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これはバーゼルワールド2018で、最も話題を呼んだ2つの時計のうちの1つだった。ステンレス製のペプシベゼルGMTマスターが、再び登場したのだ(最も話題を呼んだもう一方は、もちろんチューダー ブラック ベイGMTだ)。神とハンス・ウィルスドルフが意図したように登場し、ロレックス愛好家たちをどれほど沸かせたかは理解できるだろう。誰が「ペプシ」ベゼルと呼びはじめたのかは定かではないが、人目を引く赤と青のベゼルは1955年に初めて登場したRef. 6542以来、GMTマスターの特徴的な要素となった。1955年に誰かが関連づけた可能は大いにある。ペプシのロゴは、1893年に「ブラッドの飲み物」として発売されて以来(名前は2〜3年後にペプシに変更された)幾度もの変遷を経ているが、赤、白、青のカラーリングは1950年からそのままだ。
SS製の最後のペプシGMTは、アルマイト・アルミニウムベゼルのRef. 16710だったが、2014年にはホワイトゴールドのペプシGMTが発表された。ロレックスファンの間では、ペプシ・カムバックの欲求が微妙な形で満たされたが、SSのペプシに対する憧れの炎をさらに大きくもした。
さて、WG製が不出来なわけではない。が、多くの人々にとって貴金属のロレックスは、耐久性があり正確で信頼性の高い本来の「道具的なロレックス」のサイドラインのようなものであった。皆、依然としてSS製のペプシGMTマスターIIを欲しがっていたのだ。新しいモデルはペプシGMTマスターに誰もが望んでいたもののすべてがあるが、もちろん、一つ前のアルマイト・アルミニウム製ベゼルバージョンからのいくつかのアップデートもある。
我々は最後のSSのペプシと新しいWGモデルの主な違いを2015年に一度レビューしたが、新しいSSモデルの文脈でもう一度見直す価値はあるだろう。特に新しいSSペプシにはWGバージョンからの技術的な更新があるのだ。まず第一に、もちろん、新しいモデルには2014年のWGモデルでデビューしたセラクロムのペプシベゼルがある。これは、アルマイト・アルミニウムベゼルと比べて技術的にかなり優れている。とにかく耐久性が高く、時と共に色褪せることがない。
古いベゼルよりも幅が広く、20世紀半ばの古めかしいかわいらしさはない。アルマイト・アルミニウムベゼルは1959年以来存在しているが、ロレックスが既存のモデルに加えるほとんどの変更と同様に、技術的な素材の観点から間違いなく優れている。
しかし、さらに大きなアップデートは、新作のSSペプシが最新のGMTムーブメントであるCal.3285を装備していることだ。3285は、アルミニウムベゼルのモデルで使用されている3186に代わるものだ(これはWGペプシRef. 116719BLROなど、他のGMTマスターIIでも使用されている)。Cal.3285はクロナジーエスケープメントとパラクロムヒゲゼンマイを使用していて、これは2015年、デイデイトに初めて採用されたものだ。
クロナジーエスケープメントの利点には、改善されたレバー形状や効率アップのためにスケルトン化されたガンギ車、および両方の部品に非磁性ニッケルリン合金を使用したことなどがある。磁気に対する耐性の強化に加えて、エスケープメントの効率向上により、パワーリザーブが大幅に長くなった。3186の稼働時間は48時間だが、3285は70時間だ。しかし精度の点では、両方のムーブメントが同じ1日あたり±2秒の基準に制御されている。週末にナイトテーブルに時計を置いておく習慣がない限り、実際の使用においておそらく2つのムーブメントの違いには気付かないだろう。
もちろん、新しいSS製GMTマスターIIと以前のモデルのもう1つの大きな違いで、オーナーにとってムーブメントよりもはるかに目につくものはジュビリーブレスレットである。(セラクロムベゼルGMTマスターIIにジュビリーブレスモデルが登場するのは初。もちろん、多くのヴィンテージモデルで正しい年代のブレスレットが見つかるが)。
ジュビリーブレスレットはGMTマスター/ GMTマスターIIの時計とは別にしても、ロレックスの歴史の中において面白いピースである。1945年にデイトジャストに付けられて登場した(1945年はウィルスドルフ&デイビス社という名で、1905年に設立された同社の40周年だった。結婚40周年は“ルビー”ジュビリーというわけだ)。ジュビリーブレスレットはまた、最初のロレックス自社製ブレスレットでもあった。それ以前はゲイ・フレアー社に依存していた(同社は1998年、ついにロレックスに買収さた。ロレックスのブレスレットの歴史についての詳細は、記事『オイスターブレスレット全史』でご確認ください)。
ペプシベゼルGMT(または、あらゆるGMT)のジュビリーブレスレットは、最もレビューすべき要素だ。すべての現行のロレックスブレスレットと同様に、美しく設計され、最上級のフィット感と仕上げを備えている。しかしジュビリーの採用は、オイスターブレスレットよりも少し装飾的になったのもまた確かだ。比較的真面目、かつ実用的なGMTマスターIIであれば、オイスターブレスの飾り気のない見た目が要求されるのではないか。快適さの問題ではない。ジュビリーブレスレットはリンクが小さいため、理論的には手首の形状により合いやすいはずだ。現行のオイスターブレスレットを使ったことがある人なら誰もが言うように、調整のしやすさと着けやすさにおいては何にも引けを取らない。では、なぜSSペプシGMT IIをジュビリーブレスレットでのみ提供し、さらに、オイスターブレスレットに交換できなくしたのだろうか。
一般的に、ロレックスの考えを読み取ろうとするには、テレパシーか何かが必要だが、明らかに考えられる理由は、SSモデルとWGモデルを視覚的に区別するためだろう。そうでなければこの2つを区別するのはかなり難しい(少なくとも、ベテランのホワイトゴールドスポッター以外には)が、ジュビリーブレスレットであることで、SSバージョンであることが一目瞭然だ。SSバージョンはWGバージョンよりも見つけるのが非常に難しい可能性があり、ジュビリーブレスは購入希望者に魅力的な選択肢として提供するのは理にかなっている。特別なロレックスを持っていることを瞬時に分からせることができ、大満足させられるだろう。理論上かつイデオロギー的には、よりシンプルなオイスターブレスレットを好むかもしれないが、ジュビリーだからといってSSペプシGMT II の売り上げをわずかでも傷つけるかといえば、そうではないと考える。
ロレックスの最も興味深い側面は、同社の歴史における現在の時点で、ヴィンテージモデルがオークションハウスや時計ディーラーにとって非常に収益性の高い商業的パワーを持っている点である(これについてはさまざまな理由からここでは取り上げないが)。一方で現行のロレックスを技術的な観点から見れば、かつてない最高の時計を作っている(この価格帯では他のどこよりも最高の時計を製造している)。ヴィンテージロレックスは確かにセンチメンタルで素晴らしいピースだ。しかし実用的な観点からは、ミッドセンチュリーの美学の最もオーセンティックな表現にこだわっていない限り、ヴィンテージとモダンの間に選択の余地はない。実際、ミッドセンチュリーの美学にこだわっていたとしても、現行のロレックスはそのルーツからそれほど遠くはない。
今では当然、人々は異なる理由でモダンとヴィンテージのロレックスを購入する(両者の理由には驚くほど似ているものがある)。やわらかく言えば、消費者たちは現行のロレックスの品不足について複雑な思いがあるのだ。一方、近年ヴィンテージロレックスの高騰と需要の増加を見て、人々の思いはもっと複雑な気持ちだ。なぜなら、機能的で見栄えの良いものが欲しいなら、 他の無数のブランドよりも現行ロレックスを一本持つことが圧倒的に効果的だからだ。
SS製のGMTマスター II 「ペプシ」の詳細についてはロレックス公式サイトへ。