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本稿は2018年3月に執筆された本国版の翻訳です。
ドライブ ドゥ カルティエが登場したのは、2016年のSIHHでのことだった。その瞬間から、多くの人々がこの時計に感銘を受けたのを覚えている。カルティエによる新しいデザインとして、それは極めて難しいことを成し遂げていた──カルティエらしさをひと目で感じさせながらも、過去の意匠に直接的には依存していなかったのだ。カルティエにとって完全に新しいケースデザインというのは比較的珍しい(デザイン的に見て、カルティエはきわめてアイコニックで多彩なデザインパレットを持ち、そこから無限とも思えるバリエーションを生み出せるからだ)。そんななかで、このモデルはまさに見事な成功だった。ベン・クライマーは発表当時のIntroducing記事でこう記している。「……ドライブは、まさに自分にとってのカルティエそのものだ。美しく洗練され、男性的、そして自社製ムーブメントを搭載している! そして価格は? 気に入るはずだよ」
SS製ドライブ ドゥ カルティエ。
たしかに、カルティエの自社製ムーブメント搭載、そしてステンレススティール(SS)製という条件で6250ドル(当時のレートで約67万5000円)という価格はきわめて魅力的だった。新鮮で興味深く、そしてオリジナリティのあるモデル。その後もこのデザインはカルティエにとって成功を収めたようで、日付表示付きのSS製モデルから、8万9500ドル(当時のレートで約948万円)の40mmフライングトゥールビヨンまで、9つのバリエーションが展開されている(編注;生産終了のため、現在はウェブサイトに掲載なし)。
2018年には、ドライブ ドゥ カルティエ エクストラフラットも登場した。こちらはやや小ぶりな39mmケース(オリジナルのドライブは41mm)を採用しており、このことからもドライブ ドゥ カルティエがタンクのような歴史あるモデルや、バロン ブルーのような現代的なデザインと並んでカルティエのラインナップにおいて確固たる地位を築きつつあることがうかがえる。ドライブ ドゥ カルティエが初めて発表された際、メゾンからドライブは自動車にインスピレーションを得ていると説明があったが、実際にこの時計を着けているとそうした影響を特に意識することはない。それはちょうど、タンクを着けていて戦車を意識しないのと同じようなものだ。私のドライブは、今や購入から2年近くが経過している。私の時計たちは時々、放置されていると感じているだろうが(数多くのレビュー用ウォッチを着けているせいで、自分の時計たちはしばしばウォッチボックスに置き去りにしがちなのだ)、それでもこのドライブ ドゥ カルティエは比較的多くの時間、私の手首で活躍している。
結果として、ドライブはかなり信頼できる日常のパートナーであることを証明した。デザインは日々の使用にもしっかりと耐えるものであり、多くの時計愛好家にとって41mmというサイズは一見すると黄金比でないように思えるかもしれない。だが長年レビュー用ウォッチを着け続けてきた私に言わせてみれば、実際には時計のサイズに対して、絶対的な基準が存在することはほとんどない(定期的に多種多様な時計を着用することで、普段なら疑わないような思い込みが覆されるのだ)。
プロポーションについて
ある特定の寸法は特定の時計に対して非常にしっくりとなじむものだが、それを数値で説明するのは難しい。これは単なるサイズの問題ではなく、むしろプロポーションの問題だと私は考えている。ドライブ ドゥ カルティエの場合、直径が、古典的な絶対主義者の理想である36mm〜38mmをわずかに上回っていることで、ケースのスリムさがより一層強調されている。厚さはおよそ12mmで、厳密にはエクストラフラットでもウルトラスリムでもないが、その高さの一部はドーム型風防によるものであり、実際に受ける印象としては、明らかにその薄さに目がいくだろう。この時計から感じられるのは、まさにオートクチュールの世界で見られるような、フォルムに対する繊細なコントロールである。一見、何の努力もなく成り立っているようなシルエットは、実はディテールへの徹底したこだわりによってのみ実現されるもの(そしてしばしば、オリジナルインスピレーションを丹念に磨き上げる工程を何度も経て完成される)なのだ。
そもそも、薄型でややドレッシーな時計(ドレスウォッチとは何か? という少々厄介な問いはここでは脇に置くとして)に求められるもののひとつはディテールへのこだわりだ。そして、このドライブと日常をともにすることで、そのこだわりは間違いなく感じ取れる。ダイヤル上の各要素の配置、光によって色調が変化する針、ダイヤルに刻まれたギヨシェ模様とインダイヤルの放射模様、そしてケースのカーブと呼応するようなドーム型風防のフォルム。こうした要素がすべて、意図された調和として美しく融合している。ちなみにドライブの美しい魅力を語るうえで、この風防の複雑な曲線形状はきわめて大きな役割を果たしている。この風防は、ただのラウンドドーム型ではなく、ケース全体の輪郭に沿ったクッション型である。そして縁がわずかにカーブを描きながらも面取りされた独自のフォルムを持っており、このパーツだけでも製造コストのかなりの部分を占めていても不思議ではないほどだ。
さらに、ケース自体も一見した印象よりずっと複雑だ。ベゼルやケースミドルの緩やかな内傾、ラグとラグのあいだのカーブから直線への遷移を含めた表面には、サテンとポリッシュの仕上げが施されており、独特なジオメトリーが強調されている。これにより、ケースの曲線とストラップの直線的な付け根部分とのあいだに生まれる隙間が最小限に抑えられている。
カルティエ、その名に宿るものとは?
我々、つまり真剣に腕時計を愛する者たちや、真剣に語ろうとする時計ライターたち(そんなものが存在するのだとすれば)にとって、この話題はそれほど頻繁に語られることではない。しかし、背後に確かなストーリーを持つブランドの時計を身に着けることには、間違いなく人を引きつける何かがある。個人的には、それは単にブランド信仰の話ではないと思う。そうした現象が存在するのも事実であるが、それは正しいとか間違っているというより、企業や製品との親密さの一形態として自然なものだろう。またそれは、社会的な誇示のためだけというわけでもない。もちろん、そういう側面もないとは言わないが、少なくともそれだけではない。とはいえ、見せびらかすという行為そのものにも実のところ豊かな悦びがある。これは、私自身がイエローゴールドのデイデイトを1週間着用した経験から学んだことだ。あれはまさに、スイスが生んだ消費の喜びを隠すことなく体現した時計にほかならなかった。
7時位置にあるカルティエのシークレットサイン。
むしろ私は、もっと大きな物語とのつながりを感じられることが重要なのだと思っている。カルティエは、20世紀から21世紀にかけてのウォッチデザインの歴史に深く織り込まれた存在であり、100年以上にわたって、ある種の貴族的な卓越性の代名詞であり続けてきた(1970〜80年代のマスト ドゥ カルティエは例外かもしれないが、あれでさえも今となっては一種のポップカルチャー的な魅力を放っている)。そしてあの小さなシークレットサインを見ると、いや、的確な言葉が見つからないが、やはり楽しいとしか言いようがないのだ。
ちなみにまったく予想していなかったことのひとつは、本モデルがクロノメーター級の精度を誇ることだ。ドライブ ドゥ カルティエは、秒単位の精度という魅力的な約束をするような時計ではない。にもかかわらず、私の所有するドライブはまさにそれに匹敵する性能を発揮している(もちろん、個体差はあると思うが)。日中は手首に装着し、夜はダイヤルを上にしてナイトスタンドに置いているのだが、それで1週間に約5秒しか進まない。これは、精密計時を標榜しているわけでもない時計としては驚異的なレベルである。正確に時を告げ、安定した歩度を保つという、時計とその所有者とのあいだにある基本的な社会契約がきちんと守られていると感じられるのは、いつだって心地よいものだ。そしてそれは同時に、Cal.1904-PS MCの評価をいっそう高める要因ともなっている。
心地よいほどに正確なCal.1904-PS MC。
どんな雲にも銀の裏地がある(編注;英国のことわざで、どんなに悪い状況にも必ずよい面があるという意味)というなら、どんな銀の裏地にも雲がある。そう言いたくなるような、ドライブの難点がある、いや正確にはあったと言うべきかもしれない。それは、付属のストラップとデプロワイヤントバックルについてだ。これを口にするのは正直つらい。なぜなら、この機構を発明したのはほかでもないカルティエだからだ。たしかに利点は数多い。着脱が容易であり、万が一クラスプが外れても落下を防いでくれる。だが私は、正直なところ、たとえカルティエ製であっても実際に使うとなるとあまり好きにはなれない。特に極薄ケースの時計では、このクラスプが装着感に妙なかさばりをもたらすように感じられるからだ。加えて、カルティエが採用しているこのタイプのクラスプは、長期間使用しているとストラップのレザーをうまく掴めなくなってくる傾向があり、そうなると時計がしっくりとフィットしなくなる。そのため、私のドライブは今、オーソドックスなピンバックル付きのアリゲーターストラップに付け替えられている。そしてそれ以来、後悔したことはほとんどない(たまには元に戻したくなることもあるが)。
さまざまな理由から、ドライブ ドゥ カルティエは最初の数ヵ月こそあまり着用することがなかったのだが、最近では日常使いの時計と言ってもいいほどの存在になっている。視覚的なインパクトとエレガンスのバランスが絶妙で、カルティエという名が約束するものをしっかりと体現している。カルティエは近年、意図的な戦略として、SS製モデルをより手の届きやすい価格帯で提供することに力を入れており、より多くの人々をカルティエの世界観に迎え入れ、カルティエという物語の一員になる楽しみを届けようとしている。私もその考えに大いに賛同している(ちなみに2018年に登場したサントスもSS製で、ブレスレットとストラップを簡単に交換できる新たなシステムを備えつつ、価格はわずか6250ドルだ)。そして何より、ドライブ ドゥ カルティエは、私がこれまでに着けた時計のなかでも群を抜いて楽しい存在である。それはたしかに独特の楽しさではあるが、それこそがカルティエを身に着ける喜びなのだ。
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