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Business News 敏腕CEO、米国の独立系小売業者、そしてスイスの中古時計販売業者は関税問題にどう対応しているのか

【ニュース】ブライトリングCEOのジョージ・カーン氏、スイス政府はトランプ米大統領とより有利な合意を結べるはずだと語る。

スイスの大手時計ブランドであるブライトリングのトップ、ジョージ・カーン(Georges Kern)氏は、米国向け輸入品に先進国最高水準となる39%の高関税が課されたことを受け、当面は米国市場での値上げを見送る方針だと述べた。同時に、スイス政府が米国に新たに通商協定案の改善を提示したことについても言及した。クロノグラフモデルのナビタイマーで知られる同社だが、すでに米国の小売店向けに約3カ月分の在庫を出荷済みで、価格上昇を回避できる見込みだ。この猶予期間のあいだに、スイス政府が関税引き下げの合意を取り付けることを期待しているという。

 「この数カ月間で、米国において3カ月営業が可能な在庫を出荷し、事前に対応策を講じてきました」と、カーン氏はスイスでのHODINKEEの取材に答えた。

 「最悪の事態を想定して準備してきたが、それが現実になりました。今は3カ月の猶予があります。この期間が我々にとっても、そして政府が解決策を見いだすためにも役立つことを願っています」と述べた。

 スイスは、8月7日に発効された39%の関税に不意を突かれた。スイス政府と関係者は、欧州連合(EU)や日本と同水準の15%に関税を抑える合意を勝ち取ったと考えていたが、8月1日の期限前夜、スイスのカリン・ケラー=ズッター(Karin Keller-Sutter)大統領とドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領との電話会談で、その合意は頓挫した。現在、時計産業を含むスイス産業界は、米国向け輸出に大幅なコスト増を強いられている。米国はスイス時計の最大の輸出先であり、全輸出の約20%を占める重要市場だ。

 2017年にプライベート・エクイティ・ファンドであるCVCキャピタル・パートナーズ傘下のブライトリングでCEOに就任し、歴史ある同社の再生を指揮して年商を10億スイスフランに迫る規模へと成長させたジョージ・カーン氏は、米国との貿易条件が改善されなければ、世界的な価格引き上げは避けられないと語る。

 「仮に今後3カ月以内に解決策が見つからなければ、当然ながら値上げせざるを得ません。我々はパートナー企業と協議し、利益率の引き下げを検討しなければならないでしょう。値上げは米国だけでなく、世界全体で考慮する必要があります。なぜなら、現在好調な米国市場で39%もの値上げを単独で実施することはあり得ないからです」と述べた。

breitling watches

 スイス連邦参事会は今週、米ワシントンへの土壇場の訪問による関税猶予の獲得に失敗したことを受け、緊急会合を開いた。首都ベルンでの記者会見で、財務相も兼任するカリン・ケラー=ズッター大統領は、米国との協議は継続中であり、スイスは見直し案を提示したと述べた。最新案の詳細は明らかにしてはいないものの、不利な条件下での関税引き下げには応じない姿勢を示した。一方ギー・パルムラン(Guy Parmelin)経済相は、中国などほかの主要市場で需要が減速するなか、一部の時計メーカーが利用してきた短時間勤務(ショートタイムワーク)制度を延長すると発表した。

 米国のスイス時計小売業者のなかにも、この予想外の関税ショックを前に在庫を積み増していたところがあり、短期的には値上げを回避できる可能性がある。カリフォルニア州ベンチュラで、チャペックや独立系ブランドのミン、スピークマリン、ツァイトヴィンケルなど独立系スイスブランドを販売するコレクティブ・オロロジーの共同創業者ゲイブ・ライリー(Gabe Reilly)氏は、この事態を想定して準備を進めてきたと語る。

 「夏のあいだに通常より大量の発注を行い、すべてを8月7日の期限までに出荷しました。スイスの休日カレンダーの影響で、7月はもともと出荷が多い月なので、年末まで持ちこたえられる在庫を確保できています。話を聞いた限り、ほかの小売業者やブランドも同じ対応をしているようです。なかには追加出荷のために、夏季休暇を延期したところもありました」と述べた。

 それでも、スイスが米国とのあいだでより有利な関税合意を結べなければ、ブランド、小売業者、販売代理店、そして最終的には顧客のあいだで経済的負担をどう分担するかを検討せざるを得ないとライリー氏は言う。

「これは大きな転換点と言えるでしょう。米国でこれほど高い関税が課されるのは、ほぼ1世紀ぶりです。これは米国の消費者と企業への課税であり、スイスの輸出にとって逆風になるものです。我々は、より合理的な合意が早期に成立することを期待しています」と語った。

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コレクティブ・オロロジー共同創業者のアッシャー・ラプキン氏(左)とゲイブ・ライリー氏(右)。

 米国による高関税は、すでに業界のほぼあらゆる分野に波及し始めている。ジュネーブに拠点を置く高級スイス時計の中古販売業者、K2 Luxuryのシャーザイブ・カーン(Shahzaib Khan)氏は、スイスがより有利な合意を模索するなか、米国の顧客への時計の出荷を停止したと述べた。9月までに合意に至らなければ、輸出が必須のブランドにとって“壊滅的”な結果になると予想しており、米国からの受注が20〜30%減少し、「生産の減少、そして最終的には雇用削減が避けられなくなるでしょう」と話す。

 ブライトリングのジョージ・カーン氏は依然として、有利な合意を勝ち取れるだろうと楽観的な見方を示す。その根拠として、スイスで精製された金が米国の対スイス貿易赤字の半分以上を占めながらも、関税の対象外となっている点を挙げた。また、スイス企業が米国経済に多額の投資を行い、高水準の給与を伴う数十万件の雇用を創出している事実を、米国側が考慮すると期待している。さらに、同じく39%の関税対象外とされ、別枠扱いとなっている医薬品を輸出するスイスの製薬企業も、解決策を導くうえで役割を果たせるとの見方を示した。

 「我々は皆、分別ある人間です。互いにビジネスを行い、公平かつ妥当な形で貿易を進めたいと考えています」とカーン氏は語った。