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12月のスイス時計の対米輸出は、関税の引き下げによって小売店への出荷が急増したことで大幅に増加した。しかし、この急増も通年の輸出総額をプラスに転じさせるには至らなかった。2025年の卸売出荷は、需要の減退と生産コストの上昇により金額・数量ともに減少。一部の選ばれたハイエンドブランドを除き、多くのブランドが売上と業績の悪化に苦しんだ。
スイス時計協会が木曜日に発表したレポートによると、先月の対米輸出額は前年同月比で20%近く急増し、月間の卸売輸出総額は3.3%増の21億スイスフラン(12月の平均レートで約4100億円)に達した。フランスへの出荷も急増したが、この年末の急増は、米国に輸入されるスイス製品への関税が従来の39%から15%に引き下げられたことを受けたものだ。2025年を通じて輸入関税が変動したことで、月ごとの出荷量は激しく上下した。スイスの時計ブランド各社はより有利な税率が適用されるタイミングを見計らって、最大市場である米国への出荷を急いだためだ。
12月に米国とフランスへのスイス時計輸出が急増した一方で、香港、中国本土、日本、アラブ首長国連邦は減少した。Source: Image and data courtesy FHS (Federation of the Swiss Watch Industry)
2025年のスイス時計輸出総額は、金額ベースで前年比1.7%減の約244億スイスフラン(昨年の平均レートで約4兆4000億円)、数量ベースでは4.8%減の約1460万本となった。パンデミック後の好景気により需要と輸出額が過去最高を記録した2022年と2023年に続き、2年連続の減少となる。数百のブランドと部品サプライヤーで構成され、約6万5000人の雇用を抱える時計業界が大きな圧力にさらされていることが浮き彫りになった。一方、米国市場は驚くべき回復力を見せ、消費者へのコスト転嫁や一部ブランドによる小売利益の圧縮があったにもかかわらず、2025年の輸出額はわずか0.5%の減少にとどまった。
アナリストたちは、このデータが市場の二極化を浮き彫りにしていると指摘する。すなわち少量生産のハイエンドウォッチメイカーと、より手の届きやすい価格帯のメインストリームの総合ブランドとの差だ。スイスのヴォントベル銀行の推定によれば、2万スイスフラン(日本円で約400万円)以上の時計を除外した場合、2025年のスイス輸出額は全体で約7%減少し、2年間のスパンで見ると15%も下落している。ロレックスやカルティエといったひと握りの高級ブランドや象徴的なブランドが、全体の数字を支えているのが現状だ。
「この格差は、広範囲にわたるブランドやサプライヤーに壊滅的な影響を与えていることを物語っています。彼らの多くは、ビジネスは順調だと言い続けていますが。」と、ヴォントベル銀行のスイス株式調査部門の責任者兼マネージングディレクターであるジャン=フィリップ・ベルチー(Jean-Philippe Bertschy)氏は、木曜日に公開されたレポートのなかで述べている。
「この乖離は、ジュラ地方とその周辺地域の産業基盤に重大な影響を及ぼしています。多くの部品メーカー、組み立て業者、小規模な下請け業者は主に200〜3000スイスフラン(日本円で約4万〜60万円)の価格帯のブランドを取引先としており、そこでは数量と受注残が不釣り合いなほどの圧力にさらされているのです」と同氏は付け加えた。
今回のデータは、2026年も業界にとって厳しい1年になる可能性を示唆している。貿易政策の不安定さ、米国株式市場や経済の先行きへの懸念に加え、スイスフラン高や原材料費の高騰といった国内のプレッシャーも続いている。かつてスイス時計の最大市場であり、2022年に米国にその座を譲ったアジア(特に中国)の需要はわずかな安定の兆しは見られるものの、依然として不透明なままだ。
通年データでは、スイス時計輸出市場全体ではごく一部ではあるが、アフリカやオセアニアなどの市場で成長が見られた。南北アメリカを含むアメリカ大陸地域も2025年は緩やかな成長を示したが、欧州は横ばい、アジアの輸出は減少した。
ヴォントベル銀行のアナリストは、2026年のスイス時計輸出は4%増加し、年間を通じて徐々に加速すると予測している。「数量の劇的な回復よりも、むしろ価格改定や製品構成の変化が成長を牽引し続けるでしょう。各ブランドがハイエンドモデルの価格決定力と、人気モデルの厳格な配分方針に引き続き依存しているためです」と分析している。
年末の米国や欧州の一部への輸出急増はカルティエ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルトなどを擁するリシュモンや、タグ・ホイヤー、ゼニス、ティファニーなどを傘下に置くLVMHの最新の決算報告にも反映されている可能性がある。リシュモンは直近の3カ月間において、時計部門の売上が為替変動の影響を除いたベースで7%増加したと報告。また、LVMHの時計&ジュエリー部門の第4四半期収益は、既存事業ベースで前年同期比8%増となった。オメガ、ブランパン、ミドーなどを擁するスウォッチ グループもまもなく通期決算を発表する予定だ。
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