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Hands-On カルティエ タンク アメリカンにイエローゴールドモデルが登場

ワンサイズで全員に合うわけではない。これはラージ、スモール、ミニのサイズ展開で提供される。

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Photos by Mark Kauzlarich

今年初め、カルティエはミニサイズのタンク ルイ カルティエを発表した。小柄な手首はもちろん、大柄で毛深い手首にもよく似合うミニはInstagramで華々しく紹介され、一躍話題となった。実はこのミニLCには年上のいとこが存在する。それが今回新たにイエローゴールドで登場したタンク アメリカン ミニだ。このミニモデルはスモールとラージサイズが同時にリリースされた。そこでスモールとミニを実際に手に取って、よりわかりやすい比較を行うことにした。

Cartier Tank Américaine Small and Mini

 タンク アメリカンは1989年に初めて発表され、当時の大き目な時計に対する現代的な需要に応える形で登場した。YGでつくられ、タンク サントレにインスパイアされたカーブを描くケースが特徴だったが、よりコンパクトでがっしりとしたシェイプを持っていた。そのあとアメリカンはデイト機能やクロノグラフなど、さまざまな機能を備えた多彩なバージョンが展開された。昨年、カルティエはタンク アメリカンのラインを控えめながらも視覚的に分かりやすいデザイン変更を加えて刷新し、ステンレススティールやローズゴールドの新作モデルを、ダイヤモンドやブレスレットのバリエーションとともに発表した。アメリカンはより薄く、よりスリムで、より洗練されたデザインとなり、タンク サントレのオリジナルモデルに1歩近づいたといえる。

 現在、時計愛好家たちは小さな時計に夢中になっている。だが同じ愛好家たちが巨大なタンク サントレに熱狂している姿も見受けられる。だからこそ、カルティエが最新モデルで過去のデザインを繰り返すのも理解できる。2017年にA Week On The Wristで試したミディアムサイズのアメリカンは廃止され、今残っているのは44.4mm×24.4mmのラージサイズ(ヴィンテージのジャンボサントレに近い9リーニュ、約2cm)、35.4mm×19.4mmのスモールサイズ(ミドルサイズのヴィンテージ サントレに近い8リーニュ、約1.8cm)、そしてヴィンテージの“レディース”サントレに近い28mm×15.2mmのミニサイズだ。

Tank Américaine Small model

 新しいアメリカンのYG製ケースは、サテン仕上げの側面、レール部分にはポリッシュ仕上げが施されており、エッジの輪郭がより際立っている。このケースはスモールやミニサイズであっても建築的な印象である。表面はまるでミース・ファン・デル・ローエのブルーノチェア フラットバーのように滑らかだ。ケース裏側にはカーブした裏蓋が採用されており、タンク サントレのような劇的なカーブではないものの、十分に曲線的に見えるデザインだ。結果技術的に製造しやすくなりながら、湾曲しているように見える時計が誕生した。

 ミニとスモールのダイヤルはどちらもいたってシンプルだ。両モデルともシルバーのバーティカルサテン仕上げが施され、すべてのアメリカン同様、チャプターリングの両端がケースのカーブに合わせて湾曲している。そのためダイヤルには多くの余白が生まれ、ローマ数字がより際立つデザインとした。サントス ドゥ カルティエやタンク フランセーズ、1950年代以降のタンク サントレと同様、八角形のサファイア製リューズはフラットでファセット加工が施されている。スモールとミニモデルはともにクォーツで動き、30mの防水性を備えている。

Cartier Tank Américaine Dial
Cartier Tank Américaine crown
Cartier Tank Américaine Dial buckles

 再びスモールウォッチの話題に戻ろう(これは至るところで話されている)。ときに、まるで“ワンサイズで全員に合う”ような時代に生きているように感じることがある。そして個人的な好みを内に秘めておくプレッシャーが重くのしかかる。“その小振りな時計、君にも僕にも…そして、この部屋で試着したすべての人に似合っているね”と、明らかにつくり笑いを浮かべながら言うのだ。なぜなら、時計愛好家の選ぶ権利を否定してはならないのだから!

 このような状況では、誰もが持っていた何がよいかという感覚が政治的な空気のなか消え去ったように思える。そんなときこそ、カルティエのようなブランドに解決策を求めるべきだ。彼らは3つのサイズでアメリカンを提供しており、いずれも見た目はほぼ同じ(ケースのサイズの違いを除いて)である。ラージ、スモール、ミニから選べるというのは、2024年における時計界の民主主義といえるだろう。時計のサイズやミニモデルが話題になる今日だが、カルティエは100年近く前からさまざまなサイズの時計を提供してきた。またどのモデルの最小サイズが真に“女性向け”としてつくられたものなのか、実際にはよく分からない。

 はっきり言っておくが、誰でも好きな時計を自由につけられるべきだという考えをこれからもずっと貫くつもりだ。ただスモールウォッチを推奨する風潮を押し付けないでほしい。自分の意志で選ぶことはできるから…もしそうする気になればの話だが。そして私は実際、YGのタンク アメリカン ミニ(そしてWatches & Wondersで見たミニLC)を手に入れた

 YGモデルが登場するまで、自分がタンク アメリカン好きだとは言えなかった。ずっとタンク サントレ派だったし、正直アメリカンは今のところサントレに手が届かないけれど、アメリカンならというサントレ派向けの時計だ。スモールのYGは1万1600ドル(日本円で約165万円)、そしてミニのYGは122万7600円(税込)だ。

Cartier Tank Américaine small and mini models on wrist

 ヴィンテージノルマル、シノワーズ、サントレに対する執着以外で、より商業的に流通しているタンクに引かれることはあまりなかった。しかしタンクをつけると何かたまらない(いい言葉が見つからない)、控えめでありながらも抗えない魅力がある。仕立てのいい黒いパンツとパリッとした白シャツというシンプルなスタイルに、袖口からタンクがちらりと見える女性になりたいと憧れているのだ。もしかするとこのYG製アメリカンは、ミニマルな美学を最大限に表現するための切符なのかもしれない。アメリカンは控えめでありながらも、太めのブランカード(フランス語で担架の意。タンクのケース側面が担架のハンドルに似ていることからその名がついた)が手首で存在感を示している。そのカーブにより手首のラインに自然にフィットし、肌に完全に平らに乗るのではなく、より個性的で官能的な印象を与えてくれる。

Cartier Tank Américaine mini

 ミニとスモールのあいだでしばらく悩んだ結果、スモールのほうが自分にしっくりくると感じた。ただクロコダイルストラップは外して、シンプルなカーフレザーに付け替えたいと思った。そこにいつものレイヤーやカラフルな服、たくさんのジュエリーと一緒にこの時計をつけるだろう。なぜならミニマルやミニというスタイルは、自分らしくないからだ。

カルティエ タンク アメリカンは、2024年9月末より発売予定。詳細はこちらをご覧ください。