trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Auctions バズ・オルドリンの腕時計がオークションに出品へ

“Dr.ランデブー”が春の大掃除。

本稿は、2026年7月13日に執筆されたHodinkee Australiaの友人たちから転載されたものの翻訳です。

ADVERTISEMENT

ニューヨークのサザビーズで開催されるSpace Explorationオークションの出品リストのなかに、興味深いものを見つけた。しかも、ひとつやふたつではない。全部で24点だ。それはすべて、アメリカ空軍の退役准将であり、人類で2番目に月面へ降り立ったバズ・オルドリン(Buzz Aldrin)氏が所有する腕時計だ。

 本名がエドウィン・ユージン・オルドリン・ジュニア(Edwin Eugene Aldrin Jr.)であるこの宇宙飛行士は、自身の時計コレクションの大部分を今回出品しており、その中心を占めるのはオメガだ。しかし宇宙関連の出品物のなかには、オメガ以外のブランドの時計もいくつか含まれている。一方で、アポロ11号のミッションで彼が着用したオメガ スピードマスター プロフェッショナルが出品されていないのは当然だろう。なぜならこの時計は1969年の月面飛行を終えたのち、スミソニアン博物館へ輸送される途中で盗難に遭い、現在も行方不明のままだからだ(そして厳密にいえば、今もアメリカ政府の所有物だ)。

アポロ11号月着陸船に搭乗したバズ・オルドリン氏。着用していたのは、前述の盗難にあったオメガ スピードマスター プロフェッショナル Ref.ST105.012。Image courtesy of NASA

 オークションには、オルドリン氏にとって特別な意味を持つオメガの数々が並ぶ。それらは長年にわたるコレクションのなかで集められたもので、経験豊富なスキューバダイバーとして実際に愛用していたダイバーズウォッチや、記念品として集められた時計が詰まった大きな箱も含まれている。彼が真のコレクターであり、筋金入りの時計愛好家であることは疑いようがない。オンライン入札はすでに始まっており、7月15日にニューヨークで行われるライブオークションに先立って参加することができる。ここでは、その注目ロットをいくつか紹介しよう。

ADVERTISEMENT
ジャガー・ルクルト シャーク ディープシー クロノグラフ
Jaeger-LeCoultre Shark Deep Sea Chronograph

Image courtesy of Sotheby's

 今回のオークションでオメガ以外で最も興味深い時計は、オルドリン氏が愛用していたジャガー・ルクルトのシャーク ディープシーだ。1960年代後半から1970年代前半にかけて製造されたツールウォッチで、当時としてはごく限られた数しか存在しなかったダイバーズクロノグラフのひとつだった。宇宙を制したあと、彼は人生におけるもうひとつの情熱であるダイビングに打ち込んだ。彼はかつて、「この地球上で私が一番好きなことは、スキューバダイビングをすることだ」という有名な言葉を残したほどだ。

Jaeger-LeCoultre Shark Deep Sea Chronograph

Image courtesy of Sotheby's

 付属する来歴資料からは確認できないが、私は彼がこのシャーク ディープシーをダイビング用に新品で購入したのではないかと推測している。その考えを裏付ける材料はいくつかある。この個体のダイヤルには“Jaeger”ではなく“LeCoultre”のみが記されており、アメリカ市場向けモデルであることがわかる。さらにオプションだったGMTベゼルやワールドタイムベゼルではなく、ダイビングベゼルが装着されている点もその推測を後押しする。そして何より、この時計には、水辺で使い込まれてきたことを物語る痕跡が随所に残っている。バネ棒やプッシャーのシャフトには酸化が見られ、風防には無数の擦り傷が刻まれている。しかし、その傷越しにのぞくダイヤルと針は驚くほど良好なコンディションを保っている。

ADVERTISEMENT

 執筆時点での価格は8500ドル(日本円で約130万円)で、推定落札価格を下回っているだけでなく、オルドリン氏所有という来歴を抜きにして考えても、この希少なヴィンテージクロノグラフの市場価格も下回る価格にとどまっている(編注;現在オークションは終了しており、3万2000ドル/日本円で約500万円で落札)。

ロット36|推定落札価格: 1万~2万ドル(日本円で約150万から約300万円)

オメガ スピードマスター プロフェッショナル Ref.3590.50.00
Omega Speedmaster Professional ref. 3590.50.00

Image courtesy of Sotheby's

 前述のとおり、バズ・オルドリン氏が月面で着用したオメガ スピードマスター プロフェッショナルを手に入れることはできない。たとえ現在も行方不明であっても、その時計の所有権はアメリカ政府にあり、市場に出ることは決してないからだ。だからこの1本こそが、バズ・オルドリンの“ムーンウォッチ”を所有することに最も近づける1本なのだ。1990年代のスピードマスター プロフェッショナルで、Cal.861を搭載し、夜光塗料が程よく経年変化したトリチウムダイヤルを備える。彼はアポロ計画で着用したスピードマスターの代替としてこの時計を新品で入手し、その後も日常的に愛用していたため、ケースには実際に使い込まれた傷跡がしっかりと刻まれている。

Omega Speedmaster Professional ref. 3590.50.00

Image courtesy of Sotheby's

Omega Speedmaster Professional ref. 3590.50.00

Image courtesy of Sotheby's

 この推定落札価格は、同年代の時計の市場価格をわずかに上回る程度で、執筆時点では8000ドル(日本円で約120万)で入札されている。ミスター・ムーンのムーンウォッチが推定落札価格内で落札されれば、まさに掘り出し物と言えるだろう(編注;現在オークションは終了しており、4万4800ドル/日本円で約700万円で落札)。

ロット37|推定落札価格: 8000~1万2000ドル(日本円で約120万から約190万円)

第2世代のオメガ スピードマスター X-33
Omega Speedmaster X-33 Gen 2

Image courtesy of Sotheby's

 オークションで私の目を引いたもう1本のスピードマスターが、このX-33だ。機械式スピードマスターに代わるモデルとして開発された、オメガのクォーツ式アナデジウォッチで、飛行資格を取得しており、現在でもNASAや国際宇宙ステーションで実際に使用されている。そんなモデルをオルドリン氏が愛用していたのは、ごく自然なことだ。彼は、私がまさにこのX-33だと思っている1本を着けている姿がたびたび目撃されているのだが、そのブレスレットは、もうひとつの時計ヘッドを取り付けられるよう“フランケンシュタイン仕様”に改造されていた。そのもうひとつの時計とは、手首の反対側に装着された別のスピードマスターだった。

Omega Speedmaster X-33 Gen 2

Image courtesy of Sotheby's

Omega Speedmaster X-33 Gen 2

Image courtesy of Sotheby's

 この個体もまた、軍やNASAへの支給品でよく見られる無地のケースバックを備えている。支給モデルは部隊名や記章、所有者名などをあとから刻印できるように、あえてケースバックが空白の状態で工場から出荷されていた。そのため、この1本もオルドリン氏がオメガとの提携、あるいはNASAや軍のコネクションを通じて入手した可能性が高く、刻印は施されなかったと考えられる。注:なお、この個体は現在動作しておらず、簡単な電池交換で動く可能性もあるが、より本格的なオーバーホールが必要となる可能性もある(編注;現在オークションは終了しており、4万4800ドル/日本円で約700万で落札)。

ロット43|推定落札価格: 4000~6000ドル(日本円で約63万から約94万円)

オメガ コンステレーション マンハッタン デイデイト
Omega Constellation Manhattan Day-Date

Image courtesy of Sotheby's

 カタログでこのコンステレーション デイデイトを見つけたとき、思わず満面の笑みになった。カレンダー表示用のインダイヤルがあることから、コレクターのあいだでは“フクロウ”の愛称で知られている。実は私自身もこのモデルのスティール版を所有しており、最も頻繁に着用し、大切にしている1本でもある。彼のコレクション、そして今回のオークションにオメガが数多く含まれていること自体は驚くことではない。彼が多くのオメガを所有し、今回のオークションにも多数出品していること自体は驚くことではない。ブランドアンバサダーという立場上、新作時計を提供される機会も少なくなかっただろう。しかし今回オークションに姿を現した時計のなかでも、彼が何十年も手元に残してきたものは、彼がどの時計に魅力を感じ、定期的に着用していたのかを物語っているのだ。

Omega Constellation Manhattan Day-Date

Image courtesy of Sotheby's

 今回出品されているのはツートン仕様で、ローマ数字が刻まれたインセットタイプのゴールドベゼルとそれに合わせたゴールドのインダイヤルリングが美しく、一体型ブレスレットを組み合わせた32mmのケースサイズは着け心地が良い。近年はネオヴィンテージウォッチへの注目が高まっているが、このコンステレーション マンハッタンはいまだ、過小評価されている隠れた名作のような存在だ。しかし次世代のコレクターたちはすでにその魅力に気づき始めており、このリファレンスはチャーリー・プースやデヴォン・リー・カールソンの手首でもたびたび目撃されている。なおX-33と同様に、このモデルも電池交換やオーバーホールが必要だが、コンディションは良好だ(編注;現在オークションは終了しており、6400ドル/日本円で約100万円で落札)。

ロット42|推定落札価格: 5000~8000ドル(日本円で約78万から約120万円)

記念時計が詰まった箱
A box of commemorative watches

Image courtesy of Sotheby's

 この箱の腕時計には、時計学的な価値はあまりないが、オークション全体で最も心を引かれる出品だ。この8本の時計(時計の箱付き)は、オルドリン氏が人生やキャリアの節目ごとに記念として受け取り、何十年にもわたって大切に保管してきたものだ。バズ・オルドリン小学校への関わりを記念して贈られたツートンモデルや、『トイ・ストーリー3』の腕時計(バズ・ライトイヤーの名前の由来が誰なのかは、言うまでもないだろう)、ロデオドライブ・アート&パフォーマンスの記念スウォッチ、朝鮮戦争をテーマにした時計、そして国際宇宙ステーション(ISS)がダイヤルに描かれたボーイングの時計などが含まれている。

ADVERTISEMENT
Buzz Aldrin Elementary School watch

Image courtesy of Sotheby's

Toy Story 3 watch

Image courtesy of Sotheby's

 朝鮮戦争の戦闘機パイロット、テストパイロット、宇宙飛行士、ダイバー、教育活動家、そしてコレクター。オルドリン氏は、そのすべての役割に情熱を注いできた。この“思い出の箱”に収められた時計の数々は、彼の人生におけるあらゆる取り組みを記念するものであり、何十年にもわたって愛情を込めて大切に保管され、築き上げられてきたコレクションだ。これは、ひとりの男が歩んできた人生そのものを物語る証しなのである(編注;現在オークションは終了しており、5376 ドル/日本円で約84万円で落札)。

ロット64|推定落札価格: 3000~5000ドル(日本円で約47万から約78万円)

“ウォッチ・ガイ”のバズ・オルドリン

ベン・ハリーズ(Ben Harries)氏が撮影した『レボリューション』掲載のバズ・オルドリン氏。

 オルドリン氏は、どこにでもいるような人物ではない。彼の腕時計のスタイルもそれを物語っている。彼は両手首に複数の腕時計を着けていることが多く、時には1本のブレスレットに複数の時計ヘッドを繋ぎ合わせ、まるでフランケンシュタインのようにさまざまな金属を組み合わせたスタイルを披露することもある。好みは人それぞれだが、月面でスピードマスターを着けた男なのだから、どんな着け方をしようと自由だ。

Buzz Aldrin's watches

Image courtesy of Arthur Touchot

 オルドリン氏が今回の売却でオークション記録を塗り替えることに特にこだわっているとは思えないし、私のようなZ世代の若造にとっても、そして上の世代の多くにとっても彼がヒーローであるにもかかわらず、今回出品される時計がオークション市場を熱狂させるとは思えない。時計史においても、人類史においても比類ない重要人物であることは間違いない。それでもコレクターの世代交代は着実に進んでおり、ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、そしてバズ・オルドリンといった、ベビーブーマー世代にとってのヒーローたちへの熱狂も、以前ほどではなくなりつつある。

 そうした変化は、彼らにゆかりのある時計への関心や相場にも表れ始めている。たとえば、マックイーンが映画『栄光のル・マン』で実際に着用した最後のホイヤー モナコは、6月のオークションで64万ドル(当時のレートで約1億円)で落札されたものの、100万ドル(当時のレートで約1億6000万円)という事前予想を大きく下回る結果となった。

Buzz Aldrin's Moonwatch

Image courtesy of Arthur Touchot

 時計市場の嗜好が、20世紀半ばのスティール製ツールウォッチから、ネオヴィンテージの独立系時計や貴金属製ジュエリーウォッチへと移りつつあることは、すでに明白だ。しかし私は、バズ・オルドリン氏の時計だけは、この先も数少ない例外的な存在であり続けると思っている。ポール・ニューマンやスティーブ・マックイーンは、あくまでポップカルチャーを象徴する人物であり、その人気には時代性がつきまとう。一方のバズ・オルドリン氏は探検家であり、歴史上の人物である。そして同時に、時計史においても重要な存在だ。だからこそ彼自身の魅力(そして彼の時計への関心)は、20世紀半ばのポップカルチャーが届き得る範囲をはるかに超えて、長く残り続けると信じている。

 ニューヨークで開催されるサザビーズのSpace Explorationオークションは、現在オンラインでのライブ入札を受け付けている。ライブオークションは、アメリカ東部夏時間で7月15日午前10時(日本時間では7月15日午後11時)にニューヨークで開始される(編注;現在オークションは終了している)。詳しくはこちらから。