ブルー
セネタ・アベンチュリン アールヌーヴォー・グリーン
ひとつは、大胆な幾何学フォルムと近代都市の躍動感を象徴するアール・デコの名を冠した「セネタ・アベンチュリン アールデコ・ブルー」。プラチナケースに深みのあるブルーのアベンチュリンダイヤルを合わせ、同色のアリゲーターストラップでクールにまとめている。もうひとつは、自然界の有機的なフォルムを重んじるアール・ヌーヴォーをテーマとした「セネタ・アベンチュリン アールヌーヴォー・グリーン」である。こちらは温かみのあるレッドゴールドケースに煌めくグリーンのアベンチュリンダイヤルを組み合わせ、ブラウンのヌバック仕上げストラップを添えている。
なお、両モデル共通の仕様として、ダイヤル上には光沢のあるホワイトのロゴプリントが施され、時分針にはソリッドゴールドを使用し、ブルーモデルにはホワイトゴールド、グリーンモデルには5Nレッドゴールドを採用。いずれもケース素材に合わせたカーブ形状としている。
外装のプロポーションは両モデルともにケース径40mm、厚さ10.2mmに抑えられた。ラグからラグまでの長さは47.9mmと、手首への収まりを考慮した端正なサイズ感にまとめられている。両面無反射コーティングが施されたドーム型サファイアクリスタル風防を備え、防水性能は5気圧を確保している。
内部には、ブランドの基幹ムーブメントとして確かな実績を積んできたキャリバー36の系譜に連なる、自社製自動巻きキャリバー 36-16を搭載する。100時間のパワーリザーブや、温度変化や磁気への耐性に優れるシリコン製ヒゲゼンマイを備えており、現代の実用機として高い精度と信頼性を誇る仕様だ。価格は「アールデコ」が522万5000円、「アールヌーヴォー」が493万9000円(ともに税込)となっている。
ファースト・インプレッション
グラスヒュッテ・オリジナルが本作においてアベンチュリンガラスで表現しようとしたのは、単なる装飾的な美しさではない。17世紀のイタリア・ムラーノ島にルーツを持つこの特殊なガラスは、溶融時に金属酸化物が不規則に混ざり合うことで、ふたつとして同じ表情を持たない特有の煌めきを生み出す。本作ではさらに薄いガラスの裏面へブラックラッカーによるコーティングを施すことで、その輝きに深い奥行きを与えている。
興味深いのは、このガラスの豊かな表情を、20世紀初頭を彩ったふたつの歴史的な芸術様式と巧みに結びつけている点だ。
19世紀末から広まったアール・ヌーヴォーは、自然界の有機的なフォルムや流れるような曲線を美の基準とした様式である。本作の『アールヌーヴォー・グリーン』では、温かみのあるレッドゴールドのケースに、生命力を感じる鮮やかなきらめきを見せるグリーンのアベンチュリンを組み合わせることで、その様式が持つ自然との有機的な繋がりを見事に表現している。ゆっくりと時計を傾けることで深緑のなかに光の粒が見え隠れするさまを見ていると、太陽の下で木漏れ日のなかを歩いているかのような気分になる。
一方、1920年代以降に隆盛を極めたアール・デコは、近代都市の発展を映し出す大胆な幾何学的造形や直線的なモダニズムを特徴とする。プラチナケースのソリッドな輝きと、当時から進歩を象徴する色であった深いブルーのアベンチュリンを用いた『アールデコ・ブルー』は、まさに新時代の躍動感や都市の洗練を体現した一本と言える。濃紺の文字盤には、吸い込まれそうになるほどの奥行きを感じることができる。
同じアベンチュリンというガラス素材をベースとしながらも、それぞれの芸術様式が持つ美学をカラーリングとケース素材のコントラストによって解釈し、まったく異なる時代の精神を文字盤上に描き分けてみせたのだ。
また、前作にあたるパノマティックルナのアベンチュリンモデルとの比較から見えてくるのは、同素材に対するアプローチの違いである。アシンメトリーなレイアウトやムーンフェイズ、パノラマデイトといった複雑な表示要素を持っていたパノマティックルナに対し、本作は洗練された時分針のみの純粋な2針レイアウトを採用している。パノマティックルナで見せたガラス文字盤の凹凸による立体的な表情も魅力的であったが、本作のように広大な余白を設けることで、アベンチュリン特有の美しさをよりストレートに味わうスタイルもまた一興だ。
サファイアクリスタルのケースバックから覗く4分の3プレートやハンドグレービングが施されたテンプ受けなど、ドイツ時計ならではの伝統的で質実剛健な下地を持ちながら、ダイヤル上でこれほどまでに情緒的でロマンチックな表現をやってのける。現在のグラスヒュッテ・オリジナルの懐の深さと、時計作りにおける確かな成熟を感じさせるタイムピースである。
基本情報
ブランド: グラスヒュッテ・オリジナル(Glashütte Original)
モデル名: セネタ・アベンチュリン
型番:Ref.1-36-16-40-03-01 セネタ・アベンチュリン アールデコ・ブルー/Ref.1-36-16-41-05-01 セネタ・アベンチュリン アールヌーヴォー・グリーン
直径: 40mm
厚さ: 10.2mm
ケース素材:プラチナ(アールデコ)/レッドゴールド(アールヌーヴォー)
文字盤色: ブルー(アールデコ)/グリーン(アールヌーヴォー)
インデックス: ホワイトプリントのブランドロゴ
夜光: なし
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット:ブルーのルイジアナ産アリゲーターストラップ(アールデコ)/ブラウンのルイジアナ産ヌバック仕上げアリゲーターストラップ(アールヌーヴォー)
ムーブメント情報
キャリバー: 36-16
機構: 時・分表示、秒針停止機能
パワーリザーブ: 100時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
クロノメーター認定: なし
追加情報:耐震性振動システム
価格 & 発売時期
価格: アールデコ 522万5000円/アールヌーヴォー 493万9000円(ともに税込)
発売時期: 販売中
限定:なし
詳細は、こちらをクリック。
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