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ホリデーシーズンも間近に迫り、今年も終わりに近づいてきた。時計愛好家にとっては、2023年を振り返ってその年のお気に入りの時計を思い返すときが来たということだ。
ショパール L.U.C 1860(トニー・トライナ)
時計ブランドが愛好家の要望に、正確に応えることはめったにない。しかし今年、ショパールは私も含め多くの人が以前から欲しがっていた、L.U.C 1860をリリースしてくれた。アップデートされたL.U.Cは、1997年に発表された、すでにほぼ完璧なドレスウォッチであったオリジナルの1860をさらに進化させた。まず36mmのケース、ギヨシェ文字盤、そしてCOSC認定の美しい自社製マイクロロータームーブメントなど、1860の持つ本質的な部分は踏襲。さらにそこからショパールはいくつかのアップデートを行った。
最も重要なのは、6時位置にあった日付窓を廃して、シンプルでバランスの取れた文字盤にしたことだ。ショパールはその後、サーモンコッパーダイヤルを持つスティールケース(今回が初)をモダンな1860に収めた。新しいL.U.C 1860は復刻版ではなく、1997年のオリジナルが進化したかのように感じるほど、オリジナルとは異なっている。これは現代的でドレッシーな時計のプラトニックな理想に限りなく近い。最近では多くのブランドが商業的な制約に縛られている。バイヤーはより大きな時計や日付窓を、そしてドレスではなくスポーツを求めていることは言うまでもない(と言われている)。しかし、ショパールのような独立した家族経営のブランドは、これらの想定される既成概念をすべて打ち破ることができるのだ。
客観的に見てもショパールL.U.C 1860は2023年最高のドレスウォッチだ。さらに私にとっては2023年のベスト・ウォッチである。まあ今ちょっと挑発的なことを言ってみた。同僚がこのカテゴリーで受賞ウォッチを選ぶのが難しかったのはわかっている。というのも、少なくとも何人かのエディターが私のところに来て、“ああトニー、君に私の選んだベスト・ドレスウォッチを奪われたよ”と言われたからだ。
やはり、そうだろう。
トニー・トライナ、エディター
カルティエ タンク ジュエリーウォッチ(マライカ・クロフォード)
誰もこのカテゴリーの予算を教えてくれなかったので、思い切って25万5000ドル(日本円で約3621万5000円)するタンク ジュエリーウォッチを選ぶことにした。春に開催されたWatches & Wondersでひと目だけ見たのだが、プレゼンでは見られないと知って心から後悔していた。試着はしていないが、その職人技に心から感心するとともに、物欲に駆られながら食い入るように眺めていたのだ。
これはカルティエが、宝石と時計を融合させた最高のモデルだ。カルティエはアール・デコ調のダイヤモンドで知られ、またタンクウォッチでもよく知られている。では、その真ん中あたりで交差するのはどうだろう? 大手ブランドがジュエリーウォッチを展開した場合、ある程度予測できることが多い。それでもカルティエは、普通のフラワーダイヤモンドモチーフよりも、もう少し実験的なことをする力がある。
スミソニアン博物館の展示品でも、ミッドセンチュリーな社交界にいる名士の手首にも、次のメットガラに出るリリ(RiRi)の手首にもつけられるかもしれないし、もしかしたらバレンシアガのブーツの上にも同じようについているかもしれない! 誰にでも等しくふさわしい、アール・デコ調の宝物のようだ。誰にもわからない!
マライカ・クロフォード、スタイルエディター
ロレックス 1908(ダニー・ミルトン)
今年のWatches & Wondersで、ロレックスは滅多にしないことをした。まったく新しいセグメントの腕時計を発表してチェリーニのラインを廃止し、1908を発表したのだ。後者は、チェリーニの精神的な後継モデルとして機能しているが、ブランドの歴史的な傾向である中核的なドレスウォッチ作りを意識している。さらにデイトナなど、一部のモデルにシースルーバックを採用するという、ブランドの新たな取り組みの一環でもあった。なかでも1908は、ほかに言い表せないほど魅力的なモデルだ。
私はロレックス派かもしれないが、ドレスウォッチ派ではない。ただ1908は私に語りかけてきたのだ。“3・9・12”(オープン9含む)のデザインと、スモールセコンドのクラシックなアプローチにより、ドレッシーな外観を与えている。サイズは39mm径とやや大きめだが、貴金属の重厚感も相まって装着感は良好だ。私が選ぶのは、間違いなくブラックダイヤル×イエローゴールドモデルだ。マットなブラックはヴィンテージ感を醸し出すし、ドレスウォッチではあまり見かけないからである。これが私のイチオシだ。
ダニー・ミルトン、編集長
カルティエ ベニュワール バングル(ベン・クライマー)
カルティエは常にドレスウォッチの分野で力を発揮してきた。今やその実力は、我々が同カテゴリーで1、2、3、いや待てよ、4本のカルティエをセレクトしたことからも明らかだ。私がチョイスしたのは、ここ何年か見たなかで最高と呼べるひとつだ。しかも駆動はクォーツ。Watches & Wondersで見てからすっかり夢中になった、ベニュワール バングルである。YGバングルの密度、時計自体のエレガントさ、そして男女を問わず身につけられるデザインがいい。
ここ数年で最もエレガントな時計だと思っている。これが登場した瞬間、私は妻のために1本注文をした。納品はちょうど結婚記念日に間に合った。いままでの人生で、新しい時計を持っている人をこれほど羨ましく思ったことはない。すべてが完璧で、レジェップのCAと同じように、70年前に作られた時計のようにも感じられるのだ。
ベン・クライマー、創業者
ノモス グラスヒュッテ テトラ アルーア ローズ(エリン・ウィルボーン)
モダンなバウハウスにインスパイアされたデザイン精神、洗練された自社製ムーブメント、フォーマルでありながらドレスに寄り添ったドレスウォッチのセレクションなど、ノモス グラスヒュッテは私が好きで好きで仕方がないブランドだ。別のStaff Picks記事の選び方ではわかりにくかったかもしれないが、私は極端な形であれ、シンプルなカラーダイヤルであれ、色で遊ぶことを恐れない時計が好きだ。2023年の私らしい、と付け加えてもいい。
今年の初め、ドイツの独立系ブランドが、スクエア型で展開するテトラシリーズの最新モデルを発表したとき、私はすぐにライトピンクのモデルに引かれた。リーズナブルな価格で、ほどよくクセがあり、33mm径というサイズは私の華奢な手首には最適だった。そして何よりピンク色である。私の思うドレスウォッチのあるべき姿の条件をすべてクリアしているのだ。
エリン・ウィルボーン、コピーライター
カルティエ プリヴェ タンク ノルマル(マーク・カウズラリッチ)
今年のベスト・ドレスウォッチをどれにしようか、迷わなかっただろうか?
カルティエがWatches & Wondersでタンク ノルマルを発表すると噂を聞いたとき、私は大喜びした。カルティエが過去にリリースした腕時計の復刻版を展開するのは予想できるが、オリジナルがあまりにも優れていると、文句をつけるのは難しい。そう考えると、これは私が最も楽しみにしていた時計のひとつである。
ヴィンテージカルティエは流通市場で好調を維持している一方、新しいタンク ノルマルほど、メゾンのヴィンテージマインドを取り入れた時計はない(昨年のペブルを除いて)。しかしペブルはヴィンテージカルティエのディープな愛好家だけに向けたファンサービスであったのに対し、ブランドは古参ファンにも新規ファンにも受け入れられるような好まれる時計をつくりあげた。
とはいえこの1年のあいだに、考えが少し変わったことがひとつある。それはノルマルから多くのモデルがリリースされたが、そのなかの真のスリーパーヒットはYGブレスだったのではないかということだ。シルバーの針を持つプラチナウォッチの文字盤は、新しい金無垢ノルマルにはない視認性の問題に悩まされる。またブレスレットはYGバージョンのほうが手頃な価格で、市場にあるヴィンテージノルマルともよく似ている。しかし、どの方向に進んだとしても、間違いはないと思う。100年前も現在も、これが典型的なドレスウォッチである。もちろんショパール L.U.C 1860を推す声もあるだろうし、それを選んだ人を恨むつもりもない。
私が実機レビューで述べたように、オリジナルのノルマルを尊重しつつ、より実用的で着用可能なものにするために、変更したい点はまだいくつかある。しかし、莫大なプレミアムもなく量産のブリック(レンガ)ブレスレットが登場しただけでも、ヴィンテージカルティエを愛する私の心は揺さぶられた。個人的な特注品に少し手を加えたとしても、これが今年最高の時計の1本であることには間違いない。
マーク・カウズラリッチ、エディター
カルティエ タンク サントレ リ エディション(リッチ・フォードン)
確かにカラトラバは素晴らしいが、今ではカルティエほどドレスウォッチカテゴリーを確立しているブランドはない。象徴的な文字盤デザインと忘れられないケースシェイプの両方で、エレガントさを表現している。サントレはカルティエウォッチのオリジナルデザインのなかでもお気に入りだ。大きくて、手首にフィットするようにカーブさせたものが個人的な好みであることは承知している。不思議だね。
2023年発表のタンク サントレ リ エディションは、タンク サントレそのものではなく、プラチナ製タンク サントレの誕生100周年を記念したモデルだ。ちょっと言い過ぎかもしれないが、なぜカルティエが私のお気に入りのドレスウォッチをつくったのかが問題ではない。カルティエがそれをつくったという事実だけが重要なのだ。本物のヴィンテージサントレを、たとえプラチナで修復しても35万ドル(日本円で約5966万8000円)以上はする。新品のリ エディションでさえ私には手が届かないが、“本物の”ヴィンテージ(それと同等品)よりかは手が届く。復刻版としては完璧なレシピだ。サファイアカボションのほうがより好みだが、カルティエがこの少しクリーミーな文字盤の仕上げで魅了してくる。買うだろうか? ノー。では2023年に発売された最高のドレスウォッチだろうか? イエス!
リッチ・フォードン、VIPアドバイザー
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ(ジェームズ・ステイシー)
基本的にチタンなら何でもいい(できれば旅行に最適な機能が付いたものがいい)僕にとって、ドレスウォッチの必要性は明らかに限られている。にもかかわらず、僕はこのカテゴリーにとても思い入れがある。JLCは今年、僕が愛用するドレスウォッチ、レベルソ・トリビュートの片側にクロノグラフを追加した魅力的なモデルを発表した。
この結果、回転可能なケースの片側に美しいドレスウォッチがあり、もう片側には何らかの複雑さや、より空想的な時刻表示機能を提供するという、僕がレベルソの世界で最も好きなもののひとつを形成した。トリビュート・クロノグラフはまさに、“ふたつの時計がひとつになった”ような時計で、ドレッシーな文字盤は時刻表示のみ(秒針すらない)、もう一方の文字盤はレトログラード式の30分積算計を備えたスケルトンダイヤルという、まさにジャガー・ルクルトらしいクロノグラフを表現している。
もし幸運にも手に入れたら、ドレスアップするための言い訳を探しているだろう(あるいは、ただ身につけて気にしないようにする。ドレスデニムとかどうだろう?)。いつかYGオプションが追加されることを期待している。
ジェームズ・ステイシー、リードエディター
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