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Photo Report 「時の技巧展」世界最高峰の時計師たちが集う期間限定イベントに潜入

腕時計の制作実演や希少ピースの展示を通して、完成品の裏側にある匠の技と思想を体感できる4日間。

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ハイエンドウォッチの世界における最高峰の時計師たちが東京に集結する「時の技巧展-Masters of Horological Craftsmanship」が、2026年1月9日(金)から1月12日(月・祝)までの4日間、東京・渋谷のSAI(RAYARD MIYASHITA PARK内)で開催されます。そのメディアプレビューに足を運び、ひと足早く会場の様子を取材してきました。

 本展は、世界的に著名な時計師たちが一堂に会し、完成した時計の展示だけでなく、実際の制作工程を実演公開するという、非常に貴重なイベントです。腕時計というプロダクトの奥深さを、完成品と“制作の現場”の両面から体感できる内容となっています。

「時の技巧展」の出展者たち。

 参加するのは、AHCI(独立時計師アカデミー)会員として世界的に評価されるベルナルド・レデラー氏、ラウル・パジェス氏をはじめ、グランドセイコー「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」の製作に携わった川内谷卓磨氏、クレドールのエングレービング・マイスターである小川恒氏、さらに浅岡肇氏や大塚ローテックの片山次朗氏といった、日本の時計界を代表する匠たち。独立時計師から大手ブランドまで、これほど幅広い顔ぶれが同じ空間に集まる機会はそう多くありません。

ラウル・パジェス氏

 会場では、タイムスケジュールに応じて時計師が入れ替わり、それぞれが面取りや仕上げ、組み立て、部品製作などを実演します。

 僕が取材した時間帯には、ラウル・パジェス氏がブリッジの面取りを披露しており、その手元をひと目見たいと、自然と人だかりができていました。無駄のない動きで金属に命を吹き込んでいく様子は、写真では決して伝わりきらない緊張感があります。

川内谷卓磨氏

 続いて印象的だったのが、川内谷卓磨氏による「Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン」の組み立て実演です。世界最高峰のメカニズムが、どのような思想と手順で組み上げられていくのかを、至近距離で確認できる機会はそうありません。聞けば川内谷氏にとって、こうした一般に開かれた場所での実演は今回が初めてとのこと。普段はなかなかお会いできず、ゆっくりと話を伺う機会も限られる存在だけに、作業の合間に直接言葉を交わせるという点でも、非常に貴重な時間だと感じました。

 また、クレドールのエングレービング・マイスターである小川恒氏は、目の前で繊細なモチーフを彫金していく実演を披露してくれました。金属の表面に少しずつ文様を刻んでいくその手元には、自然と視線が集まります。テーブルには、これまでに彫金チームが手がけてきたさまざまなエングレービングの試作品が並んでいました。多くはそのまま製品になるわけではありませんが、こうした多彩なモチーフへの挑戦を通じて技術と表現の引き出しを増やし、その蓄積が最終的に時計の彫金表現へと昇華されていくのだそうです。

 さらに、片山次朗氏と浅岡肇氏は、それぞれ工房から機械を持ち込み、部品製作や文字盤のパッドプリントといった、普段はなかなかお目にかかれないリアルな時計制作の工程を披露。完成品の裏側にある「作る」という行為を、これほど具体的に体感できる展示は貴重です。

 片山氏の作業を見ていると、ひとつの小さなパーツに対して、驚くほどの集中力を注いでいることが伝わってきます。普段はにこやかでフレンドリーな印象の片山氏ですが、作業に向き合う瞬間の真剣な眼差しが、会場でもひときわ印象的でした。

浅岡肇氏

 一方の浅岡肇氏は、文字盤製作の工程を通して「一つの作業の裏側には、膨大な準備の時間がある」と語っていました。実際、会場での実演に向けては、印刷用のインクをこのイベントのために新たに作り、事前の調整もかなり入念に行っていたそうです。そうした表からは見えない準備の積み重ねを経たうえで、あえて一般に開かれた場で実演を行う姿からは、このイベントを通して時計作りの魅力を伝えたいという強い思いが、感じられました。

 腕時計は実機で見てこそ真価がわかる、ということはこれまで何度も記事でも書いてきましたが、作り手本人に会い、話し、そして仕事を目の前で見るという体験は、さらに一段深い理解を与えてくれます。このイベントは、それを実現してくれる稀有な場です。

 会場内には、各ブランドのGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)受賞作をはじめ、極めて希少な実機も展示されています。完成された時計と、その背景にある膨大な手仕事。その両方を同時に体感できる点こそが、この「時の技巧展」の最大の魅力だと感じました。

 開催期間はわずか4日間ですが、会期中にはトークセッションも予定されています。時計愛好家はもちろん、日本のものづくりに興味がある方、そして未来の時計師を目指す若い世代にも、ぜひ足を運んでほしいイベントです。“時の技巧”という言葉を、これほどリアルに体感できる機会は、そう多くありません。

【概要】
・開催期間 :2026年1月9日(金)~ 2026年1月12日(月・祝)の4日間
・時間: 11:00~19:00 (最終日は18:00まで)
・会場: SAI(RAYARD MIYASHITA PARK内)/東京都渋谷区神宮前6丁目20-10 MIYASHITA PARK SOUTH 3F
・入場: 無料・事前予約制

Photographs by Kyosuke Sato and Masaharu Wada