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Editors' Picks Geneva Watch Days 2024で見つけたお気に入りの時計

これが私たちのお気に入りだ。

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先週、数名のHODINKEEエディターがスイスへ飛び、毎年8月末に開催されるGeneva Watch Daysに参加した。Geneva Watch Daysは多様なブランドとその最新作が披露されるイベントだ。その多くはこちらで紹介している。数日間ジュネーブでの現地取材を行い、残った編集チームはInstagramやメールで最新情報を注意深く見守っていた。本記事では今年の夏のジュネーブショーで、各エディターが特に気に入ったモデルを紹介する。

 さらにボーナスとして動画も用意した。現地でのチームの様子や、彼らが目にしたものをぜひご覧いただきたい。

ベルネロン(Berneron) ミラージュ 34mm タイガーズアイ
By Benjamin Clymer

 正直に言うと、私はこれまで1度もGeneva Watch Daysに行ったことがない。なぜかは分からないが、毎年タイミングが合わず参加できないのだ。だが最新情報には常に目を光らせている。なぜなら、それが私の仕事だからだ。今年は現地に4人のエディターが参加した。そして今回の開催は“非常に充実していた”と言わざるを得ない。

 私見で何よりも強く印象に残ったのは、ウィリアム・マッセナの新しいコラボレーションモデルと(ジョナサンの選出)ダニエル・ロート トゥールビヨン(トニーの選出)、ジェブデ・レジェピの新しいグリーンダイヤルのミニット・イネルテ(Minute Inerte)、そして私の選んだシルヴァン・ベルネロンの最新作だ。これは、すでに素晴らしいミラージュウォッチに、まったく新しいキャリバーの搭載と、見事なタイガーズアイダイヤルを備えた34mmモデルである。明確にしておきたいのだが、この時計については正式なリリースが来週のため、まだ記事にはしていない。しかしこの時計はSNS上ですでにちらほらと姿を見せている。今回特別に許可を得たところ、ベルネロンも快諾してくれたため、このレポートに含めることができた。

34mm、新しい(シェイプ)ムーブメント、そして1枚の石からつくられたストーンダイヤル!

 ベルネロンと彼の最初のミラージュウォッチは、世界中の洗練されたコレクターたちからすでに支持されている(男女問わず幅広い層に)。だがこの2作目のリリースは私をさらに興奮させた。サイズが小さくなり、まったく新しいキャリバーを搭載し、ストーンダイヤルを採用している。この新しいキャリバーは215と呼ばれ、とても薄く、最大約3日間のパワーリザーブを実現している。前作同様、キャリバー自体が非対称のケースシェイプに合わせてデザインされており、ベルネロンいわくこのデザインは同サイズの伝統的なラウンドムーブメントよりも性能を向上させるそうだ。

 それはそれで素晴らしく、時計の製造方法に関心がある私のような人間にとっては非常に重要なポイントだ。しかしこの時計が本当に魅力的なのは、よりバランスの取れたケースである(34mmだが、個人的には36〜37mmのように感じる)。そして何より圧巻なのは、見事なストーンダイヤルだ。ホワイトゴールドにはアフガニスタン産のラピスラズリ、イエローゴールドには南アフリカ産のタイガーズアイが使われており、特に私は後者のモデルが気に入っている。この時計の凄いところは、スモールセコンドのレジスターですら1枚の石から手作業で彫り出されているところだ。通常、ストーンダイヤルのレジスターは別々に切り出されるものだが、これは非常にクールで繊細かつ美しい。

 ベルネロンはすでにWGとYGのミラージュ 34mmの注文を受け付けているようだ。価格は4万8000スイスフラン(日本円で約815万円)で、2025年第4四半期からデリバリーを予定している。本当にカッコよくて美しい時計だ。

 近日中にマークからの追加の写真と、トニーによるストーリーもお届けする予定である。

アルビスホルン×マッセナLAB(Albishorn×Massena Lab) マキシグラフ
By Jonathan McWhorter

 マキシグラフは、1930年代(最初のヨットレースがジュネーブ湖で開催された時代)にもしモダンなレガッタタイマーが存在していたらどのような姿だったのか、という問いに対する答えを模索した時計です。この時計には39mmのスティールケースが採用されており、コンケーブ型のSSベゼルは、摩擦を利用して双方向に回転できる仕組みになっています。ケースはラグの内側を含め、ほぼすべてのエッジにポリッシュ仕上げの面取りが施された、高級感のある仕上がりです。この細部へのこだわりはサファイア風防にもおよんでおり、ケースに向かってカーブする部分であっても、視覚的な歪みがまったく生じないよう精密に加工されています。アルビスホルンはサファイアの利点を持ちながら、アクリル風防の見た目と質感を再現したいと考えた末、サファイア風防にありがちな白いリングが現れないよう工夫をしました。

 内部には、ユニークなレガッタタイマーが特徴の自社製自動巻きキャリバーを搭載。このタイマーは、9時位置にある赤いアルマイト加工のモノプッシャーで操作しますが、これは親指で押すのに最適な位置とされています。同様にリューズの位置も手首につけたまま操作しやすく、かつ邪魔にならないように配置されています。ジュネーブでこの時計を短時間試着した際、その主張が的を射ていると体感しました。操作中、レトログラード式のレガッタタイマーはカウントダウンがゼロになると自動的に解除されますが、秒針はそのまま動き続け、タイマーがリセットされることはありません。さらにタイミングを計測していないときには、4時位置のインジケーターで時計が動作していることを確認できます。

 この時計には心を奪われました。私見ですが、これは“ヴィンテージ風デザイン”の成功例だと思います。特定のディテールが気に入ったわけではなく、アルビスホルンが持つデザインプロセス全体の視点に引かれました。意図的なデザインに弱い私にとって、マキシグラフはその点で群を抜いています。時計のあらゆる要素が慎重に検討されたことがひしひしと伝わってくるのです。彼らはこのデザインを“イマジナリーヴィンテージ”と呼んでいます。それはまるで、時計が少しだけ違う形で歴史を歩んできたかのような感覚を与えます。聞いた感じ気まぐれに思えるかもしれませんが、実際には深く考え抜かれた判断と、興味深いウォッチメイキングがその背後にあると感じました。そうそう、言い忘れていましたが、これは約5000ドル(日本円で約70万円)で手に入ります。

オリス(Oris) ダイバーズ65 LFP リミテッドエディション
By TanTan Wang

 すでに書いた時計を選ぶのは簡単すぎるかもしれないが、オリス ダイバーズ65 LFP リミテッドエディションを手に取ってレビューできるよう、特別にサンプルをリクエストしたのには理由がある。あまりネタバレはしたくないためぜひ記事を読んでもらいたいが、オリスが最も輝くのは、楽しさに全力を注いだときだと思う。それに加えてLFP リミテッドエディションは、まさに夏の終わりのリリースにふさわしい。

 ダイヤルに手書き風の文字を使うコンセプト自体は新しいものではないが、この時計での使い方は本当に見事だと思う。気まぐれで遊び心がありながらも、嫌味がなく、ブランドがロゴまで手書き風のスクリプトに合わせている点にデザインへのこだわりを感じる。多くのブランドにおけるデザイン部門は、自分たちのグラフィックアイデンティティを絶対に守ろうとするが、オリスは自分たちをあまり堅苦しく考えていないことが伝わってくる。さらに素晴らしいのは、このデザインが優れた目的のために行われていることだ。

M.A.D. エディション(M.A.D.Editions) M.A.D.1 S
By Mark Kauzlarich

 新しいM.A.D. エディション M.A.D.1 Sは、まさにGeneva Watch Daysのようなイベントで登場するのにふさわしい時計だ。同イベントは一般の人々にも開かれているが、基本的にはコミュニティ重視である。M.A.D.1自体も、そのコンセプトに見事にマッチしている。これは正確にはMB&Fではないが、“本格的な”MB&Fを買えない友人やファン、サポーターへの感謝の気持ちを表す方法だ。もしこれまでのM.A.D.1で終わっていたとしても、それで十分だっただろう。しかし彼らはさらに改良を加えた。よりスリムで洗練されたデザインにし、スイス製ムーブメントを搭載したのだ。それでも依然として楽しめる時計だ。これらの要素すべてが、MB&FとM.A.D. エディションがコミュニティを深く理解し、その存在に感謝していることをしっかりと伝えている。

 すでにこの時計についてたくさん書いたが、少し詩的に表現させてもらえたら、私はとても幸運だと思う。HODINKEEでは時計がすべてだが、この仕事の醍醐味のひとつは、私たちが大切に思っている・興味を持っている、あるいは少し懐疑的に感じているブランドとの関係を築くことである。ときには大企業の一部としてひとりの担当者と会うこともあれば、そのブランドの背後にいる時計職人やデザイナーと知り合うことができる。

 なぜほかのブランドよりもMB&Fと親しい関係になったのか、自分でもはっきりとは分からないが、チームやマックスと知り合ってからはそのことに感謝している。マックスのような人物とは時計以外のことを語り合っても、なぜ彼らがその仕事をしているのかがより深く理解できる。私の時計への情熱は、もちろん製品自体が優れていることが前提であるものの、ストーリーに基づくものだ。この特別な新作はまさにそのすべてを備えている。

ブルガリ(BVLGARI) セルペンティ パリーニ
By Malaika Crawford

 またしてもセルペンティを選んでしまった。まあ…予想どおり? 私はこれを“きわめて忠実”と呼びたい。宝石がセットされた蛇のように巻きつくデザインへのこだわりについてどう思われようと、それはまぎれもなく本物の執着だ。セルペンティのことを考えない日はほとんどない。ヴィンテージのエナメルセルペンティや、彫刻が施されたコーラルカラーのセルペンティ、エメラルドの目を持つセルペンティ、小さなダイヤモンドがセットされたトゥールビヨンムーブメントのセルペンティなど、写真を見ながら午後を過ごすことだってある。

 YGのパリーニは、セルペンティのなかでも宝石がふんだんに使われたモデルだ。頭と尾にはダイヤモンド、目にはペアシェイプのエメラルドがセットされている。鱗は小さなゴールドビーズで構成されており、カバサ(小さなビーズが付いた木製の打楽器)を思わせるデザインで、動かすたびにほんの少し揺れる。さらに、パリーニには手巻きのピコリッシモムーブメントを搭載している。すべてのセルペンティが機械式になる日を未だ待ち望んでいる!

 イエローのパリーニコレクションは、“夢のなかで憧れる時計”として分類するしかないかもしれない。それはヴィンテージのエナメルセルペンティを手に入れるために、2000年代初期のヴィンテージプラダコレクション(それ以上のものも)のすべてを売る必要がない理想の世界である。でも、それで構わない。時計は所有しなくても心のなかで華やかな精神的逃避を楽しむことができるからだ。

 もっと感情的なことを言えば、ダイアナ・ヴリーランドはかつて、“美しく若い女性たちについて語ることがファッションでは唯一語るべきこと。なぜなら、年を重ねるとそれはもはやファッションではなく、ただ似合うものになるからだ”と言った。しかしセルペンティはそうした年齢の枠や適切さの基準をはるかに超越し、存在している時計だと感じる。

 セルペンティは持ち主の手首に合わせて形を変えてスタイルに寄り添う、華やかなオブジェだ。年齢の枠を超えて存在していることが、その魅力を一層引き立てている。まさに永遠のオブジェなのだ。私はパリーニを巻くし、母もパリーニを巻くだろう。そして、とてもおしゃれな85歳の祖母も同じくパリーニを巻くだろう。

ダニエル・ロート(Daniel Roth) トゥールビヨン ローズゴールド
By Tony Traina

 ダニエル・ロートが自分の好みかどうか、まだ確信が持てない。実際、リローンチプロジェクト全体に懐疑的だったかもしれない。だがブランドの新しいトゥールビヨンを初めて実物で見たとき、率直に言って、そのウォッチメイキング技術の素晴らしさに圧倒された。今年出た新しいローズゴールドバージョンは、昨年のスースクリプションモデルにいくつか微調整が加えられたもので、全体的により完成度の高いパッケージになっている。ムーブメントはサファイア製のシースルーバックをとおして見え、コート・ド・ジュネーブやブラックポリッシュが存分に堪能できる。最近SJXが言っていたようにその仕上げは、優れた小ロットの独立系時計メーカーと同様に高品質である。

 一方でRGのケースとそれに合わせたダイヤルは、より暖かみのある印象を与えている。また基本的にはオリジナルのDR トゥールビヨンと同じだが、ケースが2mmほど薄くなり、つけやすさが向上している。ダニエル・ロートは既存のデザインを改良しつつ、高級時計の製造技術をしっかりと応用できることを明確に示した。トゥールビヨンを実際に見たあと、次に彼らが本当に新しいものをつくり出せるかどうかを確かめたくなった。

ウルベルク(Urwerk) EMC SR-71
By James Stacey

 高額な時計を購入するなら、少なくとも特別なものだと感じたいものだ。最近発表されたウルベルクのEMC SR-71は、すでに特別な存在の時計(スタンダードなEMCには10年以上の歴史がある)に、実際のSR-71の素材を取り入れることで、その特別感をさらに高めた。SR-71を知らない人のために説明すると、これはアイコニックな偵察機であり、人類がつくり出した最もクールなもののひとつだ。今回の件に関しては@romig21のInstagramアカウントをフォローすることをおすすめする。彼はEMC SR-71の実現に関わっており、そのアカウントはとても素晴らしいものだ。時計に話を戻すと、このバージョンはリューズと巻き上げ用クランクハンドルが、回収されたSR-71 ブラックバードの素材でつくられている。SR-71好きの僕にとって、この時計はまさにツボだ。

 EMC SR-71についてはぜひマークの記事を読んで欲しいが、要するに、10本限定のユニークなコンセプトウォッチであり価格もそれに見合った15万スイスフラン(日本円で約2560万円)という値段が付いているということだ。なおEMCとはエレクトロメカニカルコントロールの略である。時計には本物の光学センサーが搭載されており、電子オシレーターによって設定された基準に対して、テンプの動作を測定することができる。言わばケースのボタンを押すと時計の精度を確認できるという仕組みだ。この先進技術に、SR-71の要素とヴィアネイ・ハルターのアンティコアを戦術的にアレンジしたようなデザインが組み合わさって、僕の関心を引いたわけだ。しかしきっとこう思っただろう。“え、ドクサを選ばなかったんだ?”と。

ローラン・フェリエ(Laurent Ferrier) セリエ・アトリエVI クラシック・オート サンドストーン
By Rich Fordon

 クワイエットラグジュアリー。これがTikTokでトレンドになる前から存在していたのがローラン・フェリエだ。万人向けではないかもしれないが、一貫性という点では間違いない。一貫した美学、仕上げの素晴らしさ、そして価格の高さもまた一貫している。新作のクラシック・オートは、ローラン・フェリエの人気商品であるクラシックとスポーツ・オートのふたつのラインを融合させたモデルである。彼らのやり方が分かるだろう? 先週、この時計に関する感想を書いたが、新作時計のリリースやウォッチイベントという混乱のあいだに見逃したかもしれない。それもローラン・フェリエの魔法のひとつだ。気づかずにスクロールしてしまうこともあるが、多くのコレクターにとっては、これが今週最高の時計だといえる。

 もちろん、まずはIntroducing記事を読んで欲しいが、噂によるとマークがHands-On記事も準備しているらしい。たくさんの撮り下ろし写真に加え、さらに深くローラン・フェリエの魅力を掘り下げる内容になっているとか。私もローラン・フェリエに夢中で、あなたも同じ気持ちになってくれるとうれしい。