trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Interview 継承と革新のミニマリズム:タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ × チーム イクザワ 第2章の全貌

タグ・ホイヤー、チーム イクザワ、バンフォード。2023年に熱狂を呼んだ三者によるトリプルコラボから待望の第2弾が登場した。時計製造の伝統、レースの伝説、気鋭のカスタマイズが再び結集した特別なカレラはいかに生まれたのか。生沢 舞氏らへのインタビューを通じ、本作誕生の背景を探る。

スイスの高級時計ブランドであるタグ・ホイヤー、日本のモータースポーツ界において存在感を発揮し続けているチーム イクザワ、そして時計カスタマイズのパイオニアであるバンフォード ウォッチ デパートメントによる2023年のトリプルコラボレーションについて、まだ記憶に残っている人もいるだろう。カレラ クロノグラフをベースに、チーム イクザワを象徴する赤・白の潔いカラーリングで染め上げられたアヴァンギャルドな時計は、都内で開催された大規模なローンチパーティをもって大々的にお披露目された。限定100本の時計は発売からまもなくして完売し、時計愛好家、そしてモータースポーツファンの記憶に強く残る存在となった。そして3年後となる今年、メンバーを同じくして、この3者による待望のコラボレーション第2弾が発表される運びとなった。  

2023年に発表された、トリプルコラボレーションの第1弾Photograph by Masaharu Wada


レーシング・ストップウォッチを再構築したカレラ グラスボックス

今作は世界限定150本で生産され、シリアルナンバーが刻まれる特別なタイムピースだ。ベースモデルには、現代のタグ・ホイヤーを象徴する39mm径のグラスボックス構造を持つカレラ クロノグラフが選ばれた。ベゼルレスの構造がドーム型のサファイアクリスタルとも相まって開放感をもたらし、往年のレーシングクロノグラフの風情を現代へと蘇らせている。

 ダイヤルに目を落とすと、ホワイトを基調としたクル・ド・パリ装飾が浮かび上がる。アプライドインデックスをあえて排し、プリントインデックスを採用することで、レーシング・ストップウォッチが持つグラフィカルな計器としての表情を際立たせている点にも注目したい。ラッカー仕上げの各針やデイトディスクには、チーム イクザワのシグネチャーカラーであるレッドが配され、第1弾同様、ホワイトダイヤルとの美しいコントラストを生んでいる。  

 特筆すべきは、6時位置のランニングセコンドを省略し、代わりにチーム イクザワのシグネチャーロゴを大胆にレイアウトした点だ。これは自社製クロノグラフムーブメントTH20-10を搭載することで実現しており、ダイヤル上のスペースをレーシングチームやパートナーのロゴに充てていた1960〜70年代のタグ・ホイヤー製クロノグラフへのオマージュにもなっている。

 なお、インスピレーション源として新たに焦点が当てられたのは、1970〜80年代のホイヤー ロードマスター ストップウォッチである。前作のDNAを受け継ぎつつも、今回はタイポグラフィやグラフィックのシンプルさを徹底的に追求し、より抑制の効いた美学を体現している。また、本作ではグラスボックスのアーキテクチャを際立たせるべく、外周のフランジ部にブラックを採用。そこにホワイトのミニッツトラックを組み合わせることで、ヴィンテージの息吹と現代的な造形美が交差する、一段と洗練された顔立ちに仕上がっている。


ミニマリズムと“おもてなし”の精神が交差する時計

モータースポーツのヘリテージ、時計製造の伝統、そしてチーム イクザワ独自のクリエイティビティは本作においていかにして交差したのか。タグ・ホイヤーCMOのジョージ・シズ氏、そしてチーム イクザワを率いる生沢 舞氏に話を聞いた。

生沢 舞/Mai Ikuzawa。ロンドン拠点のデザイン企業、Bow Wow International代表、およびチーム イクザワのクリエイティブディレクターである。元レーサーの生沢 徹を父に持ち、自動車や高級ブランドを対象としたアートディレクション事業を国際的に展開している。

ジョージ・シズ/George Ciz。2020年より、タグ・ホイヤーにおいて最高マーケティング責任者(CMO)を務める。同社のグローバルマーケティング戦略の立案および実行を統括する立場であり、2023年にはチーム イクザワとの協業による限定モデルを企画し、注目を集めた。

牟田神佑介

2023年に発表された第1弾に続き、第2弾となる今回のコラボレーションを同じメンバーで手がけるに至った経緯や背景についてお聞かせください。

ジョージ・シズ氏(タグ・ホイヤーCMO)

第2弾が始動したタイミングは、実は第1弾の発表から間もなくのことでした。前回のプロジェクトは私たちにとっても非常に楽しいもので、そこから強い友情が生まれました。時計自体が大成功を収め、市場からも高い評価をいただいたため、第2弾を作ることへの迷いはまったくありませんでしたが、とはいえ舞さんは当初から「2作目をやるからには、とにかく素晴らしいものでなければならない」と話していました。そのため、このプロジェクトはある種のチャレンジでもありましたね。

右が2023年ローンチのトリプルコラボレーション第1弾。ブラックのアウターフランジの分、新作のカレラ グラスボックスがふた回りほど小さく見える。

生沢 舞氏(チーム イクザワ)

ジョージ(・シズ)が言うように、ただ続編を作るのではなく、さらにその上を行くものを作る必要がありました。初代モデルの成功を尊重しながらも、単なる繰り返しにはしないことが最大の挑戦だったと言えます。そこで私たちは、タグ・ホイヤーのDNAに深く根ざしている70年代から80年代のホイヤー ロードマスター ストップウォッチに注目しました。そのタイポグラフィやグラフィックのシンプルさ、抑制の効いたデザイン表現は、私たちにとって重要なインスピレーション源となったのです。それと同時に、今回はより明確に“日本のデザイン”や“日本らしさ”を体現するものを作りたいという思いもありました。

牟田神佑介

ストップウォッチからの着想に加えて、その“日本らしさ”という要素は、具体的にデザインのどのような点に表れているのでしょうか?

ジョージ・シズ氏

私は日本人ではありませんが、日本の文化を深く愛しており、多大なインスピレーションを受けています。それが最も強く表れているのは“色”でしょう。日本の国旗を思わせる赤と白のカラーリングです。しかしそれ以上に、ミニマルなデザインアプローチこそが、象徴的な要素だと考えています。シンプルで美しいものを作るのは非常に難しいことですが、日本はそれに長けています。美しいけれども出しゃばらない、そんな美しさをこの時計で表現できたと思っています。

生沢 舞氏

日本のデザインは彼が言うようにミニマルであり、緻密に調整された規律に基づいています。すべての要素に理由があり、シンプルでありながら、見れば見るほど多様なディテールが見えてくる。それが日本のデザインの良さです。“less is more(少ないほど豊かである)”という哲学のもと、チーム イクザワの厳密なデザインコントロールとタグ・ホイヤーのアイデンティティを融合させました。

牟田神佑介

数あるコレクションのなかから、今回ベースモデルとして39mmのグラスボックスを採用した理由をお聞かせください。

ジョージ・シズ氏

理由はシンプルです。グラスボックスはオリジナルのカレラからインスピレーションを得つつも、現代的に、そして未来に向けて再構築された構造を持っています。私たちは伝統的な雰囲気を持たせながらも、同時にコンテンポラリーでモダンな時計にしたかったのです。加えて、第1弾のローンチ直後に登場したばかりのグラスボックスに、ワクワクしていたというのもあります。私たちもこれまでコラボレーションでグラスボックスを多用してこなかったため、このモデルを特別なものとして展開するには完璧な選択でした。

牟田神佑介

アウターフランジ部をブラックにしたり、前作にはなかったダイヤルのクル・ド・パリ装飾を設けたりするなど、各所のデザインにおいて意図されたものがありましたら教えてください。

生沢 舞氏

チーム イクザワのブランドDNAは非常に明確なので、そのアイデンティティを維持しつつ、デザインを進化させたいと考えていました。ダイヤルのグラフィックからブラックのアウターフランジに至るまで、あらゆる新しいディテールは慎重に検討されています。現代的な印象を持ちながらも、チーム イクザワのデザイン言語とタグ・ホイヤーのヘリテージの双方に深く結びついたものにすることを目指しました。

ジョージ・シズ氏

ロードマスター ストップウォッチとの出合いは、私たちにとってまさに“ユーリカ・モーメント(ひらめきの瞬間)”でした。私たちは、単に変化を加えるためだけにデザイン要素を追加したいとは考えていませんでした。すべてのディテールには、背景にあるストーリーを語る役割を与えるべきだと思ったのです。目指したのは美しいヴィンテージのインスピレーションと、現代的なカレラ グラスボックスがもつアーキテクチャを融合させることでした。過去への敬意を示しながらも、まったく新鮮に感じられるものを生み出したかったのです。その結果として生まれたのは、豊かな奥行きを備えながらも同時に見事なまでの節度と洗練を感じさせるこの時計です。

牟田神佑介

今回、7連リンクのブレスレットに加えて2種類のストラップが付属します。さらにツールボックス型のケースやトラベルポーチ、チャームなど、付属品にも独自の世界観が表現されていますが、このパッケージ全体を通じてユーザーにどのような体験を届けたいと考えたのでしょうか。

Courtesy of TAG Heuer

生沢 舞氏

私は以前から、人々の期待を少しでも超える体験を提供することが素晴らしいことだと考えてきました。日本には“おもてなし”という相手を思いやる歓待の文化がありますが、その精神をこのプロジェクトにも取り入れたかったのです。たとえば、ウォッチケースとして付属したツールボックスは私たちのモータースポーツのルーツを表現し、追加のストラップやチャームは遊び心を添えています。単に時計を購入するだけでなく、チーム イクザワというファミリーの一員になるような感覚を感じて欲しいと思いました。

牟田神佑介

最後にうかがわせてください。モータースポーツの歴史に深く根を下ろしながら、現在ではファッションやカルチャーへと独自の広がりを見せるチーム イクザワ。その唯一無二のヘリテージに、タグ・ホイヤーの伝統的な時計製造、そしてバンフォードのクリエイティブな再解釈が重なり合いました。この三者の世界観がひとつの時計として結実したことは、皆さんにとってどのような意味を持つのでしょうか。

生沢 舞氏

チーム イクザワはこれまで常にモータースポーツを軸としてきましたが、そのビジョンはデザインやファッション、そして現代カルチャーへと広がってきました。タイムキーピングはレースに欠かせない要素であり、私の家族の歴史のなかにもタグ・ホイヤーのストップウォッチが数多く登場することからも、タグ・ホイヤーは私たちのストーリーにおいて確かな存在意義を持っています。親しい友人であり、歴史への並外れた知識を持つジョージたちと一緒に取り組んだことで、ビジネスのうえで無理に作り上げたものではなく、本当に自然な形でこのプロジェクトを実現できました。モータースポーツ、デザイン、そしてクラフツマンシップへの共通の情熱を称える、素晴らしいプロジェクトになったと思います。

ジョージ・シズ氏

このコラボレーションを語るうえで最も重要な言葉はAuthenticity(本物であること)です。チーム イクザワはヘリテージ、モータースポーツ、パフォーマンス、そしてカルチャーが交差する唯一無二の存在であり、だからこそ我々にとって非常に魅力的なパートナーなのです。今回の協業は、真の友情、共有された価値観、そして互いの歴史に対する深い敬意から生まれました。タグ・ホイヤーの時計製造における伝統、チーム イクザワが持つカルチャーへのビジョン、そしてバンフォードのクリエイティブなアプローチ。これらが組み合わさることで、それぞれの要素を単純に足し合わせた以上の価値を持つものが生まれます。そんな、真に特別なプロジェクトになったと感じています。

Photographs by Yusuke Mutagami