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セイコーは、1964年のクラウン クロノグラフのデザインをオマージュした3モデル―SARX069、SARX073、そしてSARX071―をプレザージュから発売しました。今回、実機に触れる機会を得たため、ハンズオンとしてレビューをまとめます。
元となったクラウン クロノグラフは、日本で初めて開催された1964年の東京五輪で、セイコーがオフィシャルタイムキーパーを担当することをきっかけに開発された時計です。ストップウォッチ機能を持った初の国産時計としても知られ、クラウンと名付けられたのは、手巻きの同名モデルをベースとしているからです。
初代クラウン クロノグラフは、一つのプッシュボタンでスタート・ストップ・リセットを行うワンプッシュクロノで、サブダイヤルの無い文字盤のため、非常にクリーンな印象です。簡易的ですが、60分積算計となるプラスティック製の双方向回転ベゼルも搭載されています。実際に使用する場合は、ベゼルを分針の位置に合わせて、2時位置のプッシュボタンでスタートすることで計測ができました。
実はセイコーは、昨年の10月にもセイコークロノグラフ55周年を記念して、同モデルをオマージュしたセイコー プレザージュ SARK015をリリースしています。前回は、同社のクロノグラフムーブメント8R48を搭載した3レジスタークロノグラフでした。55年の時を経てより先に進んだモデルともいえましたが、デザイン観点ではダイヤルカラーなど全体の"雰囲気"のみを引き継いだ時計だったため、一部のファンからは不満の声も聞こえました。しかし、今回登場したモデルは、クロノグラフの無いシンプルな3針ですが、デザインの観点でより初代に近づけた時計です。
今回のモデルを見てみましょう。クロノグラフは搭載されていませんが、確かに全体的なデザインは、初代クラウン クロノグラフにとても近いです。3針でサブダイヤルが無いというのが一番の要因かもしれませんが、黒いベゼル、シャープなインデックス、夜光塗料の塗布されたドーフィン針、文字盤がその理由に挙げられます。オリジナルのアイボリーダイヤルの他にグリーンとブラックのバリエーションも追加(オリジナルにはグレーも存在)。新たに追加されたグリーンやブラックもモダンに仕上がっており素敵なのですが、個人的にはやはりアイボリーが一番好みです。セイコーは公式にアイボリーとしていますが、光の当たり方によっては、シルバーに近い印象も受けます。ポリッシュされたインデックスがサンレイ仕上げの文字盤上に配置され、また文字盤上の細かい溝が立体感を演出します。
内部に搭載するムーブメントは、自動巻きムーブメント6R35です。セイコーはこのムーブメントをプレザージュからプロスペックスまで広く採用しています(先日ご紹介したセイコー プロスペックス アルピニストにも搭載)。パワーリザーブは70時間とロングパワーリザーブのため、週末に着用しなくても翌月曜日まで動いている計算になります。ですが、オンオフ問わないデザインのため、いつでも使いたくなる時計です。またクロノグラフは無くなりましたが、代わりに日付表示機能が搭載されており、より実用性を高めたとも言えるかもしれません(日常的にクロノグラフを利用しているという人はそれほど多くはないでしょう)。
実際に腕に着けてみると、ケース径41.3mmという実寸値よりも少し小さく感じます。厚さも11.3mmと薄く、また手首に沿うように角度の付いたラグがとてもよくフィットします。このサイズであれば、多くの人が楽しめるちょうど良いサイズなのでしょう。ブレスレットのまま着けるのも良いですが、レザーストラップに変えても似合うだろうなと思います。
本機は、全て8万3000円(税抜)と非常に手の届きやすい価格です。もしクロノグラフムーブメントを搭載していたなら、これは実現できなかったでしょう。あまり使うことのない機能を無くしたかわりにオリジナルのデザインを忠実に再現し、ヴィンテージの雰囲気の中にもモダンさを持たせた時計。もし気になっているのであれば、各1964本限定モデルなのでご注意を。
セイコー プレザージュ 2020限定エディション: ケース、41.3mm x 11.3mm、SSケース、10気圧防水。Cal.6R35、パワーリザーブ約70時間。セイコーグローバルブランド コアショップ専用。各1964本限定。価格: 8万3000円(税抜)
本モデルの詳細は、セイコーの公式サイトをご覧ください。