ADVERTISEMENT
千葉の小高い山並みを縫うように伸びる、一筋の美しいコース。2023年グランドオープンしたアジア唯一の高級自動車ディーラーであるコーンズが手がけた会員制プライベートドライビングレーシングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」のアスファルトは、早朝の澄んだ空気のなかでどこか静まり返っていた。去る8月、眼下に広がるその完璧に整備されたコースで、僕はロールス・ロイスのステアリングを握り、ゆっくりとコースインのタイミングを待った。
手元にあるのは、ロレックスのコスモグラフ デイトナ。
滑らかに加速するロールス・ロイスの圧倒的な静粛性と重厚なパワーを体感しながら、コースのコーナーをひとつずつクリアしていく。先導車の挙動をトレースし、直線ではアクセルを踏み込み、ブレーキングポイントを見極める一瞬。ステアリングを握る手首の上で、コスモグラフ デイトナのタキメーターベゼルから放たれた鈍い光を感じる。スタートしたとき、既にクロノグラフのプッシャーを押し、走行タイムの計測は始まっている。この極めて贅沢で静かな高揚感を伴う体験は、僕に時計とモータースポーツという、ふたつの世界が交差する原点の風景を強く思い出させてくれた。
©Rolex/Zach Stovall
そもそも、なぜコスモグラフ デイトナという時計とモータースポーツは、これほどまでに分かち難く、深い親和性で結びついているのだろうか。
その原点は、1930年代初頭のフロリダ州デイトナビーチにさかのぼる。当時、白く引き締まった砂浜が広がるデイトナはスピードの聖地であり、地上最速記録に挑む挑戦者たちが集う場所だった。「キング・オブ・スピード」と呼ばれたサー・マルコム・キャンベルは、愛車ブルーバード号のハンドルを握り、ブランド初の防水腕時計であるロレックス オイスターを腕に、時速300マイル(約480km/h)という途途もない記録を打ち立てた。彼がロレックスに送った電報にある「時速300マイルを超えたときに着用していたロレックス ウォッチは、今も完璧に動いている」という言葉は、精度と耐久性を極限まで求めるモータースポーツとロレックスの伝説的な関係の幕開けを告げるものだった。
©Rolex/Bettmann Corbis
勝者に贈られるコスモグラフ デイトナ ©Rolex/JVA Studio
©Rolex/Zach Stovall/Jensen Larson
ジェンソン・バトンややハーレイ・ヘイウッド、さらには名誉あるグランドマーシャルを務めたトム・クリステンセンやジェイミー・チャドウィックといったテスティモニーたちが口を揃えて語るように、モータースポーツの頂点に立つドライバーたちにとって、コスモグラフ デイトナという時計は単なる副賞ではなかった。昼夜を問わず極限状態の過酷なコースを走り抜いた先にある究極の勝利の証しであり、人生を賭けた挑戦の旅路に寄り添う唯一無二のパートナーなのだ。さらにポール・ニューマンが愛用したことでも知られるこの時計は、ル・マン24時間レースやル・マン・クラシックといった歴史的な耐久レースの現場を通じ、スポーツの領域を超えた不朽のカルチャー・アイコンとしての地位を確立していった。
THE MAGARIGAWA CLUBのピットに戻りロールス・ロイスのエンジンを止め、静寂を取り戻した車内でコスモグラフ デイトナのクロノグラフ針をストップさせる。わずか十数分のドライブがもたらした興奮をどうにか落ち着け、コスモグラフ デイトナの歩みとそのディテールを改めて学ぶパネル展示の鑑賞へ。それこそポール・ニューマンが愛した逸話から、過去にどんなリファレンスが生み出されてきたのか。一方で、今では懐かしいSSベゼルや現在のセラクロムベゼルへと至る技術的変遷や、コスモグラフ デイトナに限らずロレックスのすべての時計が有する18Kゴールド製の針をつぶさに感じることができた。改めて、これほどのクオリティを具現化するロレックスの途方もない技術力と、決してそれだけが主役になることがない数々の伝説とテスティモニーたちとの関わりこそが、このブランドを唯一無二たらしめているのだと思い知らされる。
現代の日本において、ロレックス コスモグラフ デイトナという名を聞くと、どうしても二次流通市場での価格高騰や投機的な対象といった喧噪が脳裏をよぎる人も少なくないかもしれない。しかし、このサーキットで極限のスピードと「時」の計測に向き合ったとき、僕たちが忘れてはならないこの時計の本来の姿が自ずと浮かび上がってくる。
コスモグラフ デイトナの本質的な魅力とは、市場の数字で測れるような流行ではなく、1世紀近くにわたりアスファルトの上で磨かれてきた情熱の歴史とあくなき卓越性の追求そのものである。過酷なレースに挑むドライバーが挑戦の果てに手にしてきた象徴であり、限界に挑む人間の美学を凝縮したプロダクトなのだ。
©Rolex/Stephan Cooper
現代の時計界にはびこる刹那的な価値観から少し距離を置き、コスモグラフ デイトナが持つ真のバックグラウンドや文化的文脈に耳を傾けてみる。ステアリングを握り、自分自身のタイムを刻むための一品としてコスモグラフ デイトナと向き合うとき、この名機は僕たちに時間をどう生きるのかという普遍的な問いと、静かな高揚感をいつだって与えてくれる。エンジン音が静まり返ったコースを眺めながら、僕は手元のコスモグラフ デイトナが持つ確固たる重みを、あらためて噛みしめていた。
その他、詳細はロレックス公式サイトへ。
話題の記事
Introducing H.モーザー オフ-グリッド(編集部撮り下ろし)
アスファルトの静寂に刻むタイム──THE MAGARIGAWA CLUBで反芻する、ロレックス コスモグラフ デイトナの本質
クレドールはなぜ薄型ムーブメントを作り続けるのか――68系の設計思想と匠の技