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世界一の資産家と言われるベルナール・アルノー氏の息子、フレデリック・アルノー氏は、タグ・ホイヤーのCEOに就任したとき、まだ25歳だった。ゴルファーであり、任天堂のファンであり、フランスの高級ファッション企業LVMHの御曹司である彼が就任してから2年。業界のリーダーであるジャン-クロード・ビバー氏とジャン-クリストフ・ババン氏のあとを引き継ぐ使命を担っている。
今週、彼のブランドは、オミクロンの発生によってオンライン開催されたイベント、LVMHウォッチウィークに参加している。アルノー氏はHODINKEEとのビデオ通話に時間を割き、先日発表された新作、オータヴィアとアクアレーサー プロフェッショナル 200について、そしてそれ以外にも多くを語ってくれた。
HODINKEE:フレデリックさん、タグ・ホイヤーの親会社LVMHは、まもなく2021年の決算を報告する予定ですね。第1四半期から第3四半期までの決算では、昨年1月のティファニー買収を考慮しても、2020年、2019年を大きく上回る伸びを示しました。今年は記録的な年になると予想しているのでしょうか?
フレデリック・アルノー:それについてはコメントできませんが、時計・宝飾品部門(タグ・ホイヤー、ウブロ、ブルガリ、ゼニス、ティファニー、フレッド、ショーメ、レポシ)は非常に好調に推移しています。ティファニーが部門に統合されて1年目です。しかし、組織的には、非常に力強い成長も見られます。LVMH内部のダイナミズムが強いのです。
そのなかには、価格の上昇も含まれているはずですね。ステファン・ビアンキ氏によると、現在、平均価格は3000スイスフラン(約37万5000円)に近づいているそうです。タグ・ホイヤーは長いあいだ「初めての高級時計」という立ち位置のブランドでしたが、そういった人たちを置き去りにしてしまう危険はないのでしょうか?
私たちの時計の大半は、一生モノの時計だと思うんです。何年も、何十年も、その人の時計になるのです。そういう人たちが、私たちのターゲットなのです。
では顧客は何を求めているのでしょうか?
彼らは、タグ・ホイヤーの時計を購入するとき、それが長持ちし、時代遅れにならないこと、そしてその価値を維持することに安心感を求めています。一貫性は非常に重要であり、私たちはそのために投資しています。40年、50年前と同じデザインの時計があるということは、お客様が大金を使うときに安心感を与えるものです。だからといって、創造性や革新性、新しいデザインや技術を取り入れないわけではありません。私たちはそこにも投資しています。
ライアン・ゴズリング氏は、現代の一生モノ時計の購入者の顔ですか?
この先何十年もスティーブ・マックイーンに頼るわけにはいかないわけです。ライアンはブランドにぴったりで、彼の世界ではアイコンです。私たちは彼に企画を持ちかけ、その経緯はとても本格的でした。彼はブランドのことをよく知っていて、私たちの世界に情熱を持っていた。こんなことは初めてでした。
業界の傾向として、数量は激減しているのに価格は上昇している、つまり業界の帳尻は合っていますね。タグ・ホイヤーの価格帯が上がっているということは、御社の生産数量が下がっているということでしょうか?
量を減らすつもりはありません。価値の伸びを伴った数量の伸び代があると信じています。私たちは製品の価値に投資しており、平均価格は今後数年のうちに上昇するでしょう。しかし、それは数量の減少を伴うものではありません。
時計の価値に投資するとはどういうことですか?
これは本当に大事なことです。私たちの限定モデルやアイコンは高い値段で再販されるので、この価値に長期的に投資することになります。しかし、バランスを取る必要があります。手に入りにくくなるようなことで、お客さまをイライラさせないことが重要なのです。時計が投機の対象にならないようにすること、そして、お客様がそのブランドを愛し、デザインを愛し、身につけたいと思うからこそ、時計を購入することが重要です。そこに投資することが優先されるのです。
これは、より高い料金となる、自社製ムーブメントを搭載した時計が増えるということでしょうか。
はい。ホイヤー02のリファレンスが増え、その数量も増えています。これらの需要は強いです。
そのなかで、タグ・ホイヤー リサーチ インスティチュート(TAG Heuer Research Institute)はどのような役割を担っていくのでしょうか。
私たちはイノベーションの戦略を持っています。並外れたイノベーションを望んでいるのです。それは、大量に投入するコア製品に影響を与えることになります。お客さまがいつも目にするわけではないけれど、インパクトのある信頼性と静かなイノベーションに取り組んでいます。しかし、それにとどまらず、もっと目に見えるイノベーションにも取り組んでいます。LVMHウォッチウィークでは、まだリサーチ部門から何も出ていませんが、ジュネーブのWatches and Wondersでは、画期的なイノベーションをお披露目する予定です。
今週の話題といえば、60周年記念のオータヴィアコレクションと、新しいアクアレーサー プロフェッショナル200を発表されましたね。これらは製品戦略上、どのような位置づけになるのでしょうか?
今回のリリースでは、その柱を明確にし、強化することを戦略としています。現在、ラインは少なくなっていますが、より強固なものになっています。アクアレーサーは独自の一貫した世界観を持っているプロダクトです。昨年発表したアクアレーサー プロフェッショナル 300のメッセージは、アクアレーサー 200にも十分に適応します。また、2年前と比べると、全体的にリファレンスが少なくなっています。
オータヴィアについてお聞かせください。5年前のオータヴィア カップに続いてラインがリブートされ、絶賛された時計がありましたが、その後コレクションから姿を消しました。なぜですか?
私は、過去をそのままコピーすることなど信じていません。おっしゃっている時計は、歴史的なものにあまりにも近いコピーでした。今年は、オータヴィアとは何かという核となる要素を残しています。ですから、今回の新作発表の際は、自動車と非常に親和性の高いフライバックムーブメントと、航空や旅行と非常に密接なGMTムーブメントを用意しました。これがオータヴィアの世界なのです。
ゴルフエディションや昨年完売した任天堂限定モデルを推し進め、コネクテッドに対する大きな信奉者であることが証明されましたね。しかし、高級スマートウォッチというカテゴリーに本当に未来があるのでしょうか?
そうですね、私たちはこのセグメントでの存在感を強く信じていますし、コネクテッドは私たちのコアとなる柱の一つです。コネクテッドには潜在的な創造性があり、特にスポーツとヘルスという分野において常に改良を重ねています。限定モデルもその一部となりますが、メインとなるのはコアプロダクトです。
なるほど。でも、2000本の任天堂版を超えて、実際にこのハイエンドスマートウォッチを買う人たちはいるのでしょうか?
毎日何十万人もの人がこういう時計を身につけていることを私たちは知っています。2015年に発売した時計を、今でもたくさんの方が身につけているのです。アメリカとイギリスの市場が最も強く、日本や韓国などゴルフが浸透しているところならどこでも、私たちのコアゴルフ製品の強さがあるからです。しかし、我々の価格帯は競合他社よりもはるかに高いので、市場シェアは見ていません。それは、時計としてのレベルの高さと、最高の性能を持つテクノロジーを備えているからです。私たちは、品質勝負なのです。
先週、全豪オープンで大坂なおみ選手が新作をお披露目しました。シナジー効果があったと思いますが、なぜ、彼女はコネクテッドウォッチをつけていなかったのでしょうか?
そうしようとしましたが、プロとしてプレーしている間は試合中にコートの外で他人とコミュニケーションを取ることが許されないため、コネクテッドウォッチを身につけることはできません。これは通信機器とみなされることになるのです。
最近、時計製造におけるサステナビリティが盛んに言われていますが、タグ・ホイヤーのように若い層にアピールするブランドには、特に関係の深いテーマだと思われます。コネクテッドウォッチには、すぐ旧式化する要素がありますが、その点はどのように考慮していますか?
技術が向上することで、業界が機能するビジネスなのです。ここからは、コネクテッド製品の耐久性に投資するため、ゆっくりとしたペースで改善を打ち出していくことになります。しかし、新しいバッテリー技術が登場すれば、それを製品に統合する必要があります。お客様がお持ちの時計をリサイクルし、安価で別の時計に交換することができます。しかし、機械式時計にアップグレードできる選択肢はもうありません。
今年は、高級時計業界がNFTやメタバースを取り入れる年だと多くの人が言っています。噂では、あなたも参加する予定だとのこと。それは本当ですか?
そう、私たちはNFTの世界を強く信じていますし、タグ・ホイヤーはここでも正統性を持っています。これからワクワクするようなプロジェクトが控えています。タグ・ホイヤーはアバンギャルドで革新的であることをモットーとしています。私たちはコネクテッドウォッチを展開するハイテク企業であり、このNFTの世界やメタバースに存在するブランドを持っています。そして、適切なストーリーを考え、それを実現するためのチームもあります。
ロビン・スウィッシンバンク(Robin Swithinbank)氏は独立系ジャーナリスト。HODINKEEにドバイ・ウォッチ・ウィークやスウォッチなどについて執筆している。ニューヨーク・タイムズ・インターナショナル、フィナンシャル・タイムズ、GQ、ロブ・レポートなどに定期的に寄稿。また、彼はハロッズのコントリビューティング・ウォッチエディターでもある。
このインタビューはわかりやすく編集されています。