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A Week On The Wrist IWC パイロット・ウォッチ・マークXVIIIを1週間レビュー

比較的シンプルなパイロット・ウォッチが多くの層に熱狂的に迎え入れられていることは、現代の時計製造における最も興味深いパラドックスのひとつだ。


この記事は※本記事は2016年4月に執筆された本国版の翻訳です。

IWCマークシリーズに関して私が初めて読んだのが、時計師の資格を持たない時計ライターであり、(もちろん)皆のお気に入りの業界きっての碩学であるウォルター・オデット氏の“マークⅫをチューニングする”特集だった。彼は文中でこのマークⅫを“パイロットとは無縁の人々に愛されるパイロットウォッチ”と評した(私がオデット氏をあえて時計師の資格を持たないと書いたが、もちろん彼がプロの時計師ではないものの、控えめに言っても彼はムーブメントに関して精通した人物だ)。少なくとも当初は、ムーブメントから最高の精度を引き出すために調整を試みる実験がマークⅫよりも関心が高かったのだが、他の例に漏れず次第にそのシンプルさ、明瞭さ、視認性の高さ、そして語るべき歴史を持つマークⅫそのものに惹かれていき、以来マークシリーズの進化と系譜に並々ならぬ関心を持って注目するようになった。

 マークXVIIIは概して特別な気を遣わずに毎日身につけられる時計であり、もちろんそれは誉め言葉である。装着しているうちに(実際1週間を数日オーバーしてしまったのだが)、手に取って、腕に巻いて、時刻を確認するとき以外は意識することがなくなるのに時間はかからなかった。直径40mm、厚み11mmのケースは程よくズッシリとしており、そのサイズは質実剛健な外観といえるが、パイロットウォッチとして使用するのでなければ、時計そのものが目立ってしまうことはない。

 使い勝手のよさに大きく貢献するのは、裏地に鮮やかなオレンジのライニングを施した、見るからに耐久性の高そうなサントーニ製のカーフストラップである。もちろん腕に巻いていると見えることはないのだが、マークXVIIIを腕から外した際に目を引く一瞬がこの時計の装着体験に彩りを添えるのである。小さな工夫だが、その効果には好感が持てる。ストラップも時計本体と同様、かなり重厚な印象を持ち、最初は硬めだが数日で革が馴染んでくる。おそらく数週間毎日使用後も、美しくエイジングを重ね、タフネスさを損なうことなくしなやかな快適さを維持するだろう。さらに時計と同様、酷使に耐えられる印象を与えながらも、過度に注目を集めることもない(少なくとも一度は身につけられたものであれば)。ストラップ、時計本体共に信頼できる道具といった印象だ。

 直射日光から、完全な闇まで想像しうるいかなる照明環境にあっても、ダイヤルの高いコントラストと惜しみなく塗布された夜光塗料のおかげで時刻は読み取りやすい。私が着用したことのあるトーチのような明るさを放つ時計ほどではないが、マークXVIIIに塗布されたスーパールミノバの最大発光量が減退したあとであっても、時刻をはっきりと確認することができる。それでいて、シンプルでツール然としたデザインによって極めて万能時計らしく仕上がっているのだ。

 奇妙にもマークXVIIIもXVIIも名目上はスポーツウォッチとされながら、前者の方がよりスポーツウォッチらしいと個人的に感じるのは、おそらく後者のデザインで賛否両論を呼んだ高度計のようなデイト窓が廃されたからだろう。シンプルなデイト窓に回帰したマークXVIIIは、より普遍的なフィーリングを持ち、どのような装いにおいても、ブラックタイ(セミフォーマル)以外なら着回しできる。立派な体躯を持ち、男性的な身のこなしが板についた男ならタキシードのアクセントに合わせるのもアリだろう(この種の着こなしは相当な自信を要するが、もし自問自答して少しでも臆するようならやめておいた方がいい)。

 さて、そのデイト窓についてもう少し掘り下げてみるとしよう。マークシリーズへのデイト窓の追加は、多くの人を取り返しがつかないほど怒らせずには成し得なかったこと、マークXII以降のシリーズに搭載されたデイト窓に対する非難、それも日付を(そっけない白文字で)表示するなどマークXIの質素な美を損なうとする、一部の人達の非難が長年の私の印象を培ってきた。だからマークXVIIIのデイト窓の位置が変わったからといって、今さら長年の非難が覆ると誰かが主張するとは思えない(予想するまでもなく、この点についてマークXVIIIのレビューサイトのコメント欄では活発な議論が交わされている)。議論は基本的に2点に絞られ、1点目は、デイト窓の配置(ダイヤル上の他の装飾より端からわずかに離れている)であり、2点めはデイト窓のそもそもの存在意義の是非である。

 どちらにせよ、私はこの論争に真剣に取り合う気にはならない。なぜなら私が手に入れた時計には、たまたまデイト表示がないものが多く(それも個人的な好みである)、デイトを見ることも忘れがちなのでマークXVIIIにデイト表示があっても気にならないからである。デイト表示廃止論者には完全に共感するものの、無視できる程度のことでもあり、実用上(1週間半ものあいだ日常生活を共にした限り)差し障りがなく感じたのも事実である。そうはいっても、もし画像を見てデイト表示が気に喰わなければ、マークXVIIIを実際に腕に巻いたときの拒否感は拭えないだろう。

 マークXVIIIは極めてシンプルな時計ではあるが、その背景には長い歴史があり、この時計を楽しめるかどうかは、一般的にその歴史にどれほど親近感を持っていて、さらには長い歴史のなかのいつの時代に共感を覚えるかにかかっている。私にとって、この時計は身につけていて満足感を覚えるものだった。単純にして簡潔、驚くほどの視認性の高さ、装着性の高さを誇ることに加え、私は非磁性体やシリコンを使用せず軟鉄製インナーケースやダイヤルを採用して耐磁性を獲得した時計に目がない人間でもある(そこに合理的な理由など存在しない‐単にそれがセクシーと感じるのだ)。もちろんそれは古典的な手法なのだが、ロマンを感じさせてくれるのだ。そう、離陸前にアフターバーナーを点火するパイロットのように。もちろん私はパイロットではないが、本格的なパイロットウォッチは、いわば後部操縦席から別世界を覗かせてくれる窓のような存在だ。だからこそマークXVIII が持つ世界観は、私をデスクではなく操縦席に座っている気分に浸らせてくれるのだ。

IWC パイロット・ウォッチ・マークXVIII 直径40mm×厚み11mm、耐磁性能確保のために軟鉄製インナーケースを装備。画像はブラックダイヤル;両面無反射コーティングを施したサファイアクリスタル風防、“気圧の急激な低下にも耐えられる程度の”防水性能は6気圧/60m。ムーブメント:Cal.30110(ETAベース)、IWCによる温度変化5姿勢調整済み、デイト付センターセコンド、42時間パワーリザーブ、価格57万2000円(税込)。詳細はIWC公式サイトへ

マークXVIIIとマークとXVIII“ル・プティ・プラン”の両機の比較、マークXIと両機との対比についてはこちらをご覧いただきたい。