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※本記事は2016年2月に執筆されたUS版の翻訳です。
18ヵ月前、ある果物の名を冠した会社からある時計が発売されて以来、人々はこれらの新しいタイプの時計が伝統的な機械式時計業界にとってどれほど大きな脅威になるのか、私自身や私の同僚に問いかけてきた。確かに、現在腕時計の売上は前年比で減少しているが、それは本当にApple Watchやデジタル時計の登場によるものだろうか? 私はそうではないと考えている。スイス時計産業には、中国の贅沢品税、団塊世代の高齢化、マクロレベルでの景気後退など、様々な脅威がある。しかし、時計業界にとって対処が急務であり、余地のあることのひとつとして、毎年スイスから送り出される何百万もの時計を修理することができる、サービスマン/ウーマンの絶対数の欠如である。
毎年、修理が必要な古い時計の数は、新しい時計を作る数よりもはるかに多いことは容易に想像できるだろう。この動画では、コネチカット州グリニッジにあるマンフレディ宝石店に赴き、歴史上最も象徴的なタイムピースの一つであるオメガ スピードマスターの修理を詳しく見て、なぜ今まで以上に資格を持った修理職人が必要なのか説明したい。
まず第一に、私らがマンフレディでこの記事を書くことになったのは、彼らが真の時計愛好家との揺るぎのない信頼関係を築いてきたからだ。そう、彼らはオメガからFPジュルヌ、ヴァシュロン、AP、さらにはレッサンス、カリ・ヴティライネン、ローラン・フェリエまで、あらゆるブランドの時計を販売しているが、マネージャーのロブとオーナーのロベルト(彼の美しい奥さんの名前はロベルタだ、嘘ではない)と話していると、このグリニッジの名物時計店が、それを理解している数少ない時計店の一つであることは明らかだ。マンフレディにはフルタイムの時計職人が多数在籍しており、その中には実際に売り場で働いているハリーという若くて社交的な時計職人も在籍している。彼の仕事内容には書かれていないことだが、彼がそこにいて顧客の質問に答えることで、何本もの時計が売れるそうだ。しかし、それ以上に重要なのは、マンフレディが長年にわたって販売してきた何千本もの時計や、初めて時計を購入する人たちのクリーニングやアフターメンテナンスをサポートするために彼を配置しているということだ。
撮影当日、修理に出された時計は、HODINKEEの読者や世界中の時計愛好家のアイコンとなっているオメガの手巻き式スピードマスター プロフェッショナルだ。多くの人にとって、このスピーディプロは実用的なデザインの象徴であり、脂肪分のない肉のような存在だ。
スピードマスターは、多くの人にとって究極のツールウォッチかもしれないが、ムーブメントには234点の部品があり、定期的なクリーニングとメンテナンスが必要となる。
しかし、スピードマスターのCal.1861は234個もの部品で構成されていることを想像できるだろうか? これらの小さな部品の一つ一つは、点検、洗浄、そして修理や交換の必要が出てくる。冒頭の動画では、この伝説的なオメガ スピードマスターを維持するために必要ないくつかのステップを紹介している。
実に印象的ではないだろうか? マンフレディは、顧客に真のハイグレードなアフターサービスを提供している正規販売店の一例に過ぎない。ほとんどの正規販売店では、こうしたサービスを提供しておらず、代わりにスイス本国のメーカーサービスに頼っているのが現状である。そのため、次回時計の修理が必要になったとき、あるいは時計を購入したいと思ったときには、販売するのと同じくらいアフターサービスに投資している小売店を検討してみて欲しい。これは時計メーカーにも相通じる話だが、小売業者がどこに焦点を当てているのか、長期的な目標は何なのかを知ることができるだろう。時計の未来に投資をしている店は、ただ手っ取り早く売りたいだけの店ではなく、信頼できる店だということなのだ。