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Photos by TanTan Wang
あなたが最後に長江スナメリについて考えたのはいつだろうか? おそらく、一度もないだろう。しかしオリスは最新作の長江スナメリ リミテッドエディションをとおして、絶滅危惧種であるスナメリへの関心を引き寄せようとしている。これはヘルシュタインを拠点とするこのブランドが、さまざまな分野の保護活動を支援するために継続的にリリースしている限定モデルの最新作だ。HODINKEEでは、過去にオリスがビリオン・オイスター・プロジェクト(Billion Oyster Project)やコールソン・アビエーション(Coulson Aviation)、ブレスネット(Bracenet)、ダットワットなどと連携して発表したモデルを取り上げてきた。私がオリスとその活動支援の取り組みについて常に敬意を払っているのは、その地に足のついたアプローチと志だ。これらの限定モデルにおけるブランドの主な目標は、例えばアップサイクルされたプラスチックダイヤルを限定生産することで物質的な変化をもたらそうとするのではなく、こうしたトピックについての会話を始めるきっかけとなる時計をつくることにあるからだ。これは長年にわたるオリスの哲学の変わらぬ一部であり、この新作もその伝統を引き継いでいる。
この新しい長江スナメリ リミテッドエディションは、中国の長江保護基金(Changjiang Conservation Foundation)とのパートナーシップによるものだ。この組織はアジアで最も長く、世界で3番目に長い川である長江の回復と保護に専念している。オリスは長江保護基金への“多額の金銭的寄付”に加え、同組織に8本の時計を寄贈し、今後開催されるチャリティオークションでの収益も河川保護活動に充てられる予定だ。しかしストーリーテリングの観点から見れば、焦点はすべてスナメリにある。その試みは成功していると言えるだろう。私自身、これまで想像もしなかったほど長江スナメリについて多くを学んだし、これを読んでいるあなたもきっとそうなるはずだ。これは(私の個人的な意見では)とてもかわいいハクジラ類(ネズミイルカ科)の一種で、長江の固有種であり、悲しいことに中国に残された最後の淡水性海洋哺乳類である。幸いなことに、保護活動によって個体数の減少傾向は反転しており(オリスは2022年の調査を引用し、約1249頭が残っていると推定している)、さらなる努力が個体数の回復につながることが期待されている。
さて、時計そのものを見ていこう。海洋哺乳類へのトリビュートとしてデザインされたこの限定モデルが、オリスのモダンなダイバーズウォッチであるアクイス(2024年にプロポーションと装着感が改良されたモデル)をベースにしているのは、実にふさわしい選択だ。よりコンパクトなダイバーズウォッチを求める人々には残念だが、昨年のニューヨークハーバー リミテッドエディション IIと同様、今作も直径43.5mm×厚さ13.1mmというサイズで登場した。アクイスのラグデザインのおかげで、ラグ・トゥ・ラグ51mmというのは決して短くはないものの、その直径に比べれば比較的小さく感じられる。以前、オリスの関係者になぜこれらの限定モデルはより普遍的に受け入れられそうな41.5mmではなく、大きなサイズで展開されるのか尋ねたことがある。彼らは明言を避けたが、どうやら43.5mmバージョンはとても好調で、販売データは嘘をつかないということのようだ。
本作のダイヤルは、川を思わせるブルーグリーンの色合いを持つ、ユニークなマザーオブパール(MOP)が目を引く。興味深いことに、ダイヤルベース全体がMOPであるにもかかわらず、最終的な仕上げではこのきらめく素材は控えめに使われている。ダイヤル上の波線をとおしてその輝きを見せているのだが、オリスによればこれはスナメリが発する超音波のクリック音の波形にインスパイアされたものだという。ダイヤルの残りの部分は、プリントされたブルーグリーンの層で覆われている。MOPダイヤルなのだから、もっと見えるようにして欲しいと思う人もいるかもしれないが、私はこの効果がとても魅力的に機能していると思う。虹色の筋が型にはまらない視覚的なインパクトを与えつつ、ダイヤルの視認性はきわめて高く保たれているからだ。ダイヤルをよく見ると、それらの波の有機的な質感が見て取れ、その出来栄えには満足させられる。もしひとつだけ細かいことを言うなら、適切にカラーマッチされた日付窓、あるいは少なくとも開口部を金属製のフレームで囲んで欲しかった。
一部の旧型アクイスモデルに見られた風変わりな選択、タングステン製のベゼルインサートが復活した。全面ポリッシュ仕上げを施したタングステンは、セラミックのような高い光沢感を放ちながら、グレーのメタリックな外観を提供する。間違いなく指紋がつきやすいが、ケースのほかの部分とよくなじみ、波模様のダイヤルを際立たせている。時計を裏返すと、こちらをまっすぐ見つめるスナメリのかわいらしいエングレービングが現れ、外周にはエディション名と、1249本の限定数を示すシリアルナンバーが刻まれている。価格は50万6000円(税込)で、セリタ SW200-1をベースにした自動巻きのCal.733を搭載し、パワーリザーブは41時間、振動数は2万8800振動/時だ。これはセリタ製ムーブメントを搭載したほかのアクイスコレクションとほぼ同水準であり、MOPダイヤルを採用したことで約6万円のプレミアムが上乗せされている。オリスがこの価格帯で興味深い新作を出し続けてくれるのはうれしいことだ。これにより自社製Cal.400を搭載した、より高価なモデルへのステップアップをためらっている人々も大いに楽しむことができるからだ。
装着してみると、これは実に楽しい1本だ。確かに時計は大きいが、私がこれまで試着した43.5mmの時計のなかで最も小さく感じることは間違いない。その大きな理由は一体型ブレスレットのデザインにあり、写真でわかるように、ケースの端からすぐに下に垂れ下がるねじ込み式のエンドリンクのおかげで私の16.5cmの手首でも着用可能だ。しかし短いエンドリンクはダイヤルの存在感をより際立たせる結果になり、この大きな直径ではその印象は否めない。一方で、直径が大きいということはダイヤルにもう少し余裕が生まれることを意味し、マザー・オブ・パールの波模様がその自然な質感をすべて表現するのに適切なサイズ感を与えている。よく考えてみると、より小さなダイヤルではそのインパクトの一部が失われてしまうかもしれない。時計のそのほかの部分はクラシックなアクイスそのもので、ブロック状のがっしりとしたシルエットと、あらゆる状況に対応する300m防水性能を備えている。
今年初めの大ヒット作、ビッグクラウン ポインターデイト “ブルズアイ”に続き、この長江スナメリ リミテッドエディションがリリースされたことで、オリスは約55万円以下のセグメントが健在であることを示している。今年はまだ始まったばかりだ。独自の道を歩み続けているブランドが、今後どのように展開していくか楽しみでならない。
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オリス 長江スナメリ リミテッドエディション