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Hands-On ローラン・フェリエ セリエ アトリエ クラシック オート サンドストーンを実機レビュー

ローラン・フェリエの時代の再来か。はたまたずっとそこにあり続けたブランドに、再び脚光が当たるときがきたのか。

Photos by Mark Kauzlarich

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先週のGeneva Watch Daysにおいて、ローラン・フェリエはひっそりとクラシックのケース形状を持つ新しい時計を発表した。控えめな見た目を持つその新作はセリエ アトリエコレクションの一環としてわずか20本限定でリリースされたが、私にとってこのフェアのなかで最も印象に残る時計のひとつとなった。

Laurent Ferrier Classic Auto

 控えめなデザインであることは悪いことではない。この慎み深さ、そして一貫した品質と細部へのこだわりこそがローラン・フェリエが多くのファンを引きつけた理由である。リッチ・フォードンがその紹介記事で指摘したように人々は1度は同ブランドの時計を求めたものの、ある時期からローラン・フェリエ以外のブランドに目を向けるようになった。控えめであることは、コレクターの大半にとってやや流行遅れとなってしまったのである。リッチのアナロジー(推察)を借りるなら、今年はローラン・フェリエが再びスポットライトを浴びるために必要な年だった。クラシック ムーンのリリースと並び、しばらくぶりにこのブランドに興奮を覚えた。 

Laurent Ferrier Classic Auto

 正直なところ、クラシック オート サンドストーンがなぜこれほどまでに素晴らしく映るのか、そしてなぜデイト表示のない同じくカッパー色/サーモン色のクラシック マイクロローターと比較してなおこのデザインのほうが優れているように感じるのかは分からない(個人的にはデイト表示のない時計のほうが好みである)。昨年レビューしたスポーツ オートよりも、このクラシックな文字盤にある“エアインテーク”風のデイト窓のほうが好きだ。十字が入ったセクターダイヤルのバランスが、ヴィンテージを感じさせる文字盤の雰囲気とうまく調和している。この文字盤には18Kホワイトゴールド(WG)のインデックスとアセガイ(槍)型の針、プリントで施されたミニッツトラックが見られ、3時位置にはバーインデックスがない代わりにボール型のインデックスが配置されている。

Laurent Ferrier Classic Auto

 これはローラン・フェリエのセリエ アトリエの第6弾となる時計である。ローラン・フェリエと聞いてこのケースを思い浮かべる人も多いと思われるが、磨かれた“カレ(小石)”のように丸みを帯びたケースを引き続き採用している。柔らかなエッジ、曲線的なベゼル、そしてラグにおける滑らかなラインが特徴的だ。これがブランドのクラシックなデザインであることは承知しているし、私たちが手にしているのはヴィンテージのパテックではないことは理解している。しかし時折、より強調されたラグやブラッシュ仕上げが組み合わされたデザインだとどのように見えるのかと考えることがある。だが、たとえそのようなデザインがあったとしてもそれはローラン・フェリエの時計ではないだろう。

Laurent Ferrier Classic Auto

 ケースはステンレススティール(SS)製で、スポーティかつ軽やかな印象を与える。ケースの幅は40mmと現代的なサイズ感であり、厚さは11.94mmであるが特にずっしりとした重厚さを感じることはなかった。横から見たラグの先端が丸みを帯びているなど、ヴィンテージウォッチのデザインからインスピレーションを得た細かなディテールは、今ではレジェップ・レジェピのミニット・イネルテなどのモデルにも見られるようになった。このように、全体としては非常に快適な装着感を提供している。

Laurent Ferrier Classic Auto
Laurent Ferrier Classic Auto

 この時計はスイスレバー脱進機とプラチナ(Pt)製のマイクロローターを搭載した自動巻きのCal.LF270.01を搭載している。このムーブメントは控えめでありながら美しい。手仕上げによる139の加工プロセスが施されており、内外角の面取りにサーキュラー・グレイン、コート・ド・ジュネーブ、ローターに施されたシェブロンやフェザーの模様がその美しさを際立たせている。

Laurent Ferrier Classic Auto

 個人の好みによる部分もあるが、クラシック マイクロローター “オータム”にはデイト表示がなく、ナチュラル脱進機が搭載されているために新しいクラシック オートよりも約150万円ほど高い。Cal.LF270.01がレバー脱進機を採用したのは、スポーツ オートに搭載するにあたり最も耐衝撃性が高かったためだ。しかしナチュラル脱進機のテンプにダブルダイレクトインパルスを搭載したことは、ローラン・フェリエが時計史に名を残すべき功績のひとつである。ブレゲは摩擦の少ないデテント脱進機の仕組みと、トーマス・マッジ(Thomas Mudge)が1755年に発明したレバー脱進機の自己稼働機能を組み合わせるアイデアを持っていた。ジョージ・ダニエルズ(George Daniels)やデレク・プラット(Derek Pratt)などほかの時計師もそれぞれのソリューションを見つけたが、ブレゲのアイデアを完全に実装したのはフェリエ氏だけである。こうして摩擦が少なく、より高精度な時計が生まれた。

Laurent Ferrier Classic Auto

 単一の主ゼンマイ(72時間のパワーリザーブ)と輪列(ジョージ・ダニエルズのスペース トラベラーでは輪列はふたつ見られた)を備え、ブレゲの時計のようにふたつのガンギ車が噛み合い、ひとつ目のガンギ車がふたつ目を駆動する。これは少々専門的な話ではあるが、ローラン・フェリエの歴史においてナチュラル脱進機がいかに重要であるかを示している。また、あなたがその歴史を手首に刻みたいのであれば、あるいはデイト表示が日常使用のうえでより実用的かどうかを考慮したいのであれば、この違いを考慮する価値は十分にある。

Laurent Ferrier Classic Auto

 この違いは、私がこの時計について抱くもうひとつの重要な問題点を浮き彫りにしている。まず5万スイスフラン(日本円で約845万円)という価格は、たとえこの品質であってもSS製ケースの時計にしてはやや高いように感じられる。手巻きのクラシック オリジンはスイス製レバー脱進機を搭載しておりデイト窓はなく、かなり魅力的なグレード5チタンケースを持ちながら価格は599万5000円(税込)である。先に述べたようにSS製のクラシック マイクロローターはわずか150万円ほど高いだけで、もう少し時計製造における“技術的な凄み”を得ることができる。フルチタンケースとブレスレットを備えたスポーツ オートは871万2000円(税込)だ。こうした価格を考慮すると、この時計は4万スイスフラン(日本円で約675万円)に近い価格であるべきだと考えていた。

Laurent Ferrier Classic Auto

 これは昨今、コレクターからローラン・フェリエに対してよく聞かれる意見である。ブランドが優れた時計を作っていないわけではないが、価格が人々の許容範囲の限界に近いということだ。今回の場合、セリエ アトリエの限定発売によるプレミアムが価格に反映されている。しかしこの時計がもっと手ごろな価格でコレクションの一部として発表されていたらと思わずにはいられない。とはいえ20人の購入者にとってはその価値があるのだろう。この時計が、ローラン・フェリエが再注目される時代の序章を担うものであることを願っている。

Laurent Ferrier Classic Auto

ローラン・フェリエ セリエ アトリエ クラシック オート “サンドストーン” Ref.LCF046.AC.B2G1。直径40mm、厚さ11.94mmのSS製ケース、30m防水。“サンドストーン”風サーモンカラーのラッカー仕上げ文字盤、18KWG製の針とインデックス、時・分表示とスモールセコンド、デイト表示。Cal.LF270.01、2万8800振動/時、パワーリザーブは72時間。ダークブラウンのカーフレザーストラップ、同色のアルカンターラ製ライニング。価格: 5万スイスフラン(日本円で約845万円)。限定20本。