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4月15日、GQ編集部に勤める僕らの仲間がGQ5月号(US版)を発行しました。表紙を飾るのは、他でもないカニエ・ウェスト(Kanye West)その人です。カバーストーリーを執筆したのはGQ編集長(HODINKEEのラジオにも登場した)のウィル・ウェルチ(Will Welch)で、写真はタイラー・ミッチェル(Tyler Mitchell)(Vogue2018年9月号の表紙を優雅に飾ったビヨンセの写真が一番有名でしょう)が撮影しています。ミッチェルがとらえた、熟練のアーティストやミュージシャンとしてマルチな才能を発揮する人物の姿は印象的かつ、ちょっと変わった雰囲気を醸し出しています。カニエは、ここ数年、何度か「故郷」と発言しているワイオミング州の小さな町・コーディの田舎風景の中で自意識過剰気味にポーズをとっています。よく見てみると、訴えかけてくるポイントがあるのに気づきます。それは手首に輝く時計です。金無垢のアイクポッド ヘミポッド クロノグラフをかっこよく身に着けています。まさにカニエらしい、奇抜ながらワイルドなチョイスです。
カニエの時計好きは有名で、好みも幅広いことで知られています。ヴィンテージ・ロレックス のスポーツウォッチから、モダンなロイヤル オークやリシャール・ミル、はてはアイクポッドのようなものまで装着している姿が目撃されています。自分の人生のあらゆる面を注意深く考えているカニエのような人物にとって、手首にはめるものについても考え抜くことは当然なのでしょう。
このアイクポッドのような時計が、偶然で登場することはありえません。たまたま手にするようなモデルではありませんし、身に着けるには一定のケアが必要です。だからこそ、今回見かけたことに大きな感動を覚えているのです。GQの表紙で自社製品が、カニエの手首に収まることを切望するブランドが山ほどあるのは間違いありません。彼はその中でも、UFOのような見た目の「ゴールド・オン・ゴールド」の大きなクロノグラフをはめることを選びました。本機をデザインしたのはマーク・ニューソンで、製造したのは今はなきブランドです(現代版のアイクポッドも存在しますが、デザインは異なります)。
ヘミポッドは、ニューソンとアイクポッドが1998年に世に送り出した時計で、ブランドのユニークなアプローチを真に体現した最初のモデル。「ラージ ポッド」や「シースラッグ」といった以前のモデルは、今振り返ってみると少々実験的な印象ですが、アイクポッドはヘミポッドで本領を発揮しました。44mmの円盤型ケースは、40mmの時計がまだ大きめと見なされていた90年代後半に、間違いなく重厚感を放っていたでしょう。ヘミポッドには、24時間計や文字盤外縁のスケールの有無で2、3のバリエーションがあり、素材もSSと貴金属の両方がありました。この「ゴールド・オン・ゴールド」の配色は、時計のサイズ感やモノリシックな見た目を強調しています。僕の個人的なお気に入りかもしれません。ミニマリストのアイデアをマキシマリスト的に解釈しており、デザインの緊張感が好みです。
ゴールド・オン・ゴールドのアイクポッド ヘミポッド クロノグラフ(写真提供:サザビーズ)。
(GQの)1万ワードにおよぶ記事の中に時計の話は出てきません。ウェルチ本人の考えやカニエとのQ&Aで構成されており、今年のはじめ、5週間にわたって複数の場所で収録された一連のインタビューを編集した内容です。ここ数年で読んだ記事の中でも、有名人についてよく考えられた、深い考察のひとつです。ウェルチは、事情通ならではの知識を友好的に披露しながら、カニエを真に挑発し、答えを探させるという巧みな技術を見せています。その答えは天からの啓示のように聞こえて、僕はこの記事を読んでカニエのアルバムをもう一度聞きたくなったのです。
カニエ・ウェストの記事を詳しく知りたい方はこちらへ。
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