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クイック解説
ベルギーを拠点とする独立系ブランド、RESSENCE(レッセンス)が、日本の工芸美術家・池田晃将氏とのコラボレーションモデル「Type 9 IKE」を発表しました。世界限定8本となる本作は、RESSENCEの代表作であり、もっともミニマルな時間表示を行うType 9をベースに、池田氏の螺鈿(らでん)技術を融合させた特別仕様です。
Type 9は、ブランド独自のROCS(Ressence Orbital Convex System)機構を搭載し、時・分表示が同一平面上で回転する独創的なディスプレイを特徴とします。緩やかに湾曲したダイヤル全体が有機的に連動しながら時間を示す構造は、従来の針式時計とは一線を画す存在です。本作では、この立体的かつ回転するダイヤルを“キャンバス”とし、漆の複層塗りの上に極限まで薄く加工した真珠母貝を埋め込むことで、近未来的な世界観を表現しています。
池田氏は、初めてType 9の回転ディスプレイを目にした際に宇宙や銀河を想起したといいます。そこから着想されたコンセプトが「地動説」です。天文学における価値観の転換を象徴するこのテーマは、既成概念を覆すような視覚体験を、回転するダイヤル上に描き出します。光の当たり方や見る角度によって虹色に変化する螺鈿の輝きは、ブラックDLCコーティングを施したチタン製ケース、ベゼル、ダイヤルとの強いコントラストによっていっそう際立ちます。
強い曲面をもつ回転ダイヤルに螺鈿を施すことは技術的にも大きな挑戦だったそうです。平面に近い性質である真珠母貝を極薄に加工し、液体に浸したうえでゴムシート上で徐々に曲げるという工程を経て、湾曲面へと密着させています。各個体の製作には約1ヵ月を要し、もちろんすべてが一点物として仕上げられます。裏蓋には池田氏のサインが刻まれ、芸術作品としての側面も明確に打ち出されています。
池田晃将氏
池田氏は今回の制作について、「美術品では視線の動きをすべて設計するが、この回転ディスクは12時間絶えず模様が切り替わり、どこに視線を定めればよいのか戸惑いを覚えた」と語ります。そのうえで、時針の中心を起点に“視点の周囲が動く”構成へとまとめたといいます。それは「地球という一点から、絶えず運動する太陽系を見つめる感覚」に近いものなのだそうです。
単なる装飾の追加ではなく、ROCS機構そのものを前提に構想された表現として完成したType 9 IKE。伝統工芸である螺鈿と、ベルギー発のコンテンポラリーな機構美が交差することで、過去と未来が同時に存在するかのような独自のタイムピースが誕生しました。世界限定8本で、価格は3万2000スイスフランです。
ファースト・インプレッション
2024年に藍染集団BUAISOUとレッセンスが手がけたType 8 “インディゴ”を目にしたとき、このブランドの時計は日本の伝統工芸と驚くほど相性がいいと感じました。独自の回転表示によって時間を示すレッセンスのデザインは、そもそも時計業界のなかでも非常にニッチな存在です。その未来的で、どこか工業製品的とも言えるような無機質な造形が、何百年と受け継がれてきた伝統技法と結びつくことで、強いコントラストが生まれます。その対比こそが美しいのです。
そして今回登場したType 9 IKEは、個人的には前作のインディゴモデル以上に心をつかまれました。フルブラックのチタンケースに、全面へと広がる螺鈿細工のダイヤル。まるでSF映画に登場する小道具のようで、未来から発掘されたアーティファクトのようにも見えます。しかしその輝きは、最新素材ではなく、日本の伝統工芸によって生み出されている。この意外性がたまらなく格好いいのです。
実際に回転するディスプレイが早回しで動く様子を見ると、その視覚体験はどこかクレイジーです。もし僕がこの時計にあだ名をつけるなら「Ghost in the Shell」と呼びたくなります。これは僕の好きな作品である『攻殻機動隊』の英語タイトルですが、あの近未来的な世界観と、この時計が放つビジュアルが強く重なります。さらに、螺鈿に用いられる“貝(シェル)”という素材とも響き合っていて、個人的にはこれ以上ない呼び名だと感じています。
そしてインタビューのなかで、池田氏は本作を「不可視の情報構造を視覚言語へ翻訳する試み」であり、テーマは「電脳世界の遊泳」だと語りました。その言葉を聞き、僕の連想はあながち的外れではなかったのだと感じました。
この時計は、伝統と未来、工芸とテクノロジーという2つの領域を鮮やかに接続しています。レッセンスというブランドの可能性をもう一段、押し広げた一本だと思います。
基本情報
ブランド: レッセンス(Ressence)
モデル名: タイプ 9(Type 9)
型番: タイプ 9 IKE(Type 9 IKE)
直径: 39mm
厚さ: 11mm
ケース素材: チタニウム(ブラックDLCコーティング)
文字盤色: ブラックベース(螺鈿装飾)
インデックス: ROCS回転ディスプレイ
夜光: なし
防水性能: 1気圧
ストラップ/ブレスレット: 撥水レザーライニング付きブラックホースレザーストラップ、チタン製バックル付き
ムーブメント情報
キャリバー: ROCS 9モジュールを搭載したETA 2892
機構: 時・分
パワーリザーブ: 36時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31石
クロノメーター認定: なし
追加情報: ダイヤルに漆の複層塗りおよび極薄真珠母貝による螺鈿細工を採用。裏蓋に池田晃将氏のサイン入り。
価格 & 発売時期
価格: 3万2000スイスフラン
発売場所: レッセンス取り扱い店
限定: 世界限定8本
詳細はレッセンス公式サイトへ。
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