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スイス製時計を手がける英国最大のメーカー、クリストファー・ウォードが、米国での関税負担を軽減するために、同国における法人および流通体制を見直し、米国顧客向けの価格を引き下げると発表した。同社はベル カント、トゥエルブ、ロコといったデザイン性と価格競争力を兼ね備えたモデルで知られるダイレクト・トゥ・コンシューマーブランドである。今回の取り組みにより、米国内に拠点を置く法人が同社製品の正式なディストリビューションセンターとなり、これによって関税の課される輸入時の製品価値を実質的に引き下げることが可能になる。
さらに、これまで個別に顧客へ発送していた方式を見直し、DHLとの新たな契約により腕時計をまとめて一括輸入する体制に切り替えることで、ブランドは米国向けの価格を約29%引き下げ、8月7日に39%の関税が導入される前の価格水準に戻すことができるとしている。最高経営責任者(CEO)のマイク・フランス(Mike France)氏はインタビューのなかで、今回の米国による関税導入が、同社の組織再編計画を加速させたと語っている。クリストファー・ウォードの事業と販売は“しばらく前から明らかに西(=米国)へと向かっていた”と述べ、現在では米国が同社売上の45%以上を占めるまでになっていると明かした。また、価格を製造原価の3倍以上にしないとする姿勢と透明性の高い価格設定で知られる同社にとって、今回の米国価格の見直しは必然だったとし、フランス氏は“それが我々のアイデンティティの一部なのだ”と述べている。
年間およそ5万本の時計を生産し、米国、英国、スイスに拠点を構えるクリストファー・ウォードは、その規模と体制を生かし、米国市場における価格引き下げにつながる構造改革を実現した。この措置により、同社は輸入時に時計の価値を卸売価格で申告できるようになり、それによって価格を通常より3分の1ほど低く抑えることが可能になる。この手法はロレックスやスウォッチ グループ、リシュモン傘下のブランドが、自社の米国法人を通じて行っているものと同様だ。一方でスイス製の時計を手がけ、顧客に直接販売するような小規模な独立系ブランドは、米国法人を持たないか同様の対応を取れるだけのリソースを持ち合わせていないと考えられる。
“こうした対応が可能になったのは、これまで築いてきた企業構造のおかげであり、我々は幸運な立場にある”とフランス氏は語る。同氏によれば米国の顧客は今後、同社の人気モデルであるオリジナルのチャイミングウォッチ、ベル カントを州税・地方税を除いて再び約4000ドル(日本円で約60万円)で購入できる見込みだという。クリストファー・ウォードはオンライン販売に加えて、テキサス州ダラスにブティックを構えており、まもなくワシントンD.C.郊外のバージニア州タイソンズ・コーナー近郊にもショールームを開設する予定だ。米国は今や、ブランドにとって重要な戦略市場となっている。今回の企業再編によって、“米国経済にも恩恵をもたらす。なぜなら我々はより多くの利益を米国に還元することになるからだ”とフランス氏は話す。また同社が展開するほかの市場の価格には影響がないとしている。
トランプ政権がスイス製品に突然課した39%の関税は、米国の小売業者によるスイス製腕時計の駆け込み輸入を引き起こした。多くの業者がこの大幅な関税を回避するために在庫を積み増したのである。ロレックス、オメガ、オーデマ ピゲなどのブランドは、4月に最初の関税措置が明らかになった後米国での価格を引き上げた。一方でスイス当局は米国との関係改善を図るべく、近く新たな協議案を提示する方針だとロイター通信が最近報じている。
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