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HODINKEE Shopで購入可能なヴィンテージウォッチの全ラインナップについてはこちらをご覧ください。
今週のヴィンテージウォッチ
先週の水曜日にヴィンテージウォッチをセレクトしてご紹介したあと、その日のうちにAppleが、3本のApple Watch新発売というビッグニュースを発表して我々を出し抜いた。もしも“すごい”腕時計こそがあなたの本当に求めているものであるならば、新品のハイテク商品よりも過去何十年かを振り返ったほうがいいのだという具体例を、我々ヴィンテージチームが毎週ご紹介していく。腕時計の世界は人それぞれだが、この7本の新鮮なヴィンテージ品なら、誰にとっても痒いところに手が届くコレクションとなるだろう。
我々が取り上げるのは、パテック フィリップの外観が非常に異なる2本のドレスウォッチ、ジンの機能満載なクロノグラフ、そしてロレックスのシンプルな34mmのデイトだ。サオリ(Saori)、ショーン(Sean)、リッチ(Rich)がそれぞれ主要製品について下で詳しく語っているが、それ以外にも見逃せないベストな製品については上のスライドショーでご覧あれ。さらにこちらのHODINKEE Shopでも。
1970年代のパテック フィリップ Ref.3854/3 ホワイトゴールド、そして1980年代のゴールデンエリプス Ref.3989 イエローゴールド
この2年間、社会的存在である我々誰もが世界的な価値観の激変を経験してきた。人との“つながり方”は変化しても、“つながる理由”については何も変わらないことがわかっておもしろい。そして今年9月になってようやく、徐々にではあるが着実に新たな“ノーマル”へと戻りつつあるのが感じられる。人々は旅行をし、職場や学校へも再び出向くようになり、社会的なイベントに参加する機会も増えた。そしてファッションに目をやると、長い空白のあとで再びドレスアップへの欲求が芽生える。着古したパーカを脱ぎ捨て、シャープなブレザーを着る準備は整った。
また、これはきちんとしたドレスウォッチを着用することに再び向き合う絶好の機会だということにもなる。実際のところドレスウォッチは、考えてみればスポーツウォッチなどよりも汎用性が高いと思う。ブラックタイが要求されるフォーマルなイベントに素敵なドレスウォッチをつけていったあと、そのまま街のカフェへ出向くことは可能だが、分厚いスポーツウォッチをブラックタイのイベントにつけていくのは少し野暮ったい気がする。形勢は逆転したのだ。ドレスウォッチはあまりにも堅苦しく気張っているとの先入観に捉われるのはもうやめよう。実際にはドレスウォッチは楽しくてつけやすいのだと声を大にして言いたい。自分を制限しているのは自分自身であって、すべては考え方次第ということなのだ。
もしも今シーズン、ドレスウォッチにお金を注ぎ込もうとしているのであれば、世界3大時計ブランドとされるスイス時計メーカーのひとつ、パテック フィリップのものを検討しない手はない。1本はクラシックで、1本はやや前衛的。ベゼルにクラシックな“クル・ド・パリ”仕上げを施した18Kイエローゴールドのゴールデンエリプスは、大切に扱って孫の代にまで受け継ぐべき、まさに象徴的なドレスウォッチだといえる。ブラックプリントのローマ数字と黒染め処理のリーフ針とが映える真っ白なダイヤルは、華やかさのあるシンプルなレイアウトで、くっきりとして非常に読み取りやすい。2本の時計のうちのもう1本は、もっとクリエイティブだ。こちらの18Kホワイトゴールドのブレスレット一体型モデルは、その幾何学的な形状でよりニッチな印象を受けるが、同じように汎用性があり、昼から夜まで気兼ねなくつけていられる。八角形のケースとテクスチャー仕上げのダイヤルに、プレスレットが一体化されており、これがこの時計をどこかパテック フィリップらしくない意表を突いたものにしている。
この2本のパテック フィリップはどちらも厚みが非常に薄く、なかに使われているのは厚さわずか2.55mmの信頼性あるCal.215だ。このムーブメントは1970年代半ばから現在まで、同ブランドのドレスウォッチの多くに使われてきた。ドレスウォッチはほかのスポーツウォッチ部門に比べればまだまだ割安感があり、今年の秋冬に向けて先手を打つチャンスだ。
1980年代製 ジン クロノグラフ Ref.143 ワールドタイムベゼルつき
ジンはリスクを負うことを厭わないブランドだと私はずっと思っていた。狩猟に特化したデザインの時計を作ったり、どちらかといえば地味なフィールドウォッチにキャンディーカラーを加えたり、ここ最近はそう見える。しかしこのドイツの時計メーカーは、1960年代に創業したあと、タイプ20や、おそらくジンの時計では最も有名な“103”など、主にパイロットクロノグラフにこだわっていた。私の理解するところでは、103はいろいろな意味でタイプ20の後継だ。ジンの歴史をもう少し掘り下げてみると、1990年代に創業者のヘルムート・ジン(Helmut Sinn)氏からローター・シュミット(Lothar Schmidt)氏へ会社が売却されたことで、ジンは新たな時代に入ったのだと簡単に捉えられてしまうかも知れない。結局のところ、ローター氏が指揮をとった頃にさまざまなケース形状や多様なカラーといった広がりが見られるようになったのだし。
しかし、今回ここで取り上げる時計がそうではないことを証明しているというのが私の主張だ。アルミニウム製トノーケースやPVDコーティングなど、この時計は当時としては非常に実験的で、手首につけると驚くほど軽い。クロノグラフのミニッツカウンターの最初の10分に添えられた青と赤の目盛りは、もっともっと遊び心を加えようと語っているし、ワールドタイムベゼルは、私には“パイロット”というよりも“搭乗客”の気分を語っているように感じられる。そして最後に、秒針と大きな“Sinn(ジン)”のロゴを入れて賑やかになったダイヤルを見れば、ヘルムート氏が自身の名を冠したブランドの向かう先を知っていたという事実の証明になると言わざるを得ない。80年代のツールウォッチのややおもしろい側面はこちらでチェックできる。
1974年製 ロレックス オイスター パーペチュアルデイト Ref.1500
私は小さな時計が好きだ。コレクターとしての私の関心が単にヴィンテージからスタートして、そこからサイズを広げていったせいなのか、はたまたいくぶん細い腕のせいなのか(ごめんなさい、写真では力こぶを作ってます)はわからないが、 とにかく私の生活には小さい時計のほうがしっくり来る。eBayで30mmから34mmのモバードやミドーをただ同然の値段で購入しながら私は、「そう、振り子は揺れ戻るものなのだから、そのうち小さな時計がもてはやされる日も来るさ」と長年自分に言い聞かせてきたのだが、それがやっと実現しつつあるように思う。30mm以下はないにしても、32mmから36mmのまさにしっくり来るサイズが、特に若いコレクターたちのあいだで非常に人気となっているのだ。
私が考察した理屈はこうだ。若いコレクターたちは長年、目を引くモデルに恋い焦がれながらInstagramで時計を見ている。そしていざその時計を所有するときが来ると、直径が大きいスポーツモデルで特にいえることだが、やや負担に感じたりする。Apple Watchやカシオから2022年の“ペプシ”GMTへと行くのはかなりのジャンプだ。モダンウォッチが進化して、腕につけたときの大きさが増していくに連れ、より多くの時計愛好家がその反動で別ものを求めるようになる。
ちょうどよいサイズ領域にしっくりと収まり、別ものとしてすぐに間に合うのが、このRef.1500のようなヴィンテージロレックスの34mm オイスター パーペチュアルデイトなのだ。誰の手首にも存在感を醸すだけの大きさは残しながらも、ロレックスのこのジャンルはほぼ間違いなく非常に控えめな部類に入り、部屋の向こう側にいる人の目を引いたり、シャツの袖口から突き出たりすることは滅多にない。オイスターケースとブレスレットの外観や優れたデザインを持ちながら、衆目を集め過ぎたり邪魔になったりすることがない。あなたがこの時計をつけているのであって、この時計があなたをつけている体裁にはならないということだ。
このRef.1500は、サブマリーナーやGMTといったロレックスのヴィンテージスポーツウォッチとは著しく異なるものだが、ダイヤルを詳細に眺めてみると、同じマニアックな細部がたくさんあることに気づく。夜光塗料を施した小さな点やアプライドインデックス、さまざまなフォントを使っているところなど、 小さめのダイヤルなのにじっくりと探ってみるべきものがたくさんある。オイスター パーペチュアルデイトに関して私は常々、“DATE"の文字列のバランスのとり方がとても気に入っている。時には字間を大きくとったシンプルなフォントであったり、あるいはこのレファレンスのように、字間を広くとるだけでなく優雅な細い線でDATEを挟んでみたりもしている。すべての詳細はこちらで。
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