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オリンピックも明日の閉会式をもってフィナーレを迎える。一抹の寂しさを感じつつも、8月24日から開催されるパラリンピックも控えており、日本の暑い夏はまだまだ終わらない。そんな夏の気分を盛り上げてくれる時計の一つといえば、やはり高い防水性を備えタフに使えるダイバーズウォッチではないだろうか?
その高いスペックに引かれるということはもちろんあるだろうが、ダイバーズウォッチを選ぶ際にどれだけの人がそれを基準に選んでいるのだろうか。海中での作業を支え、ダイバーの命を守るツールウォッチとして生まれたダイバーズは今や一般化し、市場には実に多彩なモデルがあふれている。その魅力は決してスペックだけではない。素材、デザイン、カラーリングなど、ユーザーの琴線に触れるポイントはもっとたくさんある。
そこで今回はHODINKEE Japanチームの各メンバー3人それぞれが今の気分や好みから欲しいダイバーズウォッチを選んでみた。ときにはこんなパーソナルな視点で時計を選んでみても、きっと楽しいと思う。
小さめサイズが意外と使いやすい。40mm以下のダイバーズウォッチ
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル300
汗をたくさんかく夏の時期。個人的に大きく重い時計はつけたくない(最近は夏に限らず)のだが、高い防水性を確保するため頑丈に作られるダイバーズウォッチは基本的にサイズが大きくなりがちだ。しかし、探してみると40mm以下の小振りなモデルもいくつかリリースされている。ブランドのコミュニケーションとしては女性がつけることを想定しているものが多いが、もともと機能的でがっしりとした作りの時計であり、何よりジェンダーニュートラルなファッションが当たり前の今は、小振りな時計を男性がつけても違和感はない。そんなことから40mm以下、小さめサイズのダイバーズウォッチを選んだ。
なかでも引かれたのが、タグ・ホイヤーが2021年の新作として投入したアクアレーサー プロフェッショナル300だ。43mmに加えて36mmもラインナップされており、ダイヤルデザインに若干の違いはあるがそれ以外に両者に大きな違いはない。どちらもセラミックベゼル、SSケースとブレスレットの現代的な外観で、防水性は300mと小さめサイズでも本格的。12角形ベゼルに8角形のインデックスを合わせ、36mmモデルはダイヤルには波模様の仕上げ(43mmモデルは水平パターン装飾)を施すなど、程よい遊び心を加えている。
特に魅力的だったのは、日付表示の拡大レンズが風防の内側に設けられていることと、クラスプに工具なしで微調整ができるマイクロアジャストシステムを採用している点だ。このシステムによって1.5cmまでのサイズ調整が可能で、しかも手首から時計を外すことなく調整できるところも扱いやすい。ダイバーズウォッチとしての確かなスペックを備えつつ、品よくまとまっているのがこの時計最大の特徴だと思っている。上の写真のように時計単体でつけてもいいだろうし、小さいサイズならバングルなどのアクセサリーと合わせてもそれほどゴテゴテとせずに楽しめると思う。
Ref.WBP231D.BA0626 33万5500円(税込) SSケース、SSブレスレット。36mm径。300m防水。自動巻き Cal.5。そのほかの詳細はタグ・ホイヤー公式サイトへ。
ブライトリング スーパーオーシャン ヘリテージ '57 パステル パラダイス
この時計は、昨年リリースされたスーパーオーシャン ヘリテージ '57(42mm)のバリエーションとして今年登場したモデルだ。デザインはほぼ同じだが、サイズは38mm。インデックスの形が若干異なり、42mmモデルはくさび型インデックスの先端がフラット、38mmモデルは尖った形状になっている。
パステル パラダイスと名づけられたカプセルコレクションで、女性がつけることを前提にしたモデルではあるが、実際につけてみると男性でも問題なさそうだ。「オールホワイトのカラーリングは女性っぽいかな?」とも感じたが、アイスラテ、ミントグリーン、アクアマリンなど豊富なカラーバリエーションから選ぶことができる。個人的には選んだ3本のうち最も好みのサイズ、フィット感だった。
Ref.A10340A71A1X1 56万6500円(税込) SSケース、カーフストラップ。38mm径。100m防水。自動巻き Cal.ブライトリング10。そのほかの詳細はブライトリング公式サイトへ。
ロンジン レジェンドダイバー
こちらの時計は、オールホワイトカラーでまとめたロンジンのレジェンドダイバーだ。サイズは36mm。公式サイトを見てみると、明確に女性向けとは言及していないものの、やはりレディスウォッチに分類されている。とはいえ、基本的なスタイルはスタンダードな42mmのレジェンドダイバーとまったく同じ。2つのリューズを備えたインナー回転ベゼルのクラシカルなダイバーズウォッチであり、すんなりつけることができた(ちなみに搭載ムーブメントは42mmモデルとは異なる)。
ただし、ホワイトマザーオブパールダイヤルを使用しているため、さすがにフェミニンすぎるかもしれない。だが、安心して欲しい。バリエーションとしてブラックラッカーダイヤルのメッシュブレスレット仕様(L3.374.4.50.6)とレザーストラップ仕様(L3.374.4.50.0)もある。今回撮影はできなかったが、これならまったく抵抗なくつけられそうだ。
Ref.L3.374.4.80.0 27万9400円(税込) SSケース、レザーストラップ。36mm径。30気圧防水。自動巻き Cal.L592。そのほかの詳細はロンジン公式サイトへ。
存在感を放つ42mmダイバーズウォッチたち
ジャガー・ルクルト ポラリス・マリナー・メモボックス
腕時計を選ぶときにサイズ感やつけ心地は、非常に重要な要素ですよね。僕が普段時計を購入するときには、袖の下に収まるかどうかという点も気にするポイントのひとつですが、特に腕の露出が増える夏の半袖時期は、むしろ存在感のある時計が楽しいのではないかと思っています。そこで今回は、インパクトがありながらも15.5cmと比較的細い手首の僕でも快適に着けられるサイズ(だと個人的に思っている)である、42mmの時計を選んでみました。
一本めに選んだのは、印象的なブルーのダイヤルを備えたジャガー・ルクルトのポラリス・マリナー・メモボックス。ジャガー・ルクルトと聞いて、ダイバーズウォッチを真っ先に思い浮かべ方は多くないかもしれませんが、実は海とのつながりの深いブランドです。同社は、1959年にダイバーが海から上がる時間を知らせるための時計として、メモボックスと呼ばれるアラーム付き腕時計を開発。その後、1968年に発表された回転式インナーベゼルとアラームを搭載し、トリプルケースバック仕様のメモボックス・ポラリスへと発展させ、さらに2020年に登場したこのポラリス・マリナー・メモボックスへと進化させました。
サテン仕上げと鏡面仕上げを組み合わせた直径42mmのステンレススティール製ケースとブレスレットを備えた本機は、オリジナルデザインを継承しながら、大きくアップデートされています。防水性能は30気圧に高められ、初めてトランスパレントケースバックが与えられました。内部に搭載するのは、2008年に発表されたCal.956。これまでの同キャリバーは、クローズドケースバックにワイヤー式ゴングが取り付けられる形でしたが、トランスパレント化に伴いゴングをケース側に取り付ける新設計となっています。
アイコニックなメモボックス・ポラリスの歴史とクラシックなデザインを受け継いだポラリス・マリナー・メモボックスは、ブルーをベースにオレンジのアクセントが施されたモダンなスタイリングです。しなやかなブレスレットはホールド感がよく快適なつけ心地を実現しています。いつでもダイビングに連れていける高性能ダイバーズウォッチでありながら、シティユースにも優れ、プロフェッショナルダイバーから普段海に潜ることはない僕のようなデスクダイバーまで誰もが満足できるおすすめの1本です。
Ref.9038180 205万9200円(税込) SSケース、SSブレスレット。42mm径。30気圧防水。自動巻き Cal.956AA。そのほかの詳細はジャガー・ルクルト公式サイトへ。
パネライ サブマーシブル ブルー ノッテ
パネライの最新作サブマーシブル ブルー ノッテは、イタリア語でナイトブルーを意味するその名のとおり、ブルーのサンレイ文字盤とブルーセラミックがインサートされた逆回転防止ベゼルが特徴的なモデル。サブマーシブル初のスティールブレスレット採用モデルであり、リューズプロテクターの意匠が各リンクに反映されたデザインです。重厚感のあるケースですが、ブレスレットに厚みをもたせているためバランスがよく安定感があります。ブレスレットは、特許取得済みのインターチェンジャブルストラップシステムが採用されているため、付属のベルクロクロージャーのブラックスポーテック™製ストラップに気分に合わせて付け替える楽しさもポイントです。
パネライといえば、デカ厚のイメージもあり、自分には合わないのではないかと思っている方もいらっしゃるかもしれません。僕もそんなひとりでしたが、パネライの42mmのモデルは身につけやすいモデルが多くラインナップされていることがわかりました。スペックシートの数値だけをみて判断しがちですが、普段注目していないサイズの時計であっても試してみることで実は自分にぴったりのモデルに巡り会えるかもしれません。
Ref.PAM01068 132万円(税込) SSケース、SSブレスレット。42mm径。300m防水。自動巻き Cal.P.900。そのほかの詳細はパネライ公式サイトへ。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア ダイバー
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア ダイバーは、真のラグジュアリースポーツウォッチの元祖となったロイヤル オークのダイバーズモデルとして2005年に登場しました(元々はロイヤル オーク オフショア スキューバの名で発売)。その後2010年に前作モデルが登場し、初代登場から16年後の2021年に本作へとアップデート。新しいデザインをまとった本機は、ブラック仕上げの22Kピンクゴールド製巻上げローターを備え、60時間のパワーリザーブを誇る新型の自社製自動巻きCal.4308を搭載しています。
新デザインやムーブメントも魅力的ですが、僕が最も気に入ったのは、新開発のストラップシステム。工具を一切必要とせず自分で交換できる仕組みはひとつのトレンドですが、バックルまで交換できるものは、他に例を思いつきません。このシステムによって様々なスタイルをこれ1本で楽しめるのはもちろん、冷たい海でのダイビングで厚手のスーツ着用のためにXLサイズのストラップに付け替えたいダイバーたちにとっても魅力的に映るのではないでしょうか。
Ref.15720ST.OO.A009CA.01 280万5000円(税込) SSケース、ラバーストラップ。42mm径。300m防水。自動巻き Cal.4308。詳細なスペックは、記事「オーデマ ピゲ ロイヤル オーク オフショア ダイバー 細部にアップデートが施された2021年新作」参照。そのほかの詳細はオーデマ ピゲ公式サイトへ。
手持ちの時計にあえて1本プラスするなら? ひとクセダイバーズたち
ブランパン トリビュート トゥ フィフティ ファゾムス ノー ラディエーション リミテッド エディション
いつも人とかぶらないものを探している僕にとって、ダイバーズウォッチというのは意外にも豊かな選択肢から選ぶことのできる楽しいカテゴリーだった。王道・鉄板のロレックス サブマリーナーという存在がありながら、ダイバーズウォッチは過去に世界各国の軍に納入されていた出自を持つモデルも多く、それぞれに素敵なストーリーとデザインとを現代に伝えている。
このブランパン フィフティ ファゾムス ノー ラディエーションは今年復刻されて話題を呼んでいるが、ラジウム入り放射性発光塗料を使用していないことを示す9時位置のロゴが最大の特徴だ。現代において、例えば環境に配慮して作られた時計も多く登場しているが、このブランパンのようなデザインになることはまずないだろう。1960年代にドイツ海軍に納入された、その時代がこの"アバタもエクボ"のようなロゴを生んだと言っても過言ではないと思う。
もちろん本機の内部には、ブランパン マニュファクチュールによる最新のムーブメントが格納されている。自社Cal.1151はツインバレル搭載で約100時間ものパワーリザーブを誇りながら、わずか3.37mmの厚みを実現している、まさに高級キャリバーである。このキャリバーのサイズも寄与して、ダイバーズとしては小ぶりな40.3mm径としているのも非常に好感が持てる。つけやすく、現行モデルでは味わえない過去の刹那に存在したデザインを持つこの時計は、あえてプラスする価値のある1本と推薦したい。
Ref.5008D-1130-B64A 152万9000円(税込) SSケース、ラバーストラップ。40.3mm径。30気圧防水。自動巻き Cal.1151。世界限定500本。そのほかの詳細はブランパン公式サイトへ。
チューダー ブラックベイ フィフティ-エイト ブロンズ
このところブロンズウォッチが活況を呈している。個人的に、金色の時計は好きなためこの状況は好感しているのだけれど、なかでもこのブラックベイ フィフティ-エイト(以下BB58)のブロンズは赤みが強くなく、上品な発色が好みだ。チューダーは5年前よりアルミニウムブロンズ合金を用いているが、この素材は経年変化が比較的ゆっくりであるため他ブランドのブロンズウォッチより扱いやすい点も魅力かもしれない。3・6・9の"エクスプローラー"ダイヤル、改良されたブレスレットなど、他のブラックベイと比べても個性がプラスされているこの時計は、BB58ユーザーである僕の心をも揺さぶっている。
Ref.M79012M-0001 51万4800円(税込) ブロンズケース、ブロンズブレスレット。39mm径。200m防水。自動巻き Cal.MT5400。そのほかの詳細はチューダー公式サイトへ。
オメガ シーマスター ダイバー300M ブラック ブラック
今年は実にたくさんのオメガを紹介してきた。Cal.3861を搭載したスピードマスターにシーマスター 300など主役級のモデルがアップデートされたことは大きなニュースだし、実際魅力的な時計たちだ。ただ、僕としてはシーマスターのダイバーズウォッチとしてのあり方を根底から覆したような、このシーマスター ダイバー300M ブラック ブラックに心を掴まれてしまった。果たしてこの時計がダイビング中に見やすいだろうか? オメガは、レーザーで波模様を施したブラックセラミック文字盤、針とインデックス、ブラックセラミックベゼルそれぞれに異なった仕上げを施して視認性を確保した、と説明するがこんな技術の贅沢(無駄)づかいはなかなかない。デザインとしては定番のシーマスター ダイバー 300Mが完全にアバンギャルドに変身し、彫刻のように象られたベゼルの質感に強烈な個性を感じ取れるだろう。
Ref.210.92.44.20.01.003 102万3000円(税込) セラミックケース、ラバーストラップ。43.5mm径。300m防水。自動巻き Cal.8806。そのほかの詳細はオメガ公式サイトへ。