ときには、映画ファンも普通のアクション映画を見たくなるものだ。批評家の賞賛を浴びるような作品ではないかもしれないが、激しいアクションや爆発が必要なときもある。アクションは、それ自体が正統なジャンルであり、『キャプテン・アメリカ』(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』)や『アベンジャーズ』(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』)を監督したルッソ兄弟が、スーパーヒーローの次元で非常によく理解しているジャンルである。しかし、彼らの最新作『グレイマン(原題: The Gray Man)』は、物事を少し現実に戻し、ウェブシューターやハンマーを振りあげたり盾を投げたりもしない、普通の人間に焦点を当てている。
S.H.I.E.L.D.の代わりに、元犯罪者が極秘裏に暗殺を行うために雇われたCIA内の秘密集団に焦点を当てた映画だ。ライアン・ゴズリングが演じるシエラ・シックスも、そんな暗殺者のひとり。与えられた仕事がうまくいかず、クリス・エヴァンス演じる悪の暗殺者ロイド・ハンセンの追跡ミッションを受けることになる。この映画は、アクションシーンにおけるルッソの手腕の見せ所であると同時に、ライアン・ゴズリングがごく最近タッグを組んだブランドの腕時計を身につけるための場でもあるのだ。1週間後にNetflixで公開されるこの映画を待っている人たちのために、この記事は完全にネタバレなしでお届けしよう。ただし、時計は例外だ。
注目する理由
本日より公開される『グレイマン』(記事執筆時。既に公開中)。先週末にはロサンゼルスのグラウマンズ・チャイニーズシアターでプレミア上映が行われ、HODINKEEはその模様を生中継した。HODINKEEでは、プレミアの様子をお伝えするとともに、ゴズリング本人から話を聞くことができた。彼がタグ・ホイヤーのブランド・アンバサダーになることが発表されたときも、我々はロサンゼルスにいたことをご存知だろう。さて、彼が就任した直後に本作の撮影が開始されると決まったことも判明。そのとき、彼はこの映画で自分の役があるタグ・ホイヤーを身につけることを提案し、ブランドは2日間でそれを彼に届けなければならなかった。
もちろん彼らは調達した。彼が身につけているのは、彼がアンバサダーに就任したときにデビューした時計だ。タグ・ホイヤーの最新モデル、カレラ キャリバー 5である。シルバーの文字盤にステンレススティールのブレスレットとストラップの2種類があり(理由は映画を見ればわかる)、彼は作品中ずっとこの時計(そしてこの時計だけ)を身につけている。
「時計はスパイ映画の一部なので、この映画には本当にチャンスがあると感じました」と、ゴズリングは映画公開の前日、HODINKEEのノラ・テイラー(Nora Taylor)に語っている。 「このキャラクターについて何かを語る機会でしたし、スパイのキャラクターを新鮮に捉えようとしました。この特別な時計はそのために役立つと思ったのです」。
ゴズリングは、キャラクターの人生でほかのものが変化しても、時計が不変であることが重要であると感じたという。「この映画では、9つのアクションシーンがあり、それぞれ異なる人格が登場します。私は目立つ赤いスーツを着ていて、途中からはトラックスーツを着ますが、時計は同じものをつけています」
カレラ キャリバー5は、このスポーツウォッチのなかでもっともクラシックなモデルだ。クリーンでシンプルなダイヤルレイアウト、そして6時位置の便利な日付表示窓を備えている。サイズは39mmのスイートスポットで、今日の同社のデザインのなかで最も保守的な部類に入る。過去に34mmのヴィンテージを愛用していたゴズリングには、まさにうってつけのモデルだと思う。タグ・ホイヤーのパートナーシップは、ゴズリングにとって初めてのアンバサダーシップだった。この時計とともに発表され、彼がこの時計を好み、この映画で自ら腕につけることを希望したことは、とてもクールなことだと思う。
そしてこの時計は、この映画のファースト・チョイスではなかったのだ。それゆえ、彼に届けるために2日間の奔走があったわけだ。「この時計は、映画のために意図されたものではありませんでした」とゴズリングは語る。「最初に検討していたブランドの時計を試着したとき、あまりにも大きすぎて、本当に実用的ではなかったのです。このキャラクターが絶対につけないようなものだと感じたわけです」。
ゴズリングがキャラクターについて考え、最終的に選んだ時計、つまりタグ・ホイヤーは、正しい選択だったと言えるだろう。我々は今、ブランドアンバサダーやプロダクト・プレイスメントについてどうこう言うつもりはないが、この時計と映画のパートナーシップは、ゴズリングが自分の役柄のために時計の選択を変更する必要があると感じた瞬間に、極めて迅速にまとまったのである。彼のなかでは、その正しい選択がカレラだったのだ。ゴズリングは、この狂気のアクション・スパイ・スリラーで、カレラを選択し、スクリーンに登場させた。
見るべきシーン
映画のセカンドシーンでタイの年越しパーティーが行われ、赤いスーツに身を包んだシエラ・シックス(ライアン・ゴズリング)の姿が映し出される。同じくスパイのダニ・ミランダ(アナ・デ・アルマス)と魅惑的なやりとりをしたあと、彼がナプキンを唇に当てるシーンがある。このとき、初めてその時計を見ることができる。それから、彼が任務のために密室に忍び込み、ジャケットを脱いで武器を組み立てる際にも、この時計が目に入る。つまり、彼のアクション映画向きのアームを彼がアーム(武装)するときに見るわけだ。
2年前のフラッシュバックシーンで、ビリー・ボブ・ソーントン演じるある人物の姪を守る任務を負ったシエラ・シックス(ゴスリング)が登場する。シックスは(映画名と同じ)グレーのスーツを着ていて、若い女の子と談笑を始める。その際、彼は両手を腰の前で合わせる。つまり、古典的なウォッチガイのポーズをとっている。そして、カメラはカレラを、私が好きなヒーローショットと呼ぶものでフレーミングしている。
ライアン・ゴズリングとクリス・エヴァンス主演の『グレイマン』は、アンソニー&ジョー・ルッソが監督、ダグ・ハーロッカーが小道具を担当。日本国内の一部の劇場で上映中。7月22日からNetflixで配信される。
HODINKEEはタグ・ホイヤーの正規販売店です。すべてのコレクションはこちらでご覧いただけます。
タグ・ホイヤーはLVMHグループの一員です。LVMH Luxury VenturesはHODINKEEの少数株主ですが、編集の独立性は完全に保たれています。
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