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昨年の5月11日、コロナウィルスが世界的に流行していた頃、オリスのアメリカ支社はスイス本社にメールを送った。そのメールの中で、北米CEO、V.J.ジェロニモは、愛好家たちから寄せられていたある要望について説明した。それは、程よいケースサイズでレッドダイアルをもつアクイスが欲しいというものだった。
このフィードバックは、パンデミックの影響を受けてオリスが開催した、10回以上のオンラインミーティングから得られたものだ。最初は3月23日に行われたRedBar ミルウォーキー支部とのミーティングで、そこから他の都市の愛好家にもアンケートを実施した。トロント、オースティン、アトランタ、そしてオタワ。ジェロニモは「私たちは、極めて草の根的な方法で時計コミュニティに参加することで評判を得ています」と語る。5月11日を迎える頃には、愛好家たちの声が届いていた。
アメリカからスイス本社へ1通のメールが送られた後、オリスは製造ラインを動かし始めた。そして最終的に完成したのが、新しいオリス チェリーレッド アクイスだ。2014年にコレクションが登場して以来、赤いダイヤルをもつ初のアクイス ダイバーズウォッチである。
通常、スイスの大手ブランドは、社内のブレインストーミング・セッションや、外部のコンサルタントによるフォーカスグループをもとに新製品を生み出す。だからこそ、多くのメーカーが正道から外れた日付ウィンドウをもつ大振りな時計を大量生産しているのかもしれない。端的に言えば、時計は一般的に広く普及し、大量に消費されることを前提に作られている。熱狂的なファンは顧客の中でもごく一部であり、彼らの影響力が製品に反映されることはほとんどない。そのような小さな市場に対応することは、経済的にも意味がないからだ。
オリスは少し違っている。スイスでもトップ15に入る時計メーカーであり、90カ国以上で販売されているが、いわゆる独立系ブランドであるため、より柔軟性がある。アクイスはオリスの代表的なモデルの1つであり、多くのユーザーに人気のあるモデルだ。だからこそ、オリスが愛好家のコミュニティから寄せられたフィードバックだけを基に時計を作ろうとしたことは注目に値する。
スタンダードなアクイスは43.5mmだが、チェリーレッドダイヤル(オリスではサンレイチェリーレッドと呼ぶ)は41.5mmのケースに収められており、アクイスの総生産量の約10%を占める愛好家向けのモデルだ。
もう一つの興味深い点は、製作期間が凝縮されていることだ。この時計は、パンデミックの期間中に、コンセプト、デザイン、レンダリング、製造の全てが完了した。繰り返しになるが、これは何年も前から製品やリリースを計画する業界の常識を覆している。この時計が市場に出るまでの経緯は以下の通りである。
2020年3月: パンデミックは、我々の日常生活を一変させた。個人から産業界まで、誰もが“ニューノーマル”ともいえる事態に迅速に対応している。ソーシャルディスタンスを確保すること、そしてロックダウンの実施により、全てがオンラインに移行し、企業が会議を行い、友人がバーチャルに“出入り”できるビデオプラットフォーム「Zoom」が導入された。通常は直接会って行われる典型的な会合(RedBarなど)が、全てオンラインで行われるようになったのだ。パンデミック以前は、オリスはコレクターのグループに参加したり、コレクター向けのイベントを開催したりして、愛好家の世界と関わりをもっていた。それも今やできなくなってしまったため、オリスは方針を変えてデジタル化を進めた。オリスがRedBarのミートアップに初めて登場したのは、3月23日、RedBar ミルウォーキー支部のZoom callだ。
4月: オンラインでの交流が深まった。オリスは様々なRedBar支部のZoom callに参加し、時にはトロントからテキサスまでスイングして一晩に2つの支部に参加することもあった。オースティンのバーチャルミートアップでは、誰かが赤いダイヤルのアクイスをオリスのラインアップに加えたら素晴らしいと提案した。これがそのアイデアの最初の発言で、オリスは注目した。オリスはアトランタ、バンクーバー、デトロイト、ヒューストンといった大陸の各都市で開催されるRedBarのバーチャルミートアップに参加し続けている。RedBarに加えて、オリスはサンディエゴとソルトレイクシティで開催されるChronogroupによるバーチャルミートアップにも参加している。
5月: 5月6日、サクラメントでのRedBar バーチャルミートアップで、別のメンバーが赤いダイヤルのアクイスに興味を示した。5月11日、ジェロニモはこの意見をスイスの本社に伝える。グローバルCEOのロルフ・スチューダーはこのアイデアを気に入り、こう言った。「なぜ作らないのか? オリスは常に時計を購入する人々の声に耳を傾けているじゃないか」と。
6月: オリスのデザイナーは、愛好家コミュニティからのフィードバックに基づいて、レッドダイアルのアクイスの概要を与えられた。この時点では、まだキャリバー400は発表されておらず、手に入れやすい価格帯とするためにオリスのキャリバー733が選ばれた。また、オリスは愛好家からのフィードバックに基づき、41.5mmの小さいアクイスのケースを採用した。そしてこの時計のレンダリングが製作された。
7月: 設計段階が完成した。41.5mmのケースは過去に2種類製作されたが、チェリーレッドはステンレススティール製のレリーフ付きベゼルを採用した初めてのモデルでもある。デザイナーは何種類ものダイヤルサンプルを検討し、サンレイ仕上げチェリーレッドのダイヤルカラーを決定した。
8月: 時計の製造を開始。
2021年1月: 製造が完了。販売に向けた準備が進む。
2月: この時計は2月26日に発売された。このリリースに対するコメントは、愛好家の間で圧倒的に好意的なものだった。なぜなら、それは彼らのために作られた時計だからだ。そして1年も経たないうちに、世界的なパンデミックの中でオリス チェリーレッド アクイスが発売されたのだ。
振り返ってみると、ジェロニモはこの時計の製造を取り巻く異常な状況が、この時計の誕生を可能にしたと言う。そして、他の時代であれば、このようなことは不可能だったとも。なぜなら、一貫したフィードバックを受け取り、処理するのに長い時間がかかったからだ。ビデオチャットのおかげで、ジェロニモは「1ヵ月で15カ所に行きました」と話す。
しかし、この時計の最も重要な点は、時計そのものではなかった。「Zoomは、多くの人々に必要な気晴らしを提供しました」とジェロニモは言い、次のように続ける。「忘れがちですが、Zoomが彼らの唯一の社交場となり、直接会えない友人たちが集まって時計の話をしていたのです。時計は素晴らしい結果をもたらしてくれましたが、Zoom callに参加して人々と交流できたことは最高の喜びでした」
オリス アクイスデイト チェリーレッドはディープレッドのダイアルが特徴的な41.5mmのコンパクトなダイバーズウォッチで、愛好家コミュニティがコンセプトの基となっている。300m防水を誇り、同色のデイト表示と38時間のパワーリザーブを備えたオリス キャリバー733を採用している。レリーフベゼルは41.5mmのアクイスシリーズ唯一のもので、ダイヤルは“サンレイチェリーレッド”と呼ばれている。現在は標準生産モデルとなっており、リテール価格は24万円(税別)だ。
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