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In-Depth チューダー ブラックベイ ヘリテージ 7922R 現行モデルに通じる復刻ダイバーの原点

今はもう無い、大反響を呼んだスローバックダイバー。現行のブラックベイ人気はここから始まった。

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※本記事は2012年3月に執筆された本国版の翻訳です。 

2010年、チューダーは1970年代初頭のクロノグラフからインスピレーションを得た“ヘリテージ クロノグラフ”と呼ばれる時計を発表したが、多くの人(我々を含む)の目には、ここアメリカではほとんど誰も目にしたことがなく、世界の人々には“プアマンズ・ロレックス”と思われていたブランドの、非公式ながらも劇的なブランド刷新と映った。 

 ご存じのとおり、チューダーはまさにそのようにデザインされていた。より安価なロレックスとなるべく1946年に生み出され、その歴史の多くを通じ、親会社の特徴的な技術の半分(ロレックスのオイスターケースだが、ロレックスの自社製キャリバーは採用していない)を用いて、約3分の2の価格で販売されていた。それは商業的な観点からすると極めて理に適っているが、多くの時計愛好家にとっては(いくつかのヴィンテージスポーツモデルを除いて)相変わらず後知恵の産物だった。 

 だが、このヘリテージ クロノによってチューダーは独自のファンを集め始め、価格に比してカッコイイこのクロノグラフは熱狂的なヴィンテージロレックスコレクターでさえも手に入れようと躍起になっていた。それから2年後、我々はヘリテージ クロノがチューダーの象徴的なモデルになったと聞かされ、そして2011年にチューダーはオールドモデルへのもう一つのオマージュであるヘリテージ アドバイザー(1950年代のモデル基づく)をリリースした。アラームウォッチとしては手頃な価格であり、独自のファンがいる。

 そしてついに2012年、チューダーは3つめのヘリテージピースを復活させてラインナップを完成させた。クロノグラフから始まり、アラームウォッチ、そして今では往年のチューダーのダイバーズウォッチを彷彿とさせるヘリテージ ブラックベイも取り揃える。しかし、バーゼルワールド2012の少し前にヘリテージ ブラックベイがオンラインでリークされたとき、純粋主義者たちはそれを歴史的な記述の寄せ集めだと非難した。ギルトレター、薔薇ロゴのダイヤルにスノークフレー針、そしてデカいリューズ? 訳がわからない。ただし、これを除いてだ 。

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 この時計はチューダーの社長のフィリップ・ペヴェリーリ氏(Philippe Peverilli)とデザイン責任者によって紹介された。そして我々の最初の質問は、もちろんこれだった。「なぜこのような特筆すべき歴史的な特徴を1つの時計にまとめたのか?」彼らの答えは非常にシンプルだった。「オンラインコミュニティは歴史的な背景をもつ時計のリメイクだと考える傾向があるが、ブラックベイは特定の時計のリメイクではなく(我々は前年、ロレックスの新しいオレンジハンドのエクスプローラーIIを取り上げた )、むしろ20世紀最高のチューダー・ダイバーズウォッチの集大成であり、オマージュなのだ」と。

 そして彼らは1954年の極初期のチューダー サブマリーナー、Ref.7922から話を始めた。上の写真のように、この時計は、発表後の最初の1、2年はペンシル針を特徴としていたが、その後すぐに変更され、60年代半ばから後半まではメルセデス針が使われた。7922は、当時のロレックスと同じように8mmの“ビッグクラウン”が特徴であり、ここからチューダーはダイヤル、リューズ、全体的なスタイリングの観点でブラックベイの構想を開始した。

 そして、1967年にRef.7021、つまり“スノーフレークサブマリーナー”が発表された年を迎えた。スノーフレークサブは、今日まで、ヴィンテージのロレックスコミュニティのお気に入りの時計の1つとなっている。なぜなら、価格に見合うだけの価値があるからだ。1950年代の7922のような極初期のチューダー サブは、決して安価な時計ではなかったが、フランス海軍に提供した時計でない限り、スノーフレークは5000ドルを下回る価格で購入できる(※2012年当時)。しかし、7021からチューダーはスノーフレーク針とベゼルのスタイリングを借用した。ただし、マットなバーガンディカラーはベゼルがこの豊かな色に変わったいくつかのミュージアム級のチューダー サブをベースに選ばれたが、チューダー サブ固有のカラーであると考えられている。ペラゴスで見られるように、これ以降、全てのチューダー ダイバーズウォッチでスノーフレーク針が使用されているのは興味深い。

  そういうわけで、新しいチューダー ブラックベイは、特定のヴィンテージのダイバーズウォッチへのオマージュでも何でもなく、過去60年間でチューダー ダイバーズウォッチを特別なものにした全ての要素を備えているというわけである。ドーム風防、ギルトレターの“チョコレート”ダイヤル、ピンクゴールドの針と夜光インデックス、そして200mの防水性能を備えている。サイズは41mm、厚さは10mm強だ。

 そして、これらの写真では見ることができないのは、この時計の着用感がどれほどよく、ケースがどのように見えるかである。この時計は全く巧妙に仕上げられており(伝統的な時計製造の価値はないが、創造的で審美的な価値のある - 標準的なETA2824ムーブメントを使用している)、手首の上で見事に映える。

 また、ブラックベイには2つの異なるストラップが用意されている。オイスタースティールブレスレットと、かなり熟成された印象のベジタブルタンニンなめしレザーストラップだ。

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 オイスターブレスレットとレザーストラップのどちらを選択しても、ブラックベイにはトレードマークとなっているコットンリボンスタイルのストラップが付属する(NATOではない)。

 チューダー ブラックベイには多くの魅力があるが、最も魅力的な部分をまだ紹介していない - 価格である。ご存じのとおり、価格設定に関して、チューダーは確かにロレックスの弟分的存在だが、そうとはいえ、チューダー ヘリテージ クロノグラフは4000ドル(40万円)以上で販売されている。正確には4200スイスフランだ。ブラックベイはそれよりかなり低価格であり、ヴィンテージのサブマリーナーの外観を求めているが、現代の感性を備えた人々にとって、この時計はさらに魅力的で親しみやすいものになる。

 チューダー ヘリテージブラックベイは、SSのオイスターブレスレットで3250スイスフラン、レザーストラップで2950スイスフランで販売され、どちらの価格にも付加価値税が含まれている。つまり、この素晴らしいレトロダイバーとヘリテージ クロノの間には1000ドル以上の差があるということだ。これは、初めて本当に良い時計を買うために貯金をしている人にとっては大きな差だ。 

 チューダー ヘリテージ ブラックベイ ダイバーは、かつての何か特定の時計を正確に複製したものではないかもしれないが、率直に言ってその方が良い。ヘリテージラインとは、私たちにとって現在のチューダーブランドを象徴するもの、そしてチューダーブランドが再び何になりつつあるのかということを表している。この時計は徹底的に考え抜かれ、非常によくできている(ダイヤルの下部にある“スイス製”のサインに注目して欲しい - ただそれが好きなだけだけど)。そして、この時計は非常に手頃な価格で、同じように優れているが全く異なるペラゴスと同様、本格的なダイバー、デスクダイバー、ヴィンテージウォッチファン、そして普通の時計ファンまでもが近くの販売店に走ることになるだろう。

※編集部註:バーガンディカラーベゼルを備えたチューダー ヘリテージブラックベイ 7922Rは生産終了となっており、現在は自社製ムーブメントを搭載した79230Rにモデルチェンジを果たしている。現行のチューダー ヘリテージブラックベイ 79230Rの詳細については、こちらをクリック。