ADVERTISEMENT
我々が知っていること
“新生”ルイ・ヴィトンのリリースサイクルが徐々に見えてきた。ブランドはタンブールとエスカルを交互に展開しており、2023年はタンブール、2024年はエスカル、そして今年のLVMH Watch Weekでは再びタンブールのタイコ スピン・タイムが登場した。このスピン・タイムはLVMH Watch Weekで大きな注目を集めたが、それとは別に、もうひとつのタンブールコレクションが展示され、多くの人々を興奮させた。この新作は2023年にリローンチされたモデルのスタイルを踏襲している。公式に発表のタイミングが制限されていたわけではないが、ブランドは今週になってようやくプレスリリースを配信した。今回登場するのは、プラチナケースにレインボージェムセッティングをあしらった限定モデル、オニキスダイヤルとサフランカラーのサファイアをあしらったイエローゴールドの限定モデル、そして限定ではないブラウンセラミックモデルという3種類である。
3モデルすべてのケースサイズは40mm×8.3mmで、優れたバランスを持ち、“ジャンボ”ロイヤル オークやノーチラスと非常に近いプロポーションとなった。特にブラウンセラミックモデルは、ブランドの象徴的なブラウンのモノグラムキャンバスをほうふつとさせる。このキャンバスは、バッグやウォレットはもちろん、タンブールの専用ウォッチボックスにも使用されているものだ。文字盤もブラウンで、中央部分にはサテン仕上げを採用している。また18Kローズゴールドのアクセントが随所に配されており、インデックスや夜光塗料を施した針に加え、一体型ブレスレットのセンターリンク部分にも使われている。
このブレスレットデザインは非常に興味深い。リンクの側面からピンが見えないよう、ブラウンセラミックのパーツを、RG製の可動式フレームの上に組み合わせた構造となっている。これはセラミックの薄型ブレスレットを設計する際に、多くのブランドが直面する“耐久性の問題”を巧みに解決する方法だ。日常使いに耐えうる強度を確保しつつ、洗練された外観を維持するという点で非常に優れたアイデアと言える。
限定モデル、タンブール プラチナ レインボーは、まさにその通りのモデルだ。ケース素材はプラチナで、今回はシルバーのセクターダイヤルを採用し、ベゼルとインデックスにはグラデーション状に配置されたレインボーサファイアとルビー(合計2.19カラット)が輝く。針、アウターインデックス、ジェムセットインデックスのセッティングはすべて18KWG製。さらにプラチナ製ブレスレットには、WGの三つ折り式デプロイヤントバックルが採用されている。
最後に紹介するのはタンブール イエローゴールド オニキス。その名のとおり、オニキス製のダイヤルを採用しており、ラッカー仕上げやコーティングによって似た質感を表現する一般的な手法とは一線を画している。プラチナ レインボーと同じく、このモデルも贅沢なジェムセッティングが施されている。文字盤とベゼルに計48個のサフランカラーのサファイアが配され、華やかさを際立たせている。
3モデルすべてに搭載されるのはCal.LFT023.01だ。これはル・セルクル・デ・オルロジェ(Le Cercle des Horlogers)製のCH200.CHSAをベースとしたムーブメントである。このムーブメントはマイクロローター式の自動巻きで、2万8800振動/時(4Hz)の高振動と約50時間のパワーリザーブを備えている。サイズは直径30.6mm、厚さ4.2mmとコンパクトで効率的な設計となっており、タンブールのスリムなプロポーションを実現する要因のひとつとなっている。またこれは過去のタンブールモデルにも採用されてきた、実績のあるムーブメントである。
プラチナ レインボーとイエローゴールド オニキスは限定モデルとなっており、前者が50本限定で2046万円、後者が30本限定で1771万円で販売される。一方ブラウンセラミックモデルは定番コレクションに加わり、価格は1021万9000円(すべて税込)に設定されている。
我々の考え
先日発表されたタンブール タイコ スピン・タイムは、新生ルイ・ヴィトンの高級時計部門から登場したなかでも、特に魅力的なモデルのひとつだった。だが正直に言うと、LVMH Watch Weekのグループミーティングでは、今回の3本の新作が最も注目を集めていたと言わざるを得ない。当初、これらの時計はあくまで展示用であって発表の中心ではなかった。しかしなんとか説得してケースから出してもらい、実際に手に取る機会を得た。
今回のLVにはどこか見覚えのあるデザイン言語が取り入れられている。特にYGケースにオニキスダイヤルを組み合わせサフランカラーのサファイアを配したスタイルは、どことなくロレックス デイトナ Ref.116588SACOを思わせる。ただしこちらはサファイアをベゼルのサイドエッジにさりげなく組み込み、より控えめかつ洗練された仕上がりとなっている。派手さを抑えつつも、しっかりとした個性が感じられるデザインだ。またオニキスダイヤルの選択も特徴的で、ラッカー仕上げで似た質感を再現することも可能だったかもしれない。ただ実際に手に取ると、15枚のブラジル産オニキスを使用したダイヤルには奥行きと立体感があり、写真では伝わらない存在感を放つ。ブランドによれば、このモデルのデザインは1911年に発表されたヴィットナイト(Vuittonite)トランクに着想を得たという。このトランクはまさにイエローとオレンジのカラースキームが特徴であり、そのエッセンスが時計にも反映されている。
オニキスと同様、レインボーはロレックスのイメージが強いが、ルイ・ヴィトンはまたしても独自の洗練された解釈を見せてくれた。特に48個のサファイアとルビーによるレインボーグラデーションが、デザインの主役ではなくさりげないアクセントとして取り入れられている点が魅力的だ。この配色は時計全体の一部として巧みに調和しており、レインボーを全面に押し出すのではなく、細やかなディテールとして組み込まれているのが素晴らしい。さらに写真には収められなかったが、ルイ・ヴィトンは裏蓋に1.6mmのサフランサファイアをセットし、プラチナモデルの証としている。これはパテック フィリップがラグのあいだにダイヤモンドを埋め込む手法を思い起こすが、洗練された心憎いディテールだ。
グループミーティングではしばしばどの時計も絶賛されがちで、これまでで最高のリリースだとか、久しぶりに一番気に入った時計だといった言葉が飛び交うものだ。正直なところ、すべての新作がそうとは限らない。本当に重要なのは自分が何を気に入ったのか、どこが優れているのか、あるいは何がうまくいっていないのかを率直に語ることだ。そうすることでブランドも自分たちのリリースをより客観的に捉えることができる。だからこそベン(・クライマー)がミーティングで何度も称賛する時計があれば、それは本当にクールな1本だと分かる。今回はブラウンセラミックのタンブールがそうだった。
確かにオーデマ ピゲもトラヴィス・スコット ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーでブラウンセラミックを採用し、それ以前には“デニムストラップ”も取り入れていた(それがクールかどうかは議論の余地があるが、個人的には気に入っている)。だがルイ・ヴィトンは今回、デザイン、技術(特にブレスレット)、仕上げの面で非常に優れた仕事を成し遂げた。また市場全体を見渡しても、競争力のある価格設定になっている点も見逃せない。ルイ・ヴィトンによれば、ブレスレットの製造時間の80%が手作業による仕上げに費やされているとのこと。ブラッシング、面取り、ポリッシュのすべてがハンドフィニッシュで施されているのだ。また針とインデックスにはブルー発光のスーパールミノバを採用。文字盤は中央が縦方向のサテン仕上げ、時間表示とアウタートラックはサンドブラスト仕上げ、スモールセコンドはサーキュラーのスタンプ仕上げと、細部にまでこだわった意匠が目白押しだ。
今回のタンブール オトマティック セラミックの価格(1021万9000円)を、オーデマ ピゲのモデルと比較してみよう。APのラインナップでは、34mmのブラックセラミックモデルが786万5000円(税込)、一方でダブルバランスホイール・オープンワークのような複雑モデルは10万1100ドル(日本円で約1500万円)と、幅広い価格帯がある。そのあいだに位置するルイ・ヴィトンのこの新作は、ちょうどいいスイートスポット に収まっているように感じる。それにブラウンキャンバスのネヴァーフルと合わせるなら、この時計はまさに必須アイテムでは? とはいえ自分としてはブラックバージョンを待ちたい。ダミエ・グラフィットのウォッチロールと組み合わせたら最高だろう。必要ではないけど、めちゃくちゃ欲しい。
基本情報
ブランド: ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)
モデル名: タンブール オトマティック プラチナ レインボー(Tambour Automatic Platinum Rainbow)/タンブール オトマティック イエローゴールド オニキス(Tambour Automatic Yellow Gold Onyx)/タンブール オトマティック セラミック(Tambour Automatic Ceramic)
型番: W1PT10(レインボー)/W1YG20(オニキス)/W1CR10(セラミック)
直径: 40mm
厚さ: 8.3mm
ケース素材: プラチナ(48個のサファイア&ルビー、合計2.19カラットをセット)、18Kイエローゴールド(48個のサフランサファイア、合計2.22カラットをセット)、セラミック&18Kピンクゴールドケースとセラミックベゼル
文字盤: グレー(レインボー)/オニキス(オニキス)/ブラウン(セラミック)
インデックス: 18KWG製の発光加工を施した針、サファイアとルビーをセット(レインボー)/18KYG製の発光加工を施した針、サフランサファイアをセット(オニキス)、18KRG製の発光加工を施した針と数字(セラミック)
夜光: あり
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: プラチナ製ブレスレット、18KWG製つ折れバックル(プラチナ)/YG製ブレスレット、18KYG製三つ折れバックル(オニキス)/セラミック&18KPG製ブレスレット、18KPG製三つ折れバックル(セラミック)
ムーブメント情報
キャリバー: LFT023.01
機能: 時・分表示、スモールセコンド
直径: 30.6mm
厚さ: 4.2mm
パワーリザーブ: 約50時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31
クロノメーター: あり、ジュネーブにあるクロノメーター検査機関による認証済みクロノメーター(ISO 3159規格)
追加情報: サファイアクリスタル(反射防止コーティング)、サファイアケースバック
価格 & 発売時期
価格: プラチナは2046万円、イエローゴールドは1771万円、ブラウンセラミックは1021万9000円(すべて税込)
発売時期: 発売中
限定: プラチナは世界限定50本、イエローゴールドは世界限定30本、ブラウンセラミックは定番コレクション(非限定)
詳しくはこちらをご覧ください。