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Photo Report Tokyo Watch Week HODINKEE Japanナイト

時計を愛する人々が集まり、日本の時計文化のいまを語り合った一夜となった。

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10月1日(水)から6日(月)にかけて行われたTokyo Watch Weekの期間中、10月3日(金)に「Tokyo Watch Week HODINKEE Japanナイト」が東京・青山のAOYAMA GRAND HALLで開催された。

 Tokyo Watch Weekは、国産大手の時計ブランド、世界中の独立ブランドや独立時計師、そして愛好家が集まり、最新モデルや名作を通じて時計文化を共有した特別な1週間。そのなかでHODINKEE Japanが主催した本イベントは、ゲストを招いたパネルトークと、メーカーと愛好家が直接交流できる場が組み合わさった、熱気あふれる一夜であった。

 開場後来場者は続々と受付を済ませ、グラスを片手にフロアへと足を進めていった。19時の開演前から会場のあちこちでは時計談義が交わされ、ゲスト同士が互いの時計を見せ合いながら打ち解ける姿も見られた。開演時刻が近づくと、HODINKEE Japan編集長の関口 優が壇上に立ち、イベントの幕開けを告げた。

左から江口大介氏、飛田直哉氏、関口 優。

 最初のトークセッションでは、日本がいま世界的に注目を集めている市場だということが浮き彫りになった。ゲストに飛田直哉氏(NAOYA HIDA & Co.代表)と江口大介氏(ECW SHOTO)をお招きし、関口がモデレーターを務めた。

 飛田氏は、作り手と愛好家が直接つながる場が増え、その熱量が大きな輪となって広がっていると語る。江口氏もまた、ここ5年でヴィンテージが“カッコいい選択”として再評価され、小径志向やドレス回帰が強まったことを指摘。こうした流れを求めて、世界中のコレクターが良質な個体を探しに日本を訪れているという。両氏の視点を通じて、日本市場が単なる一地域にとどまらず、国際的な時計シーンの中心的な存在になりつつあることが改めて示された。

 一方で、ヴィンテージ カルティエを世に広めた第一人者である江口氏は、ここ数年、多くの新しい世代や層の人が時計の趣味の世界に足を踏み入れてきたと指摘。それ以前のヴィンテージ市場は、ロレックスが大半を占め、一部パテック フィリップやごく少数のミリタリーウォッチなど限られた趣味の世界であった。飛田氏もこの隆盛に頷き、近年のヴィンテージウォッチブームは、カルティエの人気がマーケット拡大の一助を担ったと語った。

カルティエ「タンク ア ギシェ」が復活。依然としてブランドで最も異色なタンク(編集部撮り下ろし)

 また、こうしたヴィンテージ市場の熱の高まりは、プライマリーの時計市場にも大きな影響を与えている。多くのブランドが自社のヘリテージを再解釈する動きを見せ、件のカルティエは毎年「カルティエ プリヴェ」でヘリテージを現代解釈したモデルやときに忠実な復刻モデルを発表し、入手困難な状況が続く。それは、自社に明確なヘリテージがないブランドにまで波及し、30年代ごろに見られたセクターダイヤルやオーセンティックな手巻きクロノのデザインをオマージュした時計、飛田氏が手掛けるNAOYA HIDA & CO.のように往年のハイエンドメゾンのディテールを再現すべく現代的製法と職人技を駆使してニッチなアプローチを試みるマイクロブランドも増加している。

 プライマリー、ヴィンテージの区別なく盛り上がりを見せるこの現象は、熱心な時計愛好家による研究や存在なくしては起こり得なかったものかもしれない、とパネルディスカッション第一部はそんな結論に至った。

マーク・チョー氏(中央)、和田将治(右)。

 後半のトークセッションでは、アーモリー共同創業者のマーク・チョー氏が登壇。前半に続き関口が登壇し、HODINKEE Japanの和田将治が通訳として参加。3名でカルティエでのスペシャルオーダーにまつわる体験談が語られた。

アーモリーのマーク・チョー氏がカルティエ愛好家のために18Kゴールド製ブレスレットを作り始めた理由

カルティエ愛好家のために、18Kゴールド製の特注ブレスレットを製作するプロジェクトを進行したチョー氏。その背景については、HODINKEEの記事で詳しく紹介している。

 チョー氏がオーダーしたのは、自身とアーモリーの親しい友人9名のために製作された、プラチナケースに専用ブレスレットを組み合わせたタンク サントレ。モダンカルティエにおいて、タンク サントレにプラチナブレスレットが与えられたのは初の試みだ。デザインは2022年末からスタートし、ベイビーブルーのダイヤルにネイビーマーカー、サンバーストギヨシェ、白い数字、そしてウルトラマリンのカボションを備える仕様にたどり着いた。完成までおよそ2年を要したが、チョー氏は「待つだけの価値があった」と振り返る。それは、オーダーの体験が客側からの一方的なものでなく、また、ブランドによる制限が厳しいものでもなかったから。チョー氏は、自分が出したリクエストに対し多彩なアイデアがカルティエ側から提案されたと言い、理想とする時計像を一緒に作り上げた体験こそが尊いものだったと語った。

 彼はスペシャルオーダーのこれからについても言及した。「これからは、単なる色替えや素材違いではなく、職人の手仕事や機構にまで踏み込んだオーダーが増えるでしょう」と語り、クラフツマンシップを軸にした特別なオーダーの世界が、これからさらに広がっていくことを予感させた。

 当日はブランドと来場者がテーブルを囲み、時計を前に直接言葉を交わす時間が続いた。ケースを手に取りながら意見を交わす人、時計を見比べる人、それぞれが思い思いに時計を語り合う光景が広がっていた。会場全体が終始にぎやかな熱気に包まれ、Tokyo Watch Weekならではの一体感が感じられる夜だった。

Photographs by Cedric Diradourian