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Photo Report 標高2500mでのカー&コーヒー。オーストリアのアルプスを駆け抜ける超高速ヴィンテージポルシェ

GPアイスレースの最新スペシャルイベント登場したクルマ、時計、風景を紹介。


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右腕の下にしっかりと押し込まれた薄いアルミニウム製ドアの端から目を凝らすと、山の舗装路の細いリボンが見え隠れする。70 年近く前のレーシングカーががまたしてもオフキャンバーコーナーを登り、この古いポルシェの手動ドラムブレーキの限界でオーバーランした者を待ち受ける、目も眩む垂直落下を避けるように駆け抜けていくのだ。オーストリアののどかな村、ツェル・アム・ゼーの上空に、複雑な山間部のスイッチバックが連続するコーナーが現れると、エンジンは回転を上げるために緊張を強いられる。

porsche 550s driving on a mountain road.

 車高の低い718 RSKのすぐ後ろを、ドイツ製ヴィンテージメタルの車列が、ネックレスの宝石のようにオーストリアの田園風景に敷き詰められている。道路の頂上を通過すると、ホーエ・タウエルン山脈の山塊が僕の視界を埋め尽くし、岩と氷と雪でできた絶え間ない壁が、この山脈の最高峰である標高1万2461feet(約3800m)のグロスグロックナーまで続いているのである。

 テール部分に誇らしげに苗字が書かれている、かつて社用車だったクリームホワイトのポルシェ 550 スパイダーの右席から、僕はその景色を必死に眺める。隣はトニー。このクルマを知り尽くしているトニーが運転している。狭いコックピットにふたりで並んで、僕の足は前輪の向こうのデスゾーンに埋もれているようだ。僕はトニーに、「長いダンサーの足を邪魔しないようにがんばるよ」と冗談を言った。小さなポルシェのギアを巧みに3速に入れる彼の手が僕の太ももをかすめる。トニーは英語を話せないようだ。

a man driving a porsche 550 on a road.

彼がトニーだ。

 でも、先走っているのはわかっているが、また山を下っていこう。


1日目 – 薄い空気のなかへ
porsche 550s on a road.

フェルディ・ポルシェ氏(右)は、まもなくグロスグロックナーへ向かう数台のポルシェ 550の準備を見渡している。

 僕の旅はスイスのゾロトゥルンから始まり、ポルシェデザインの時計工房とマニュファクチュールを見学したあと、アルプスを越えてオーストリアに渡り、ツェル・アム・ゼーにあるポルシェデザインの長年の本拠地、F.A.ポルシェスタジオを訪れた。GPアイスレースの特別イベントで、希少で非常にコレクターの多いポルシェ 550 スパイダーと718 RSKをグロスグロックナーで数日間体験し、文字どおり最高の気分で1週間を終えることになった。もしこの名前にピンとこないなら、このブランドのメインイベントに関するコールの記事(『高価なポルシェ、スキー、そしてクールなクロノグラフが揃った冬のモータースポーツイベント - GPアイスレースへようこそ』)を掘り下げてみることをおすすめする。このクラシックなポルシェのレーシングカーが自力で動くところを見たことがなかったため、グロスグロックナーの最北端の料金所を出たところにあるステージングエリアに向かって車を走らせるとき、僕の興奮は高まった。

 本当の物語は、オーストリアの中央東アルプスにある公共の山岳有料道路、グロスグロックナー高山道路の下から始まる。もしあなたがヨーロッパの峠道を見たことがないのなら、それは最高のもののひとつだと言っておこう。幸いなことに、僕は事故を起こすわけにはいかないようなクルマでグロスグロックナーを走るのは今回が初めてではなかった。1935年に作られたこの道路は、バターのように滑らかでどこまでも続く曲がりくねった48kmの道と、クルマやバイク、そして観光客でいっぱいのバスの忘れられない景色を提供してくれる。

porsche 550s on a road.

 トレーラーの横に立つと、そのひとつひとつが開かれ、夢のような光景が広がっていた。雪のために開催が1日早まったにもかかわらず、ポルシェファミリーが所有する2台の550と718RSKを含む、7台の550と718RSKが展示された。そのなかには、1954年のカレラ・パナメリカーナ(メキシコで開催された有名なレース)でハンス・ハーマン(Hans Herrmann)が運転してクラス優勝した1954年の550も含まれている。もしあなたがこの週末にポルシェミュージアムに来て、テレフンケン 550 スパイダーを見たかったのに見られなかったとしたら、引退したF1ドライバー(そしてオールマイティなステキガイ)、マーク・ウェバー(Mark Webber)氏のせいして欲しい。彼がを運転していたのだ。

 気が緩み、550のあとに続いて現代のカイエンに乗るつもりでいた僕は、まもなく出発するため、トニーがハンドルを握るクリーム色の白い550に乗ってくれと、ごく淡々と告げられたのでだ。僕の前には、ケン・マイルズ(Ken Mile)の718 RSKを駆るフェルディ・ポルシェ(創業者のひ孫)氏、その前には、かつてジェームズ・ディーンがテストドライブしたという噂の550を操るGPアイスレースチームのティノがいた。

porsche 718 rsk on a road.
cars in a parking lot

 これら非常に希少なクルマに関する膨大な記録と口承の歴史を圧縮しようとは思わないが、550 スパイダーはポルシェが専用設計のレースカーを設計した最初期の作品である。1953年から1956年にかけて、約90台がいくつかのモデルで生産され、瞬く間に北米を中心としたさまざまなレースで人気のオプションとなった。

 550は、スティールチューブフレームにアルミニウムの車体を組み合わせたミッドシップで、約110馬力の1.5リッターフラット4モーターを搭載している。重量は約1200lbs(約545kg)と小さく、驚くほど見事で魅力的である。718 RSK スパイダーは、550に続く高性能モデルで、1957年から1962年にかけて34台が生産された。このふたつのモデルは、ポルシェがこれまでに生産したクルマのなかで最も人気が高く、価値の高いクルマであり、ポルシェのモータースポーツにおける長い歴史の起源となったものだ。

a Porsche design compass watch

ポルシェデザイン コンパスウォッチ

porsche 550s on a mountain road

 グロスグロックナー峠の駐車場まで走ったところで、写真家のステファン・ボグナー(Stefan Bogner, 素晴らしいCurves誌の写真家)とマット・ドレッセル(Malte Dressel)に案内されて、周辺の道路でドライブと演出された写真のセッションが行われた。僕はトニーの隣の席をキープし、一行がアルプス駐車場の先の美しい区間で何度か峠を越すあいだ、車々間撮影をすることができた。

porsche 550s on a road.
porsche 550s on a road.
porsche 550s on a road.

フォトグラファーのステファン・ボグナー氏が次の撮影周回の計画を説明しながら、集まった一行は時折起こる交通渋滞の隙をついて待機。

porsche 550s on a road.
porsche 550s on a road.
a porsche 550

グロスグロックナー峠に集合した一行は、集めたクルマの追加撮影を待つ。駐車場に車を停めるだけで、珍しいポルシェのレーシングカーがずらりと並ぶ。

a porsche 550
a porsche 718 rsk

シングルシート仕様の1958年製、718 RSK スパイダー。

a porsche 550 headlight

ちなみに、いや、718 RSKには、僕も乗れない。

a porsche 550 interior

かつてフェルディナンド・アントン・エルンスト・ポルシェ(フェルディの祖父)の社用車だった550 スパイダーのレザー張りのインテリア。ダッシュボードの右側にあるハンドルは、山道を走るときにとてもありがたい。

porsche 550 and 718 on a road

なかなかどうして。

a 718 rsk
a porsche 550
718 rks interior

ポルシェ 718 RSKのすっきりとしたコックピットとミニマルなデザイン。レーシングカーなのでスピードメーターは必要なく、1万rpmまで計測できる大きなタコメーターがあるだけだ。

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a 550 fender
a rolex sub on a man's wrist.

ポルシェミュージアム550の1台を操縦していたテッド・グシュエ(Ted Gushue)氏は、素敵なヴィンテージのロレックス シードゥエラー Ref.1665を着用している。

a porsche 550 spyder and truck

ポルシェレーシングのサポートカーとして使用されているヴィンテージオペルのバンの前に置かれた550-04。

a porsche 550

ポルシェミュージアムが所有する550 スパイダーのステアリングを握る、引退したレーシングドライバー、マーク・ウェバー(Mark Webber)氏。

a porsche 550

550-004のクラシカルなレーシングカラーをクローズアップ。

a line of porsche 550s

山中に集められた一同。

porsche 550s
a porsche design chronograph 1

911と904をデザインしたF.A.ポルシェが1972年にデザインしたポルシェデザイン クロノグラフ1の現代版(そのほかのデザインもある)。

porsche 550

550 スパイダー(中央・左)と、後期の718 RSK(中央・右)。

porsche 550
porsche 550 driving on a road
porsche 550

光が薄れるなか、山を下る。ハンドルを握るマーク・ウェバー氏の手だ。なんて日だ。

a porsche 550
two porsche 550s on a car carrier

2台の550 スパイダーは、峠の底で保管するためにポルシェミュージアムのキャリアに積み込まれている。


2日目 – アルパインスタート
porsche 550s at night

グロスグロックナーでの2日目は、夜明け前に550が山の冷たい空気のなかで唸り声を上げながら始まった。僕の計画は、GPアイスレースが開催される前に、写真撮影をすることだった。このアイスレースでは、新旧100台以上のクルマが、オーストリアらしい魅力あふれるレストラン、フィッシャテール峠に隣接するアルプスの大きな駐車場までやってくるのだ。

 駐車場ではおいしいコーヒーが淹れられ、標高2000m以上の場所で飲むコーヒーは、これまででいちばんおいしいと思った。この先、GPアイスレースチームは、フェルディ・ポルシェ氏は最近改装したアルパインハット&レストラン マンケイ(Mankei)の隣に、さらにもう1ヵ所駐車場を設ける予定だ。建設は順調に進んでおり、食事、商品、宿泊などGPアイスレースのすべてを提供する物理的な場所として、グロスグロックナーのビロードのように滑らかな表面からわずか数feetの場所に、まもなくオープンする。

sunrise in the mountains

オーストリア・アルプスの日の出は圧巻! 追加撮影のためにクルマの到着を待つ。

a porsche 550

エーデルワイスシュピッツェと呼ばれる曲がり手舗装道を登り切ったところにある展望台で、撮影のために光が強くなるにつれてクルマが暖かくなっていく。

the shop at the top

エーデルワイスシュピッツェの頂上に位置するショップ。ウェス・アンダーソンの雰囲気が溢れている。

a porsche 550 on a road

フェルディ・ポルシェ氏が550 スパイダーでエーデルワイスシュピッツェの狭いワインディングを駆け上がる。

a 718 rsk on a road
an aquastar deepstar chronograph

ポルシェデザインの時計は持っていないが、アクアスターのディープスタ-

 クロノグラフはこのシーンにぴったりだと思った。そうそう、標高2571mでクルマを待っているとき、ちょっと寒かったのだ。

a porsche on a road
porsche 550s on a road

上空でドローンが撮影しているあいだに車道を戻ってくる。

a series of vintage porsches on a road
the author in the right seat of a 718 rsk

ちなみに、718 RSKには、僕も乗れない。駐車場まで送ってくれたフィリップ氏と、写真を撮ってくれたステファン・ボグナー氏に感謝。

the Grossglockner pass

もうこのような作り方はしていません。

porsche 550
a porsche 550 on the road
a porsche design watch

ブランドのシニアデザイナーが着用するポルシェデザインの7156/7157。

cars entering for the GP ice race event

合併前のAMG280GE(うっとり)の隣に、アルピーヌ A110(販売されなかった北米の人間には楽しい光景)。

a tag heuer monza

テッド・グシュエ氏は2日目のグロスグロックナーで、自動車をテーマにしたデザインの、ヴィンテージタグ・ホイヤー モンツァを披露。

a delta integrale
a delta integrale
cars in a parking lot

駐車場には、新車やビンテージカーが刻々と入れ替わり、コーヒーを飲みながら550を間近に見ようと集まってくる。

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突然の訪問
dr porsche with his watch and car

レーシンググリーンメタリックのGT3ツーリングとお揃いのポルシェデザインクロノグラフを手にするウォルフガング・ポルシェ(Wolfgang Porsche)博士。

その後、集まった観客は、フェルディの父であるウォルフガング・ハインツ・ポルシェ博士の訪問を受けた。彼はレーシンググリーンメタリックの992型911 GT3ツーリングのハンドルを握り、ポルシェデザインのカスタムビルトクロノグラフを装着して、スタイリッシュに登場した。

dr porsches 911 gt3 Touring
the caseback of dr porsches watch

 ポルシェ博士の時計は、彼のクルマと同じペイント・トゥ・サンプルカラーのダイヤルリング(カスタムビルドのクロノグラフでは初)、クルマと同じレザーストラップ、クルマのホイールと同じ形と色のワインディングローターが採用されている。雪が降るという切迫した天気予報にもかかわらず、ポルシェ博士(79歳)と彼の真新しいツーリングは山から離れず、すぐに大勢のファンが彼とユニークな色の911を取り囲んで写真を撮っていた。

dr porsche's customized Porsche Design watch
an austrian police porsche
a 996 porsche 911 turbo
a ruf convertibe
several cars in a parking lot
a detomaso pantera
a porsche 911
a porsche design chronograph 1

フェルディ・ポルシェ氏は、父親から譲り受けたポルシェデザイン クロノグラフ1の25周年記念モデルを着用している。

an outlaw porsche

 レンタカーでも、バスでも、あるいはトニーのような男の隣でも、グロスグロックナーを自分で体験する機会があれば、逃げろ、歩くなということだ。このイベントには、希少なポルシェの圧倒的なコレクションだけでなく、さまざまなエンスージアストとそのクルマが集まった。

 素晴らしいクルマ、美味しいコーヒー、そしてとんでもない道。僕は自分自身をつねったが、なぜわざわざ目を覚ます必要があるだろうか?

a ferrari 458
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ポルシェデザインの時計の詳細は、公式サイトをご覧ください。