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The Two Watch Collectionに新しい記事を追加してから、かなり時間が経った。
この企画は、時計コレクターにはあまりなじみのない自制心をコンセプトにしている。私自身、手ごろな価格の時計をたくさん集めすぎて、結局は身につけることもなければ、眺めることすらしなくなることに悩んでいる。しかし時計のジャンルやスタイル、機能を数多く経験することは、コレクションをする上で重要なことだと思うのだ。
私は時計メディアで7年以上仕事をしているが、この仕事の本当に素晴らしいところは、さまざまな種類の時計やウォッチメイキングに触れられることだ。このような仕事をすることは、正直なところ特権であり、軽んじてはいない。そして私の財布も同様だ。私はとても多くの時計を所有しているが、そのほとんどは何か新しいことを体験したいという思いから気まぐれに購入した、忘れ去られたものだ。しかし私が持っているすべての時計、そして長年にわたって私が書いてきたすべての時計のなかで、私がウォッチメイキングにおいて最も大切にしていることを表していると考えるふたつの時計に行き着いたのだ。
ブランパンのレマン ウルトラスリム 2100とオリスのダイバーズ65 キャリバー400 リミテッドエディション for HODINKEEは、どちらも1年ほど前に私の手元にやってきた。一見してわかるほど、多くの違いがある。
一方は回転ベゼル、もう一方は日付表示を持つ。そして一方はグリーンダイヤルにサテン仕上げのケース、もう一方はブラックダイヤルにポリッシュ仕上げのケース。また一方はヴィンテージでスポーティなテイスト、もう一方はドレッシーでモダンな外観だ。さらに一方は約30年前、私が生まれる前に発売され、もう一方は昨年製造されたばかりである。どちらもスイス製だが、オリスはスイス・ドイツ語圏のヘルシュタインに本社があり、ブランパンはフランス語圏のヴァレ・ド・ジュウ(ジュウ渓谷)という時計産業の中心地からやってきた。
しかし、ケースと内部のムーブメントに関しては、驚くほどの共通点がある。ブランパンのレマン ウルトラスリム 2100と、オリスのダイバーズ65 キャリバー400 リミテッドエディション for HODINKEEは、どちらも38mmのステンレススティールケースにねじ込み式リューズを備え、それぞれ100時間以上のパワーリザーブを持つ独自の自動巻きムーブメントを搭載している。そして、どちらも現在5000ドル(約70万円)以下で購入することができる。これは私の個人的なコレクションのなかで最も高価な時計の一部となるが、あらゆることを考慮すると、相対的に価値のある提案である(例えば、38mmのラウンドケースで100時間以上のパワーリザーブを持つ、次に手ごろな時計は生産中止となったF.P.ジュルヌのオクタなのだ)。
私はこれが究極の時計コレクションだとは決して思っていない。もし私に無限の資金があったとしたら、このふたつの時計は選ばないだろう。しかし時計収集の旅を始めて約8年になる私にとって、このふたつの時計は、あらゆるタイプの時計で私が最も高く評価しているものを象徴している。それはつまり思慮深く目的を持ったデザインに、興味深いメカニズムや歴史的な拠りどころを持っているということだ。
38mmのラウンドケースに100時間以上のパワーリザーブを備えた数少ない時計のうちのふたつを購入しようとしたわけではないが、なぜか無意識のうちにここにたどり着いてしまったのである。
ブランパンのレマン ウルトラスリム 2100は忘れ去られた名作だ
レマンを見たことがあるだろうか? 1994年に初めて発表されたレマン ウルトラスリム 2100は、ブランパンが1980年代から1990年代を通じて人気のある高級時計のリーダーであったことを示す素晴らしい好例だ。
誤解しないで欲しいのだが、私は現代のフィフティ ファゾムスが大好きだし、バチスカーフをコレクションに加えたいとずっと思っていた。しかしブランパンが現在のカタログでレマンサイズの穴が空いているにもかかわらず、フィフティ ファゾムスに大きく注力しているのを見ると、少し心が痛む。
ジャン-クロード・ビバー氏がブランパンをスウォッチ グループに売却してから数年後、彼の指揮下でブランドが運営されていた時期(ビバー氏は2003年にCEOを退任)に生まれたレマン 2100は、当初からドレッシーなヴィルレコレクションに代わるカジュアルラインとしてデザインされたものだった。現在のブランパンではフィフティ ファゾムスが代名詞となっているが、常にそうだったわけではないのだ。
オリジナルの最もシンプルなバージョンのレマンは、ファセットマーカーとローマ数字の組み合わせた3針時計で日付表示を備え、38mm×9mmのSS製ダブルステップケースで、ブラックまたはホワイトのダイヤルを組み合わせたものだ。
12時位置にブランパンのサイン以外の余計な文字がないブラックダイヤルを私は最終的に選んだ。2100をコレクションに加えようと考えたとき、6時と9時の位置にあるふたつのローマ数字、12時位置の“JB”インデックス(創業者のジャン=ジャック・ブランパン/Jean-Jacques Blancpainのことで、ジョン・ビューズ/Jon Buesのことではない)、スケルトンの時・分針、そしてケースバック左側の“Blancpain”サインは私にとって過剰な演出ではないかと少し心配したことを覚えているが、実際にはまったく気にならなかった。
ケースが薄いためブランパンのサインは目立たないし、ダイヤルのステップデザインとステップデザインのケースバックの組み合わせによって、シンプルかつ全体的にまとまっている。ドリルラグの採用は、私にとってはとてもプラスの要素で、番号入りのクローズドケースバックも気に入っている。フレデリック・ピゲのCal.1151を内蔵するため、カスタマイズしたシースルーバックをオーダーした人の話を何人か聞いたことがあるが、私はまだそこまで沼にハマってはいない。
そして、このレマンで私が最も気に入っている部分のひとつ、ムーブメントにたどり着いた。私は20世紀の時計製造の歴史はフレデリック・ピゲを抜きには語れないと確信している。
私のレマンに内蔵されているCal.1151は、1988年に誕生したフレデリック・ピゲのCal.1150をベースにしている。直径27.4mm(12リーニュ)、厚さ3.25mm、28石、部品数210、2万1600振動/時、ふたつの主ゼンマイ香箱による最大100時間のパワーリザーブというスペックだ。
1980年代後半に、フレデリック・ピゲが超薄型自動巻きムーブメントで3桁のパワーリザーブを実現していたのだから、正気の沙汰とは思えない。1980年代後半、高級機械式腕時計の市場などほとんど存在しなかった時代に4日間以上駆動する超薄型ムーブメントが登場したのだ。これは時計史に残る、本当に驚くべき唯一無二の作品だ。
私のブランパン・レマンは、日常的につけることが多い時計だ。快適でカジュアルなこの時計を、ほかの時計愛好家や、フィフティ・ファゾムス以外のブランパンの時計をあまり知らないコレクターに見せるのは、いつも楽しみだ。レマンにはグランドデイトや、フライバッククロノグラフ、GMTアラームハイブリッド、複雑なカレンダーモデルなど、さまざまなバリエーションがあるが、私の琴線に触れるのはSS製の最もシンプルなモデルだ(サテン仕上げのローズゴールド製グランドデイトも私の好みに近い)。
私のレマンは2000年代前半に製造されたもので、後期生産モデルだと思うが、昨年末にブランパンのサービスを受けたばかりの、ムーブメントにシリコン製ヒゲゼンマイを追加したものをセカンダリーマーケットで手に入れた。この時計に合わせるために、ブランパンのX71ブレスレットのOEMを探すことも考えたが、私はレザーストラップが好きなため、本稿に掲載されているバーガンディのHodinkee Sedonaカーフスキンストラップにとても満足している。
このオリスが私の大好きなHODINKEEリミテッドエディションである理由
私が時計に携わるなかで目撃した最も興味深いな傾向のひとつは、さまざまなブランドが自社製ムーブメントの開発を通じて、顧客に付加価値を提供するステップを踏んできたことだ。とはいえ、私は基本的に自社製だからという理由で自社製ムーブメントを好むほうではないが、時計ブランドが時間とエネルギーと資金を費やして自社製ムーブメントを開発することは、ブランド構築のための魅力的な試みであり、時計メーカーにとって何が重要で、何が重要でないかを示すことができるのだ。
私が思うに、最近の歴史におけるその最たる例は、オリスのCal.400の開発と展開についてだ。私は以前からオリスが好きだったが、このブランドのカタログのなかで特定の時計に惚れ込んだことはなかった。オリスのカタログの大部分を占めるのがセリタベースのムーブメントであることは必ずしも気にしていなかったが、ビッグクラウン ポインターデイト、ダイバーズ65、アクイスといった時計に2000ドル以上を費やす覚悟もなかった。ほかでお金を使うほうが好きだったのだ。
それがCal.400の登場で変わった。なぜか? 私はこのムーブメントの開発に費やされた思想と配慮のレベルに深く感銘を受けたし、今もそう思っている。ユーザー体験を念頭に置いて作られた高度なテクニカルウォッチで、オリスというブランドに対する私の考え方が大きく変わったのだ。
5日間のパワーリザーブ(120時間)、高い耐磁性(2250ガウスでテスト)、10年保証に裏打ちされたメンテナンス間隔、日差+5秒から-3秒の精度など、ムーブメントのスペックがそのすべてを物語っている。
また、効率性を重視した独自のガンギ車とアンクルのデザイン、個々の歯車にかかる圧力を減らし、2万8800振動/時の振動数の安定性を向上させる最新の輪列配置、微動緩急針を制御するネジ駆動のラック&ピニオンシステムを含む独自の調整システム、固定軸の周りを回転して巻き上げるゼロボールベアリングで低摩擦のスライドベアリングシステムの使用など、さまざまな特徴を備える。Cal.400の独創性、精度、使いやすさを総合すると、オリスがこれまでに製作したムーブメントのなかで最も印象的なものといえるだろう(確かにオリスはこのムーブメントの初期に、リューズを押し込むと分針がわずかに針飛びするという小さな機械的問題を経験したが、私の時計ではまったく問題がなく、私の理解では、昨年秋のこのエディションがリリースされるまでに解決されたように思う)。
そしてCal.400のもうひとつの評価点は、時計メーカーとしてのオリスの全歴史を蘇らせることだ。このブランドは常に工業生産されたエボーシュムーブメントに頼っていたわけではない。1904年、オリスがヘルシュタインに設立されてから1981年までのあいだに、オリスは200以上のムーブメントを開発した。そして、私が持つ時計のデザインの参考となった1960年代は、オリスが特に生産性の高い時期だった。オリスが60年代の終わりまで、年間100万個以上の機械式時計を生産し、世界の10大時計メーカーのひとつに数えられていたことを知っているだろうか?
オリスのダイバーズ65 キャリバー400 リミテッドエディション for HODINKEEは機械式時計製造に次世代の先進的なアプローチを提供しながら、その歴史を蘇らせる完璧なコンビネーションだと私は考えている。38mm×12.6mmのSSケースと日付なしのダイヤルは、私にとって1960年代に誕生したオリジナルのオリススターダイバーズウォッチを想起させるコレクションであるダイバーズ65の理想的な方向性を示すものだった。ダイヤルのオリスロゴは? それはヴィンテージのオリススターに見られるフォントそのものだ。現在のオリスのブランドロゴと似ているが、手書きのような感覚でダイヤルに描かれ、洗練された感覚を持っている。
マットなグリーンダイヤルは控えめで、周囲の光や組み合わせるストラップによって色合いを変える(この写真では、私が作ったダークパイングリーンの裏地なし、ステッチなしのシェルコードバンストラップに、探し出したオリスのOEMバックルを合わせている)。イエローのニュアンスを出すためにタンカラーのストラップを合わせたり、より落ち着いた、まるでミリタリーのような外観を与えるためにダークグリーンのストラップを合わせたりしてる。そして、このサイトで何度も繰り返しているように、私はカウントダウンベゼルが大好きなのだ。
その性質上、HODINKEEのために生産されたオリス ダイバーズ65 キャリバー400は限定版だった。そのため定価ではもう手に入らないが、さまざまなオンライン中古市場でオリジナルの小売価格である3800ドル(約51万9500円)前後で販売されているのを見かけた。我々が慣れているオリスよりも高い価格だが、私にとってはそれ以上の価値があるものなのだ。私は、オリスの忘れ去られた過去を参考にしながらも、巧妙で非常に現代的な自動巻きムーブメントを内部に隠し、全体的にシンプルなビジュアルが気に入っている。
オリスとブランパンが私に与えてくれるもの
このふたつの時計を、そして私がそれぞれの時計を高く評価している理由について、何度も書き続けることができるが、ここで重要なのは、両者には大きな違いがあるにもかかわらず、オリスとブランパンは私のコレクションのなかで同じようなポジションを埋めているということだ。
どちらもカジュアルな雰囲気で、一個人として、またコレクターとしての私に語りかけてくるが、審美的には異なる方向に傾いている。ブランパンはスポーツコートとスラックスに合わせてドレスアップでき、オリスは夏のあいだ、NATOストラップで完璧にくつろぐことができるのだ。
7年以上前、ニューヨーク大学の学部生として、今はなき業界誌で無給の(いや嘘! 有給だった)インターンシップに参加したときと同じように、私は今日も時計に魅了されている。しかし、私にとって変わったのは、どんな時計も特別でユニークであることを理解し、評価するようになったことだ。
現在、私が興味を持っているのは、プレスリリースや全体としては見えてこない、最近の時計製造の歴史だ。私が楽しんでいるのは、特定のムーブメントに組み込まれた時計製造の具体的な仕組みや技術的なことを理解することなのだ。
そして私にとって、ブランパンのレマン ウルトラスリム 2100とオリスのダイバーズ65 キャリバー400 リミテッドエディション for HODINKEEは、限られた予算内で、それらの特性を最も目に見える形で実現したものだ。私が最も多く身につけているふたつの時計が、直径38mm以下で100時間以上のパワーリザーブを持つ数少ない時計であることに気づいたとき、それはまったくの偶然だったが、同時に実はそうではないのかもしれない。
結局のところ、私がこのふたつの時計に行き着いたことこそ、本当に驚くべきことだろう?
HODINKEEの過去のThe Two Watch Collection記事はこちらでご覧いただけます。
ブランパン レマン ウルトラスリム 2100の詳細については、ブランパンブログでコレクションの全貌をご覧ください。
オリス ダイバーズ65 キャリバー400 リミテッドエディション for HODINKEEについては、昨年のオリジナル商品ローンチページをご覧ください。
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