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先月、HODINKEEはパテック フィリップのティエリー・スターン氏を取材し、同社のこれまでの歩み、現在の状況、そして今後の方向性について、ジュネーブからリモートで語ってもらった。ノーチラスのようなインターネット上で話題になった時計を作っている会社を経営していると、全ての意見がホットなものになるが、我々の会話の中で最もホットだったのは、5711がパンデミックにおいて時計界で存在感を増したが、それはもっと大きな森の中にある大きな木であるということだった。
今日でも、多くの人々がノーチラスを欲しがるのはなぜでしょうか?
この作品は、(パテックが)初めてスティールを採用したハイエンドウォッチであったことを忘れてはならないと思います。私の父がこの作品を発表したとき、誰もが彼をクレイジーだと言いました。こんなに美しいムーブメントをスティールケースに入れることはないだろうと。それが最初のきっかけでした。当時としては、かなりユニークなものだったのです。
第二に、デザインが常に美しいことだと思います。身に着けやすい時計で、とてもしなやかで、ブレスレットも素晴らしい。このデザインは本当に成功したと思います。そのおかげで、この時計はアイコニックな存在になりました。
自動車業界を見ても、いつの時代も素敵なデザインがあります。アストンマーティンのDB5を見れば分かるように、常に美しいものです。それはノーチラスも同じだと思います。唯一無二のものですから。しかし、それは私たちが押し付けたのではなく顧客の皆さんがこの時計を本当に愛していたからです。
コネクテッドウォッチを実験的に導入しているブランドもありますが、パテックはしていません。なぜでしょうか?
私たちの分野ではないからです。想像してみてください。私たちとほぼ同じ予算で研究開発を行い、最後には5桁も規模が違うApple社と戦えるでしょうか? 私はそれに対抗できないと思います。純粋に別の方法なのです。そして私たちはこれまで常に機械式時計に専念してきました。それが、私たちが知っていることであり、楽しんでいることなのです。電子機器を扱うのは楽しいかもしれませんが、私のビジネスではありません。それにこの種の技術のプロでもないのです。
5711の最後のウイニングランランにグリーンダイヤルを採用した理由はなぜでしょうか?
まあ、私としては、ノーチラスを応援してくれている皆さんに感謝の気持ちを伝えたいという意味合いが強かったですね。それが私の義務でした。何かいいことをしたいと思っていたのです。でも、これはノーチラスの終わりではなく、5711の終わりに過ぎません。
ちなみに、私は最終ラウンドとは言っていません。
また、爆弾が登場する...かもしれません。
私を信じていれば、その可能性を思い出すことになるでしょう。
グリーンダイヤルについてもう少し教えて下さい。
素敵な色ですよね、皆さんそう思っています。私はトレンドやファッション、何が素敵かということにも目を向けていますが、グリーンが素敵な色であることはみんな知っていました。私が好きなのは、シンプルで身に着けやすい色だということ。私にとっては選択の余地がありました。5種類くらいあったのですが、この色がスティールとの相性がとても良かったので、それで決めました。試作品からやって、作ってみて、実際に見てから1つの色を選ぶことになるのです。
この私の選択には、皆さん信頼してくださっていると思います。私はいつも「どうしたらいいと思う?」と尋ねます。そして答えはいつも、「スターンさん、あなたを信じています。あなたが正しいと思うことをしてください」なのです。
いいえ、私は死にたくありません。自分を適応させなければならないのです。
– ティエリー・スターン氏ノーチラスはどのようにしてパテックのアイコンとなったのですか? 1976年以前の御社は、全く異なる時計で知られていましたね。
先ほどもお話したように、簡単に身に着けられる時計なのです。ジーンズにも、プールに行くときにも、美しいタキシードにも合わせられます。それがこの時計を象徴的なものにしています。世界のどこにいても、この時計はあなたに似合うのです。ミニッツリピーターやカラトラバではそうはいきません。何にでも合わせられるわけではないのです。ノーチラスは唯一無二の存在ですが、アクアノートも負けてはいません。あとは私が進化させていくだけです。
私たちが行ける分野はたくさんあります。私の師匠の一人が、「グッドラック、スターンさん、全ては成し遂げましたね」と言ってくれました。衝撃を受けました。アイデアはいくらでもあります。
クラシカルなもの、スポーツ用のもの、レディスラインなど、どの分野にも領域があると思います。パテック フィリップは、伝統的なカラトラバを作ることだけに専念しているわけではありません。それは、私の息子たちが期待していることではないのです。新しい世代がいて、物事は常に進化しているのです。常に伝統的であり続けるために? いいえ、そうではないのです、私は死にたくありません。伝統と未来の良いところを取り入れて、それがマッチして美しい時計ができるかどうかを見極めなければならないのです。
あまりにも伝統的すぎる場合は...ブランパンを見てください。彼らは伝統を守ろうとしましたが、うまくいきませんでした。彼らは進化しなければならず、多くの新しいことを提案しています...やりすぎかもしれませんが。しかし、これは良い例です。限界がどこにあるかを知るのは自分次第です。良いケースを使ったハイエンドの時計を作りたいのか、それとも1年で飛ぶように売れるファッションウォッチをも作りたいのか。これは理想的ではありませんが。
今日において、誰のために時計を作っていますか?
お客様にはいくつかのグループがあります。ある人たちは、よりファッションに敏感な人たちであるといえます。そのブランドが知られているから買うという人たちです。また、ムーブメントの品質や各パーツのデザインが非常にユニークであることを知っている、何でも知っているクレイジーなフリークの方もいらっしゃいます。このように、4〜5つのグループに分かれていますが、最初に購入する時計から、それぞれのグループに分かれています。もし1つだけ買うとしたら、それはノーチラスです。でも、カラトラバから始めて、そこから進化した本格的なコレクターもいますよね。このような人たちにどのように話しかけるかが、私たちの課題です。
"元の普通"に戻ることはないのでしょうか?
家族経営のビジネスをしているならば、人々はあなたを待っています。あなたはブランドの一部なのだから、あなたを見る必要がある。だからこそ、前の状態に戻らなければならないし、できるだけ早くそうしたいと思っています。また、私は再び旅に出て、全ての販売店の方々にお会いしたいと思っています。このように遠隔地で話すのはクールではありません。実際に会ってみたいのです。私たちはワクチンを摂取しなければなりませんし、ワクチンパスポートも必要かもしれません。しかしそうなれば、また旅に出て、人々に会うことになるでしょう。それは必然なのです。
物理的なトレードショーは、もしジュネーブでできるのであれば、そうします。どのようにするかは難しいですね。想像できると思いますが、私たち全員が一緒になって行うのは簡単ではありません...。しかし、私たちは皆、やりたいと思っています。何が起こるかにもよりますが、ショーを開くというアイデアがあることは間違いありません。人々に何かを見てもらうことは重要だと思います。今のターゲットはジュネーブですが、もしうまくいかなかったら、別のアイデアを考えなければならないかもしれません。アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、世界各地で2つか3つのイベントを開催します。どのブランドでも、プランBとプランCをもっていると思います。
私のキャリアの中で、私はずっとこのように考えてきました。チェスのようなものです。
あなたが死んでも、あなたが作ったものは残ります。
– ティエリー・スターン氏あなたはパテックのレガシーを担当していますが、同時に家族のレガシーも担当していますよね。
確かに、ユニークなものです。私は情熱的な人々の中で育ちました。子供の頃は、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、ショパールの人たちと一緒にいました。彼らはみんな友達で、日曜日には夕食を食べていました。そのときに会社の素晴らしさを実感するのです。いい給料のことだけを考えるのではありません。会社のために本当にベストな存在であり、モチベーションを高める責任があります。まず顧客のモチベーションを上げ、そして新しい世代の時計職人のモチベーションを高めることです。彼らは将来のために働かなければならないからです。これは私にとって最も重要なことです。新しい世代のモチベーションを高めること。
私たちには、チップ(集積回路)もありませんし、クォーツもありません...まぁ、確かにクォーツムーブメントはありますが、私たちは主に分解できる機械的なものを使っています。私たちはそれを理解しています。子供の頃、私はいつも自転車を修理していましたが、それと同じです。私たちは今でも、メカニックのある種のマナーを守っているのです。
それが好きなんです。そして、美しいケースを作ることは、私にとって夢のようなことなのです。理由を説明するのは難しい。でも、それが楽しいのです。ゼロから始めて、歴史の一部となるものを作ることができる。自分が死んでも、自分が作ったものが残っている。いい思い出になりますよ。私は、人が身に着けることができる素敵なものを作っています。誕生日、結婚式、卒業式などの記念品になるもの。それがパテックの好きなところであり、私が発信しようとしていることでもあります。世の中のために役立つ素敵なものを作っているという感覚です。
このインタビューは編集され、まとめられています。